6. 60代・70代以上に多い「手元資金が足りない」というケース。ファイナンシャルアドバイザー・松本真奈が伝えたいこと

日頃のご相談では、資産はあるのに「すぐ動かせるお金が手元にない」という状態に気づく方が少なくありません。医療や急な出費が重なったときに、この差が効いてきます。

6.1 60代・70代以上に多いお悩み相談は「手元資金が足りない」

運用に回した資産は、必要になったときにすぐ現金化できるとは限りません。値下がりしている局面であれば、売りたくない場面で売ることになります。年金生活に入ると収入で補える幅も限られるため、手元資金の不足がそのまま不安につながります。次のような声を耳にします。

60代のお客様(ご相談者)
年金の受給を控えていますが、入ってくる金額は思っていたより少なそうです。急な出費も重なって、自由に動かせるお金や生活費の半年から一年分といった余裕を用意できていない状態で、資産の整理が必要だと感じています。

手元にいくら置くかは、感覚ではなく目安を持って決めるものです。このご相談でも、まず必要な現金額を出すところから整理が始まりました。

6.2 【ファイナンシャルアドバイザー・松本真奈が回答】目安と順番を決めておくことが安心につながる

松本 真奈

「手元資金や将来が不安」「お金を増やさないと」という考えから、最近ではNISA等の少額からできる投資を最初のステップとして取り入れる方が増えています。

もちろん資産運用を始めることは間違っていませんが、それなりのリスクもつきものとなるので、元本を割ってしまう可能性があります。

そのため、手元資金や将来資金の不足をカバーしていくには予め目安と守っていく順番を決めていくことが重要となります。

まずは、毎月の収支を整理し固定費の見直しをしてみるといいでしょう。
どんな部分にどれだけの資金を使っているのか、もしくは節約できる箇所が見つかるかもしれません。
その後手元に残る現金を確認し、今後どのように充てていくのか順番決めをしていきます。

現金の額は、多ければ安心というものでもありません。ご相談のなかでは、次の三つの順序でお話しすることが多くあります。

6.3 ポイント1:まず「生活費の何か月分」で目安を置く

一つ目は、「生活費の何か月分かで目安を置く」ことです。年金生活に入った後であれば、半年から一年分の生活費をすぐ使える形で確保しておくと、たいていの急な出費に対応できます。まず金額の目安を決めることが出発点です。

6.4 ポイント2:医療費の自己負担の上限を確認する

二つ目は、「医療費の自己負担の上限を確認する」ことです。医療費には高額療養費制度による自己負担の上限があり、青天井に膨らむわけではありません。上限の目安を知っておけば、備える現金額も過不足なく見積もれます。

6.5 ポイント3:取り崩す順番を決めておく

三つ目は、「取り崩す順番を決めておく」ことです。手元資金が足りなくなったとき、どの資産から現金化するかを先に決めておく。値動きの状況にかかわらず売らざるをえない事態を避けるため、換金しやすい資産から順に並べておきます。

なお、高額療養費制度の自己負担限度額は年齢や所得によって異なり、制度改正もあります。ご自身の場合の上限額や、年金生活者支援給付金など受給要件のある制度の対象になるかどうかは、加入している医療保険の窓口、年金事務所、お住まいの自治体にご確認ください。債券や投資信託には元本割れの可能性があり、外貨建て資産には為替変動の影響があります。

7. まとめ|手元現金の目安は、感覚ではなく計算で出す

年金生活者支援給付金は2026年度に前年度比+3.2%の増額となりましたが、請求手続きをしなければ受け取れないお金です。対象になるかどうかをまず確認しましょう。

今回の試算では、高額療養費制度の自己負担上限(世帯で月5万7600円)と生活費の半年分を足し合わせると、手元に確保しておきたい現金の目安は約89万円という結果になりました。「医療費がいくらかかるか分からない」という漠然とした不安は、制度を知るだけで具体的な数字に変わります。

手元資金は多ければよいというものではありません。まずはご自身の生活費と所得区分から目安の金額を出し、その分を確保したうえで、残りの資産の運用や取り崩し方を考えていきましょう。

参考資料