9月には敬老の日があり、家族が顔を合わせる機会が増えます。離れて暮らす親子であれば、こうしたときが家計や資産の話を切り出す数少ない機会になります。
その話をするうえで土台になるのが、年金でどこまで生活費を賄えているのかという実態です。公的年金だけで暮らす世帯は、決して少数ではありません。
この記事では、65歳以上の無職世帯の家計収支を夫婦と単身の両方で確認し、厚生労働省の調査から年金への依存度を見たうえで、厚生年金・国民年金の平均月額と受給額の分布を整理していきます。
なお、65歳以上世帯の家計収支や年金の平均受給額に関する詳しい解説は、下記の記事より一部を引用・参照しています。
- 65歳以上の無職世帯は、夫婦のみで毎月約4万2000円、単身で2万9980円が不足している。いずれも貯蓄から取り崩す前提の金額。
- 公的年金・恩給を受給している高齢者世帯のうち、収入のすべてが公的年金・恩給という世帯は41.3%を占める。
- 厚生年金の平均は15万289円(男性16万9967円・女性11万1413円)、国民年金は5万9310円。受給額は1万円未満から30万円以上まで広がる。
1. 65歳以上・無職世帯の生活費|夫婦は月約4万2000円、単身は2万9980円の不足
65歳以上・無職夫婦世帯の家計収支については、LIMOの記事「【最新データ】老後の「ふつう」が分かる!65歳以上の平均貯蓄額と年金月額は?老後夫婦のリアルな生活費と家計収支を解説」から要点を引用して確認しておきましょう。
総務省統計局「家計調査報告 家計収支編 2025年(令和7年)平均結果の概要」によると、65歳以上の夫婦のみの無職世帯では、実収入の合計が25万4395円(うち公的年金などの社会保障給付が22万8614円)、支出は消費支出26万3979円と非消費支出3万2850円を合わせて29万6829円。単純計算で毎月約4万2000円が不足し、この収支差が続くと1年間で約50万円、10年間で約500万円の不足となります。
出所:【最新データ】老後の「ふつう」が分かる!65歳以上の平均貯蓄額と年金月額は?老後夫婦のリアルな生活費と家計収支を解説
単身世帯の家計収支についても、LIMOの記事「【2026年最新・年金早見表】厚生年金・国民年金はいくらもらえる?平均受給額一覧と手取りのリアル!社会保険料・税金が引かれる「天引き」まで徹底解説」から要点を引用して確認しておきましょう。
65歳以上の無職単身世帯では、実収入13万1456円(うち社会保障給付12万212円)に対し、支出は消費支出14万8445円と非消費支出1万2990円を合わせて16万1435円。毎月2万9980円が不足している計算になります。
出所:【2026年最新・年金早見表】厚生年金・国民年金はいくらもらえる?平均受給額一覧と手取りのリアル!社会保険料・税金が引かれる「天引き」まで徹底解説
夫婦でも単身でも、収入が支出を下回っている点は共通です。いずれも不足分は貯蓄から取り崩すことになります。
2. 年金だけで暮らすシニアはどれくらいいるか
では、年金だけで生活するシニアはどれくらいでしょうか。
厚生労働省が公表した「2025(令和7)年 国民生活基礎調査の概況」から、高齢者世帯(※)の収入の実態を見ていきましょう。
まず、高齢者世帯全体の平均的な所得構成を見ると、収入の61.3%を「公的年金・恩給」が占めており、次いで仕事による収入である「稼働所得」が25.9%、「財産所得」が5.8%となっています。
しかし、これはあくまで全体の平均値です。
「公的年金・恩給を受給している世帯」に絞ると、収入のすべてが「公的年金・恩給」である世帯が41.3%にものぼることがわかっています。
※高齢者世帯:65歳以上の者のみで構成するか、又はこれに18歳未満の者が加わった世帯
2.1 総所得に占める公的年金・恩給の割合別の世帯構成
- 公的年金・恩給の総所得に占める割合が100%の世帯:41.3%
- 公的年金・恩給の総所得に占める割合が80~100%未満の世帯:17.1%
- 公的年金・恩給の総所得に占める割合が60~80%未満の世帯:14.1%
- 公的年金・恩給の総所得に占める割合が40~60%未満の世帯:13.6%
- 公的年金・恩給の総所得に占める割合が20~40%未満の世帯:9.7%
- 公的年金・恩給の総所得に占める割合が20%未満の世帯:4.2%
このようにシニア全体で見れば稼働所得なども一定の割合を占めていますが、年金受給世帯に絞ると、その4割以上が公的年金収入のみに頼って生活しているという実態が浮き彫りとなっています。
2.2 【独自試算】年金が総所得の8割以上を占める世帯は58.4%
「収入のすべてが公的年金」という世帯は41.3%でした。では、そこまでではないものの年金に大きく依存している世帯を含めると、どれくらいの規模になるのでしょうか。割合を積み上げて確認します。
- 100%の世帯 41.3% + 80〜100%未満 17.1% = 58.4%(年金が総所得の8割以上)
- さらに60〜80%未満 14.1%を加えると = 72.5%(年金が総所得の6割以上)
- 残る「年金が6割未満」の世帯:13.6+9.7+4.2 = 27.5%
年金が総所得の8割以上を占める世帯は約6割、6割以上を占める世帯は7割を超えます。逆に、年金以外の収入が総所得の4割以上ある世帯は、全体の3割に届きません。
つまり高齢者世帯の大多数は、年金を主軸に家計を組み立てているということです。先に見た月々の不足額を貯蓄で埋める構造は、例外的な状況ではなく、多くの世帯に当てはまる姿だといえます。
※厚生労働省「2025(令和7)年 国民生活基礎調査の概況」に記載された割合別世帯構成を単純に合計した目安です。対象は公的年金・恩給を受給している高齢者世帯で、合計は100%になります。世帯ごとの所得水準の違いは考慮していません。
3. 公的年金の仕組み|1階の国民年金と2階の厚生年金
公的年金の基本的な仕組みについては、LIMOの記事「【2026年最新・年金早見表】厚生年金・国民年金はいくらもらえる?平均受給額一覧と手取りのリアル!社会保険料・税金が引かれる「天引き」まで徹底解説」から要点を引用して確認しておきましょう。
公的年金制度は、しばしば「2階建て構造」に例えられます。これは、日本の年金制度が「1階」の国民年金(基礎年金)と、「2階」の厚生年金という2つの制度で構成されているためです。1階部分の国民年金は、原則として日本国内に居住する20歳以上60歳未満のすべての人が加入対象で、保険料は所得にかかわらず一律(2026年度は月額1万7920円)。保険料を40年間(480カ月)すべて納付すると、満額(2026年度は月額7万608円)を受け取ることができます。2階部分の厚生年金は、会社員や公務員のほか、パートタイマーなどで特定適用事業所に勤務し一定の要件を満たす人が国民年金に上乗せして加入します。保険料は収入に応じて変動し、受給額は加入していた期間や納付した保険料額によって個人差が生じます。
出所:【2026年最新・年金早見表】厚生年金・国民年金はいくらもらえる?平均受給額一覧と手取りのリアル!社会保険料・税金が引かれる「天引き」まで徹底解説
1階は加入期間だけで決まる定額、2階は収入と加入期間の両方で変わる仕組みです。年金額の個人差は、ほぼ2階部分の積み上がり方の違いから生まれます。
4. 厚生年金・国民年金の平均月額
厚生年金・国民年金の平均月額についても、LIMOの記事「【2026年最新・年金早見表】厚生年金・国民年金はいくらもらえる?平均受給額一覧と手取りのリアル!社会保険料・税金が引かれる「天引き」まで徹底解説」から要点を引用して確認しておきましょう。
厚生年金の平均年金月額は〈全体〉15万289円、〈男性〉16万9967円、〈女性〉11万1413円(いずれも国民年金の金額を含む)。国民年金は〈全体〉5万9310円、〈男性〉6万1595円、〈女性〉5万7582円です。年金の受給額はこれまでの加入状況によって決まるため、人によって大きな差が生じる点には注意が必要です。
出所:【2026年最新・年金早見表】厚生年金・国民年金はいくらもらえる?平均受給額一覧と手取りのリアル!社会保険料・税金が引かれる「天引き」まで徹底解説
5. 厚生年金と国民年金の受給額|1万円刻みで受給権者数をみる
老後の生活を支える大切な収入源となる公的年金ですが、受給額は年金加入状況により決まるため個々で異なります。
どれくらいの個人差があるのかを見てみましょう。
5.1 厚生年金の受給額に見られる個人差
- 〈全体〉平均年金月額:15万289円
- 〈男性〉平均年金月額:16万9967円
- 〈女性〉平均年金月額:11万1413円
出所:【2026年最新・年金早見表】厚生年金・国民年金はいくらもらえる?平均受給額一覧と手取りのリアル!社会保険料・税金が引かれる「天引き」まで徹底解説
※国民年金の金額を含む
厚生年金の受給額分布(1万円ごと)
- ~1万円:4万3399人
- 1万円以上~2万円未満:1万4137人
- 2万円以上~3万円未満:3万5397人
- 3万円以上~4万円未満:6万8210人
- 4万円以上~5万円未満:7万6692人
- 5万円以上~6万円未満:10万8447人
- 6万円以上~7万円未満:31万5106人
- 7万円以上~8万円未満:57万8950人
- 8万円以上~9万円未満:80万2179人
- 9万円以上~10万円未満:101万1457人
- 10万円以上~11万円未満:111万2828人
- 11万円以上~12万円未満:107万1485人
- 12万円以上~13万円未満:97万9155人
- 13万円以上~14万円未満:92万3506人
- 14万円以上~15万円未満:92万9264人
- 15万円以上~16万円未満:96万5035人
- 16万円以上~17万円未満:100万1322人
- 17万円以上~18万円未満:103万1951人
- 18万円以上~19万円未満:102万6888人
- 19万円以上~20万円未満:96万2615人
- 20万円以上~21万円未満:85万3591人
- 21万円以上~22万円未満:70万4633人
- 22万円以上~23万円未満:52万3958人
- 23万円以上~24万円未満:35万4人
- 24万円以上~25万円未満:23万211人
- 25万円以上~26万円未満:15万796人
- 26万円以上~27万円未満:9万4667人
- 27万円以上~28万円未満:5万5083人
- 28万円以上~29万円未満:3万289人
- 29万円以上~30万円未満:1万5158人
- 30万円以上~:1万9283人
出所:【2026年最新・年金早見表】厚生年金・国民年金はいくらもらえる?平均受給額一覧と手取りのリアル!社会保険料・税金が引かれる「天引き」まで徹底解説
厚生年金の平均年金月額は男女全体で15万289円です。
男女別では、男性16万9967円、女性11万1413円と、6万円ほどの差があります。
個人差については、上のグラフの受給額分布が示すとおり、「月額1万円未満から30万円以上」となっています。
5.2 国民年金の受給額に見られる個人差
〈全体〉平均年金月額:5万9310円
- 〈男性〉平均年金月額:6万1595円
- 〈女性〉平均年金月額:5万7582円
出所:【2026年最新・年金早見表】厚生年金・国民年金はいくらもらえる?平均受給額一覧と手取りのリアル!社会保険料・税金が引かれる「天引き」まで徹底解説
国民年金の受給額分布(1万円ごと)
- 1万円未満:5万1828人
- 1万円以上~2万円未満:21万3583人
- 2万円以上~3万円未満:68万4559人
- 3万円以上~4万円未満:206万1539人
- 4万円以上~5万円未満:388万83人
- 5万円以上~6万円未満:641万228人
- 6万円以上~7万円未満:1715万5059人
- 7万円以上~:299万7738人
出所:【2026年最新・年金早見表】厚生年金・国民年金はいくらもらえる?平均受給額一覧と手取りのリアル!社会保険料・税金が引かれる「天引き」まで徹底解説
国民年金の平均年金月額は男女全体と女性が5万円台、男性については6万円台です。
ボリュームゾーンは「6万円以上~7万円未満」となっています。
個人差については、上のグラフの受給額分布が示すとおり、「月額1万円未満~7万円以上」となっています。
6. 単身と夫婦、どちらが厳しいか|編集部試算と監修者コメント
6.1 【独自試算】単身世帯の不足は、夫婦の一人当たりの1.43倍
この記事には夫婦世帯と単身世帯の家計収支が両方載っています。人数の違いを揃えて比べると、どちらの家計が厳しいのかが見えてきます。夫婦世帯の数字を2で割り、単身世帯と並べてみましょう。
- 収入:夫婦の一人当たり12万7198円 / 単身13万1456円(単身が4258円多い)
- 支出:夫婦の一人当たり14万8414円 / 単身16万1435円(単身が1万3021円多い)
- 不足:夫婦の一人当たり約2万1000円 / 単身2万9980円(単身が約8980円多い)
一人当たりで見ると、単身世帯のほうが収入は多いにもかかわらず、支出がそれを上回って多いため、不足額は約1.43倍になります。住居費や光熱費のように世帯人数が増えても金額があまり変わらない支出があるため、二人で分担すると一人当たりの負担は下がります。
単身世帯の不足を期間で積み上げると、次のようになります。
- 1年あたり:2万9980円 × 12カ月 = 35万9760円
- 10年間の累計:359万7600円
夫婦世帯の「10年で約500万円」と比べると総額は小さく見えますが、一人で負担する金額としては重くなります。配偶者との死別などで単身になった場合、年金収入が減る一方で住居費や光熱費はそれほど下がらないため、この構造が現実になります。
※この記事に掲載された65歳以上の無職夫婦世帯と無職単身世帯の平均値をもとに、夫婦の金額を単純に2で割って一人当たりに換算した目安の試算です。世帯人数による支出構造の違いを機械的に均したもので、実際の家計は住居の形態や健康状態によって大きく異なります。不足額が一定で推移すると仮定した計算です。
この記事は総務省の家計調査、厚生労働省の国民生活基礎調査、そして年金概況という3つの一次統計を並べています。家計収支、年金への依存度、受給額の分布と、角度の違うデータが揃っている点に意味があります。
とくに注目していただきたいのは、公的年金・恩給を受給している高齢者世帯のうち、収入のすべてが年金という世帯が41.3%を占めるという数字です。年金額は原則として後から増やせません。この層にとって、家計の調整弁は支出側と手元の資産の使い方に限られます。
確認していただきたい観点を順に整理します。第一に、額面ではなく手取りで考えること。非消費支出として示されている税金と社会保険料は、年金暮らしになっても続きます。第二に、単身になった場合の収支を一度計算しておくこと。配偶者との死別は年金収入を減らしますが、住居費はそれほど下がりません。第三に、貯蓄をいつまで、どのペースで取り崩すのかを決めておくことです。
そして、資産の所在と内容をご家族と共有しておくことも、この年代では実務的な備えになります。金額を増やす話とは別に、いま着手できる準備として考えていただきたいところです。






