「そろそろ運転免許を返納した方がいいのでは」と感じつつも、「病院への通院手段がなくなってしまうのでは」という不安から、なかなか踏み切れない後期高齢者やそのご家族は少なくありません。
実際、運転免許の自主返納は75歳以上の高齢者が中心となって進んでいますが、その受け皿となる交通手段の確保は自治体ごとに差があるのが実情です。
この記事では、2026年8月時点の最新情報をもとに、免許返納後に使える自治体の交通費補助制度やデマンドタクシーの仕組み、外出頻度と通院への影響について整理します。
- 令和7年の運転免許の自主返納は43万5067件で、そのうち約6割にあたる26万915件を75歳以上が占める
- 免許返納後の交通費補助(タクシー券・デマンド交通の利用補助など)は自治体ごとに内容が異なり、自動的には受け取れない場合が多い
- 免許を持たない高齢者は外出率・外出頻度が下がる傾向があり、通院手段の確保は返納前に確認しておきたいポイント
1. 後期高齢者の運転免許返納は、年々進んでいる
警察庁の統計によると、令和7年(2025年)中の運転免許の申請取消(自主返納)件数は43万5067件でした。
このうち75歳以上の高齢者による返納は26万915件で、全体の約6割を占めています。運転経歴証明書(運転免許証に代わる本人確認書類として使えるもの)の交付件数も、令和7年は合計29万7359件、うち75歳以上が17万3744件となっており、返納後も身分証明書として運転経歴証明書を利用している高齢者が多いことがうかがえます。
運転免許の自主返納、令和7年は75歳以上が約6割を占める1/2
出所:警察庁「運転免許の申請取消(自主返納)件数と運転経歴証明書交付件数の推移」をもとにLIMO編集部作成
年によって75歳以上が占める割合には47%〜69%程度の幅がありますが、いずれの年も自主返納全体のうちかなりの部分を75歳以上の高齢者が占めており、この傾向は今後も続くとみられます。免許返納が進む一方で、返納後の生活の足、とりわけ通院のための移動手段をどう確保するかは、多くの後期高齢者とその家族にとって共通の悩みです。
2. 免許返納後の交通費補助、自治体ごとに内容が異なる
運転免許を自主返納した高齢者向けに、多くの市区町村ではタクシー券やコミュニティバスの無料乗車証、デマンド交通の利用補助といった支援策を設けています。
ただし、これらの支援は全国一律の制度ではなく、対象年齢や助成内容、申請方法まで自治体ごとに大きく異なります。免許を返納すれば自動的に受け取れるとは限らず、多くの場合、別途申請の手続きが必要です。
運転免許返納後の交通費補助、主な支援の種類2/2
出所:埼玉県「県内市町村別運転免許自主返納及び高齢者の支援施策等」等をもとにLIMO編集部作成
たとえば埼玉県内の市町村の一覧を見ると、タクシー利用料金の助成、コミュニティバスの特別乗車証交付、デマンド交通(乗合タクシー等)の利用補助など、実に多様な支援策が実施されています。直近の事例では、朝霞市が2026年7月から「朝霞市デマンド交通(タクシー補助)」の実証実験を開始しました。対象は75歳以上の方、要支援・要介護認定を受けている方、妊産婦、運転免許自主返納者のいずれかに該当する市内在住者で、利用料金の半額(1回あたり上限700円)が補助され、月4回まで利用できる仕組みです。
このように、同じ「免許返納後の交通費補助」といっても、対象者の範囲や補助額、利用回数の上限は自治体によってかなり違います。お住まいの市区町村に補助制度があるかどうか、また具体的な内容については、返納前に自治体の担当窓口やホームページで確認しておくことをおすすめします。