3. 平均寿命は男性81.35年、女性87.33年まで延びた
受給額の話とあわせて考えておきたいのが、その年金を何年受け取ることになるのかという点です。
厚生労働省「令和7年簡易生命表の概況」によると、最新の平均寿命は男性が81.35年、女性が87.33年でした。前年と比べて男性は0.25年、女性は0.20年上回っています。
65歳から受け取り始めるとすれば、男性でおよそ16年、女性でおよそ22年にわたって年金が生活の柱になります。月額の差は小さく見えても、20年単位で積み上がると大きな違いになります。
4. 【落とし穴】65歳以上の12.3%が認知症、MCIを含めると約4人に1人
長い老後を考えるうえで、避けて通れないのが認知機能の変化です。
政府広報オンライン「知っておきたい認知症の基本」によると、令和4年(2022年)時点の推計で、65歳以上の高齢者3603万人のうち認知症は約443万人(12.3%)、軽度認知障害(MCI)は約559万人(15.5%)でした。
あわせると約1002万人で、65歳以上の27.8%にあたります。認知機能について何らかのサポートや注意が必要な状況にある人が、3.6人に1人いるという推計です。資産の管理や手続きを自分で行うことが難しくなる可能性は、誰にでもあるということになります。
5. 【対応策】終活とエンディングノートの準備状況
こうした背景から関心が高まっているのが終活です。ただし、意識と実行のあいだには開きがあります。
NPO法人ら・し・さ(終活アドバイザー協会)「第2回終活意識全国調査報告書【確定版】(2025年7月)」によると、「終活」という言葉の認知度は96.2%と高い水準でした。一方でエンディングノートは、認知されていても実行が進んでいません。
5.1 所有率は70歳代以上が最も高いが、記入は約半数
同調査では、エンディングノートの認知度は60歳代以上で9割を超えています。所有率は70歳代以上が24.2%と最も高く、50歳代以下は1桁台にとどまりました。
ところが、持っている人のうち実際に書いている割合を見ると、20歳代が9割以上であるのに対し、70歳代以上は約5割です。高齢になるほど、書くべき項目が多岐にわたることや「まだ早い」という心理、健康上の理由などから筆が進みにくくなるのかもしれません。
資産や医療・介護の希望を反映するためにも、気力と体力が充実しているうちに始めておきたいところです。
5.2 現役のうちから備えを重ねる
老後の備えについては、LIMOの記事「【70代の貯蓄・年金・家計のリアル】老後赤字を加速させないためには?投資に頼らない防衛策を徹底解説!」でも次のように指摘されています。
こうした背景を考えると、現役世代のうちから計画的に貯蓄や資産形成に取り組むことが、70歳以降の生活の安心につながるといえるでしょう。
出所:【70代の貯蓄・年金・家計のリアル】老後赤字を加速させないためには?投資に頼らない防衛策を徹底解説!
なお、資産形成の方法には元本割れの可能性があるものもあります。ご自身に合う進め方は状況によって変わるため、判断に迷う場合は金融機関やファイナンシャル・プランナーに相談してみてください。
6. まとめにかえて
厚生年金の受給額は、月10万円未満が19.0%、月20万円以上が18.8%でした。平均は15万289円ですが、8割以上の人は月20万円未満にとどまります。
標準報酬月額の上限は2027年9月から段階的に引き上げられ、2029年9月に75万円になります。賃金が月75万円以上の人は保険料の本人負担が月9100円増え、その状態が10年続けば年金は月約5100円増える試算です。
平均寿命が男性81.35年、女性87.33年まで延びるなかで、年金を受け取る期間も長くなっています。まずはねんきん定期便やねんきんネットでご自身の見込額を確認し、そのうえで足りない分をどう補うかを考えていくのがよいのではないでしょうか。
参考資料
- 厚生労働省年金局『令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況』
- 厚生労働省『厚生年金等の標準報酬月額の上限の段階的引上げについて』
- 厚生労働省『令和7年簡易生命表の概況』
- 政府広報オンライン『知っておきたい認知症の基本』
中本 智恵