5. 「世帯全員が非課税」は世帯単位で決まる

支給要件のなかで、意外とつまずきやすいのが2つ目の「世帯全員の市町村民税が非課税」という条件です。本人の所得が低ければ通ると考えてしまいがちなところです。

筆者は元自治体職員で、国民健康保険と後期高齢者医療の保険料を賦課する仕事をしていました。保険料を計算するために住民税の課税情報を参照する立場だったので、同じ世帯でも人によって課税と非課税が分かれる場面を数多く見てきました。

5.1 同居している家族に課税されていると要件から外れる

判定の対象は本人だけではありません。住民票上で同じ世帯にいる方全員が非課税である必要があります。

たとえば同居している子が働いていて住民税が課税されている場合、本人の年金収入がどれだけ少なくても、この要件は満たせないことになります。逆に、世帯を分けている親族の課税状況は影響しません。

5.2 前年の一時的な所得が判定に響くこともある

住民税は前年の所得をもとに決まります。そのため、不動産を売却した年など、一時的に所得が増えただけでも課税世帯になることがあります。

窓口では「今年から急に負担が増えたのはなぜか」という相談が多く寄せられました。話を聞くと、前年の一時的な所得を本人が忘れているケースが少なくありませんでした。

継続的な収入が増えたわけではないのに判定が変わるため、納得しにくい部分だと感じていました。

6. 年金とは別に振り込まれるので、通帳の2件目を見落としやすい

年金生活者支援給付金は、年金と同じ口座に、同じ日に振り込まれます。ただし年金と合算されるわけではなく、通帳には2件の振込が並ぶ形になります。

この点は、見方を変えれば確認の手がかりになります。偶数月の支給日のあとに通帳を見て、2件目が見当たらなければ、請求がまだ済んでいない可能性があるということです。

6.1 はがき型の請求書を返送し忘れているケース

請求書は封筒に入って届きます。年金に関する郵便物は1年を通して何通も届くため、他の通知と一緒にしまい込んでしまうことがあります。

請求は原則として、手続きをした月の翌月分からの支給になります。返送が遅れるとその分だけ受け取り始めが後ろにずれることもあるため、届いたら早めに返送しておくと安心です。

7. 【対応策】まず現状を確認し、判断に迷ったら窓口に相談する

まずは自分と世帯の状況を正しく知るところから始めましょう。

7.1 確認しておきたい3つのこと

ご自身が対象になりそうかを見るには、次の3点が出発点になります。

  • 世帯全員の住民税の課税状況。市区町村の窓口で課税や非課税の証明書を取ることで確認できます
  • 前年の年金収入とその他の所得の合計額。年金の源泉徴収票や確定申告の控えが手がかりになります
  • 偶数月の支給日のあとの通帳。2件の振込があるかどうかを見ておきます

なお、世帯を分けることで要件を満たそうと考える方もいます。ただし国民健康保険料や後期高齢者医療保険料の計算、医療費の窓口負担割合などにも影響することがあるため、単純に有利とはいえません。

7.2 相談できる窓口

給付金そのものの手続きや要件については、年金事務所やねんきんダイヤルが窓口になります。請求書が届いたかどうかや記入方法の確認も、こちらで対応してもらえます。

住民税が課税されているかどうか、その計算の根拠については市区町村の担当課が窓口です。国民健康保険料や後期高齢者医療保険料の負担が重いと感じている場合は、あわせて相談してみてください。減免や分割納付といった制度の適用を検討できることがあります。

窓口にいた立場から申し上げると、相談せずに未納のままにしておくほうが選択肢は狭くなります。早めに相談していただけると、こちらとしても打てる手が多くありました。

8. まとめにかえて

公的年金・恩給を受給している高齢者世帯のうち41.3%は、総所得のすべてが公的年金・恩給でした。年金以外の収入が乏しい世帯にとって、月額5620円という上乗せは決して小さくない金額です。

一方で、対象になるかどうかは本人の年金額だけでは決まりません。世帯全員の課税状況と前年の所得という、少し見えにくい条件が絡んできます。

まずは通帳と課税状況を確認してみて、判断に迷うところがあれば年金事務所や市区町村の窓口に尋ねてみましょう。現状を正しく知ることが、その先の家計を考える出発点になります。

参考資料

太田 彩子