公的年金の定期支払日は、偶数月の15日前後です。2026年は8月14日の次が10月15日にあたり、この夏から秋にかけては、誕生月に応じて「現況届」が届く人もいます。振込通知書や通帳で自分の年金額を目にすると、「同じ年代の人は、平均でいくら受け取っているのだろう」と気になるものです。
2026年度は年金額が増額改定され、国民年金は+1.9%、厚生年金は+2.0%となりました。ただし、実際に振り込まれる金額は、現役時代の働き方によって一人ひとり大きく違います。
この記事では、厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとに、60歳から90歳以上までの平均年金月額を1歳刻みで整理し、男女別の平均額と1万円刻みの受給額分布までを確認していきます。
なお、年齢別の平均年金月額に関する詳しい解説は、下記の記事より一部を引用・参照しています。本文中の引用部分は引用ブロックで示しています。
- 公的年金は国民年金と厚生年金の「2階建て」です。1階は加入期間だけで決まる定額、2階は報酬と加入期間で変わるため、年金額の個人差はほぼ2階部分の違いから生まれます。
- 65歳以降の平均年金月額は、厚生年金が14万円~16万円台、国民年金が5万円~6万円台です。厚生年金は年齢が上がるほど高くなる一方、国民年金は加入期間の上限が40年のためほぼ横一線になります。
- 厚生年金の平均は男性16万9967円・女性11万1413円で、その差は5万8554円です。国民年金は「6万円以上~7万円未満」に受給者が最も多く集まっています。
1. 国民年金と厚生年金|公的年金の「2階建て」と2026年度の改定額
日本の公的年金は、国民年金と厚生年金という2つの制度が組み合わさっています。下の体系図のとおり、全員が加入する国民年金を土台に、会社員や公務員はその上に厚生年金が乗る——この形から「2階建て」と呼ばれます。
年齢別の平均額は、老齢年金の一覧表を60歳代から90歳以上まで整理した記事でも取り上げられており、本記事でも同じ厚生労働省の一次データを引用しています。まずは、1階と2階それぞれの中身を確認しておきましょう。
1.1 1階部分「国民年金」は20歳以上60歳未満の全員が加入する
国民年金の加入対象は、原則として国内に住む「20歳以上60歳未満」のすべての人です。自営業者や学生、無職の人も含まれます。
保険料は全国一律で、年度ごとに見直されます(※1)。40年間(480カ月)漏れなく納めた人は、65歳以降に満額の老齢基礎年金(※2)を受け取れます。裏を返せば、国民年金で受け取れる額を左右するのは「何年分納めたか」という一点で、収入の多寡は反映されません。
※1 国民年金保険料:2026年度月額は1万7920円
※2 国民年金(老齢基礎年金)の満額:2026年度月額は7万608円
1.2 2階部分「厚生年金」は会社員・公務員が上乗せで加入する
厚生年金に加入するのは、会社員や公務員、さらに特定適用事業所(※3)で働くパートなど、一定の要件を満たした人です。国民年金と併せて加入する仕組みになっています。
- 年金保険料(※4):給与水準により決定する(上限あり)
- 老後の受給額:加入した期間や支払った保険料によって個人ごとにばらつきが出る
※3 特定適用事業所:1年のうち6カ月間以上、適用事業所の厚生年金保険の被保険者(短時間労働者は含まない、共済組合員を含む)の総数が51人以上となることが見込まれる企業など
※4 厚生年金の保険料額:標準報酬月額(上限65万円)、標準賞与額(上限150万円)に保険料率をかけて計算される
同じ「2階建て」でも、1階と2階では加入する人の範囲、保険料の決まり方、将来受け取れる額の決まり方がまったく違います。年金額の個人差が生まれるのは、ほぼ2階部分の積み上がり方の違いによるものです。
1.3 2026年度は国民年金+1.9%・厚生年金+2.0%の増額改定
公的年金は、賃金や物価の動きを踏まえて年度ごとに支給額が見直されます。
2026年度は、前年度から国民年金が+1.9%、厚生年金が+2.0%の増額改定となりました。国民年金(老齢基礎年金)は満額で月額7万608円(1人あたり)、厚生年金はモデル世帯(会社員の夫と国民年金のみの妻)で月額23万7279円(夫婦2人の合計)です。
ただし、これはあくまで基準となる金額です。実際に受け取れる年金額は、働いていたときの年金加入履歴によって一人ひとり違いが生じます。また、通知書に記載される額面と、社会保険料や税金が差し引かれた後の手取りも一致しません。天引きの内訳については、年金の手取りと天引きを解説した記事が参考になります。
2. 【厚生年金】60歳から90歳以上まで、年齢別の平均年金月額を一覧で見る
ここからは、今のシニア層が実際に受け取っている金額を確認していきます。厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」のデータをもとに、年齢ごとの平均年金月額を一覧形式で見ていきましょう。
はじめに、厚生年金(国民年金部分を含む)の平均年金月額です。
2.1 【60歳代(60〜69歳)】厚生年金の年金月額一覧表
- 60歳:9万9664円
- 61歳:10万4455円
- 62歳:10万9323円
- 63歳:6万8758円
- 64歳:8万3901円
- 65歳:14万9862円
- 66歳:15万2378円
- 67歳:15万2356円
- 68歳:15万2709円
- 69歳:15万1284円
※65歳未満の厚生年金受給者は、特別支給の老齢厚生年金の定額部分の支給開始年齢が引き上げられたため、報酬比例部分のみ受給している方も含む。
63歳・64歳が前後の年齢より低く出ているのは、支給開始年齢の引き上げの途中にあたる世代で、報酬比例部分だけを受け取っている人が母数に混ざるためです。標準的な受給開始年齢である65歳を境に、水準が一段上がります。
2.2 【70歳代(70〜79歳)】厚生年金の年金月額一覧表
- 70歳:15万455円
- 71歳:14万8371円
- 72歳:14万6858円
- 73歳:14万5583円
- 74歳:14万7774円
- 75歳:15万1410円
- 76歳:15万1241円
- 77歳:15万962円
- 78歳:15万862円
- 79歳:15万3115円
70歳代は14万円台後半から15万円台で推移し、年齢が上がっても大きく崩れることはありません。
2.3 【80歳代(80〜89歳)】厚生年金の年金月額一覧表
- 80歳:15万3729円
- 81歳:15万5460円
- 82歳:15万7744円
- 83歳:15万9994円
- 84歳:16万2555円
- 85歳:16万3947円
- 86歳:16万5577円
- 87歳:16万5557円
- 88歳:16万6200円
- 89歳:16万6767円
80歳代は、年齢が上がるにつれて平均額がじわじわと増えています。現役時代の賃金水準や加入期間が世代によって異なるため、上の世代のほうが高く出るという傾向がここに表れています。
2.4 【90歳以上】厚生年金の年金月額一覧表
- 90歳以上:16万4027円
標準的な年金受給開始年齢は65歳です。65歳以降の各年齢で受け取れる厚生年金の平均年金月額は、14万円~16万円台に収まっていました。
3. 【国民年金】60歳から90歳以上まで、年齢別の平均年金月額を一覧で見る
続いて、国民年金(老齢基礎年金)について、各年齢の平均年金月額を確認していきます。
3.1 【60歳代(60〜69歳)】国民年金の年金月額一覧表
- 60歳:4万5186円
- 61歳:4万6371円
- 62歳:4万7784円
- 63歳:4万7258円
- 64歳:4万7896円
- 65歳:6万1240円
- 66歳:6万1369円
- 67歳:6万1345円
- 68歳:6万1293円
- 69歳:6万978円
※65歳未満の国民年金(老齢基礎年金)受給者は繰上げ受給を選択した方。
65歳未満が4万円台にとどまっているのは、繰上げ受給によって減額された金額を受け取っている人だからです。65歳になると6万円台に上がります。
3.2 【70歳代(70〜79歳)】国民年金の年金月額一覧表
- 70歳:6万1011円
- 71歳:6万770円
- 72歳:6万234円
- 73歳:6万32円
- 74歳:5万9813円
- 75歳:5万9659円
- 76歳:5万9555円
- 77歳:5万9349円
- 78歳:5万9124円
- 79歳:5万8676円
70歳代は6万円台から5万円台後半へと、ごく緩やかに下がっていきます。厚生年金と違って、年齢による差はほとんどありません。
3.3 【80歳代(80〜89歳)】国民年金の年金月額一覧表
- 80歳:5万8623円
- 81歳:5万8269円
- 82歳:5万8003円
- 83歳:5万7857円
- 84歳:5万9675円
- 85歳:5万9425円
- 86歳:5万9228円
- 87歳:5万9204円
- 88歳:5万8756円
- 89歳:5万8572円
80歳代も5万円台後半でほぼ横ばいです。厚生年金では年齢が上がるほど平均額も上がっていましたが、国民年金にはその傾向が見られません。
3.4 【90歳以上】国民年金の年金月額一覧表
- 90歳以上:5万5633円
65歳以降の人が受け取る国民年金(老齢基礎年金)の平均年金月額は、5万円~6万円台となっています。厚生年金の一覧表と並べてみると、国民年金は年齢による差がほとんどない、いわば「横一線」の形をしていることがよくわかります。
4. 厚生年金・国民年金の男女別平均と「受給額の分布」を確認する
ここまでは年齢別に見てきましたが、60歳~90歳以上のすべての受給権者を合わせた「平均年金月額」と「受給額の分布」も確認しておきましょう。分布まで見ることで、平均という1つの数字の背後にある実態が見えてきます。
4.1 「厚生年金」男女別の平均年金月額と受給額分布
- 〈全体〉平均年金月額:15万289円
- 〈男性〉平均年金月額:16万9967円
- 〈女性〉平均年金月額:11万1413円
※国民年金の金額を含む
厚生年金の全体平均は15万289円でした。男女別に見ると、男性16万9967円、女性11万1413円で、その差は5万8554円です。現役時代の賃金水準や勤続年数の違いが、そのまま2階部分の差として表れています。
受給額分布(1万円刻み)
- ~1万円:4万3399人
- 1万円以上~2万円未満:1万4137人
- 2万円以上~3万円未満:3万5397人
- 3万円以上~4万円未満:6万8210人
- 4万円以上~5万円未満:7万6692人
- 5万円以上~6万円未満:10万8447人
- 6万円以上~7万円未満:31万5106人
- 7万円以上~8万円未満:57万8950人
- 8万円以上~9万円未満:80万2179人
- 9万円以上~10万円未満:101万1457人
- 10万円以上~11万円未満:111万2828人
- 11万円以上~12万円未満:107万1485人
- 12万円以上~13万円未満:97万9155人
- 13万円以上~14万円未満:92万3506人
- 14万円以上~15万円未満:92万9264人
- 15万円以上~16万円未満:96万5035人
- 16万円以上~17万円未満:100万1322人
- 17万円以上~18万円未満:103万1951人
- 18万円以上~19万円未満:102万6888人
- 19万円以上~20万円未満:96万2615人
- 20万円以上~21万円未満:85万3591人
- 21万円以上~22万円未満:70万4633人
- 22万円以上~23万円未満:52万3958人
- 23万円以上~24万円未満:35万4人
- 24万円以上~25万円未満:23万211人
- 25万円以上~26万円未満:15万796人
- 26万円以上~27万円未満:9万4667人
- 27万円以上~28万円未満:5万5083人
- 28万円以上~29万円未満:3万289人
- 29万円以上~30万円未満:1万5158人
- 30万円以上~:1万9283人
分布を見ると、厚生年金には10万円台から20万円前後まで幅広く人が散らばっていることがわかります。特定の階級に極端に偏るのではなく、ゆるやかな山を描いているのが特徴です。
4.2 「国民年金」男女別の平均年金月額と受給額分布
- 〈全体〉平均年金月額:5万9310円
- 〈男性〉平均年金月額:6万1595円
- 〈女性〉平均年金月額:5万7582円
受給額分布(1万円刻み)
- 1万円未満:5万1828人
- 1万円以上~2万円未満:21万3583人
- 2万円以上~3万円未満:68万4559人
- 3万円以上~4万円未満:206万1539人
- 4万円以上~5万円未満:388万83人
- 5万円以上~6万円未満:641万228人
- 6万円以上~7万円未満:1715万5059人
- 7万円以上~:299万7738人
国民年金の平均年金月額は全体で5万9310円。男性6万1595円、女性5万7582円で、その差は4013円と、厚生年金に比べればわずかです。保険料が全国一律で、受給額が加入期間だけで決まる制度である以上、男女差が生まれにくいのは当然といえます。
そして分布を見ると、「6万円以上~7万円未満」が圧倒的に厚い層になっています。国民年金は、厚生年金のようにゆるやかな山を描くのではなく、満額に近い水準に人が集中する形をしているのです。
4.3 【独自試算】厚生年金の平均15万289円、実は「下回る人」が約半数
ここで、上に挙げた1万円刻みの分布を使って、独自に試算をしてみます。「平均15万289円」という数字に対して、実際に何人がその上下にいるのかを積み上げて確認する試算です。
分布に記載された人数をすべて合計すると、厚生年金の受給権者は約1608万5696人。このうち、平均額(15万289円)を下回る「15万円未満」の階級までを積み上げると、約807万212人になります。
- 受給権者の合計:約1608万5696人
- 15万円未満の人数:約807万212人 → 全体の約50.2%
- 15万円以上の人数:約801万5484人 → 全体の約49.8%
つまり、厚生年金の平均額を下回る人は、およそ2人に1人という計算になります。「平均15万円」と聞いて自分の額が少なく感じたとしても、実際には受給者の約半数が同じ側にいる、というのが分布から読み取れる姿です。
同じ計算を国民年金でも行うと、平均5万9310円に対して「5万円未満」の階級までの合計は約689万1592人。受給権者の合計約3345万4617人に対して、約20.6%にとどまります。国民年金は、平均を大きく下回る人の割合がむしろ小さい制度だといえます。
※厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」に記載された1万円刻みの受給額分布の人数を合計し、階級の境界で単純に区切って算出した目安です。平均額はそれぞれの階級の内部に位置するため、境界での区切りによる誤差を含みます。実際の受給額は個人ごとに異なります。
5. 監修者コメント:平均を「自分の物差し」に変えるために
公的年金は、老後の家計における「土台」にあたるものです。生涯にわたって受け取れる終身の給付であり、物価や賃金の動きを踏まえて毎年度見直される仕組みを持っています。この性質は、預貯金や運用資産にはないものです。まずはこの土台の大きさを正しく知ることが、ライフプランを考える出発点になります。
そのうえで、一覧表の平均額はあくまで「全体の傾向」を示すものだとご理解ください。年金額は、加入していた制度、加入期間、そして現役時代の報酬によって一人ひとり異なります。平均と自分の額が違うのは当然のことで、そこに良し悪しはありません。大切なのは、自分の見込み額を出発点にして、生活費との差を把握することです。
確認していただきたい観点を、順に整理します。第一に、ねんきん定期便やねんきんネットで自分の見込み額を確認すること。第二に、額面と手取りは違うため、社会保険料や税金が差し引かれた後の金額で考えること。第三に、世帯としての合計額で見ること。そして第四に、受給開始の時期を繰上げ・繰下げによって選べる余地があることです。
公的年金だけで生活費のすべてを賄えるかどうかは、住まいや家族構成によって答えが変わります。足りない部分をどう補うかについては、就労の継続、支出の見直し、私的年金や資産形成といった複数の道があり、どれが正解ということはありません。ご自身の状況に当てはめて考えるための材料として、この記事の数字を使っていただければと思います。
5.1 【独自試算】平均どおりの夫婦は「モデル世帯」に月9730円届かない
監修者コメントにあった「世帯としての合計額で見る」という観点から、もう一つ試算をしてみます。この記事に出てきた平均額を組み合わせて、夫婦2人の世帯としての年金収入を計算してみるものです。
よくあるのが「会社員だった夫+国民年金のみの妻」という組み合わせです。この記事の数字をそのまま当てはめると、次のようになります。
- 夫(厚生年金・男性の平均):16万9967円
- 妻(国民年金・女性の平均):5万7582円
- 世帯合計:22万7549円(年間約273万588円)
一方、2026年度の厚生年金のモデル世帯(会社員の夫と国民年金のみの妻)の金額は、夫婦2人合計で月額23万7279円でした。両者を比べると、次の差が生じます。
- モデル世帯との差:月額▲9730円
- 年間に換算すると:▲11万6760円
「モデル世帯」という言葉から、多くの人が受け取っている標準的な金額を想像しがちですが、モデル世帯は平均額ではなく、一定の前提を置いて計算された基準値です。平均どおりの夫婦を組み合わせた場合、そこには年間で11万円台の開きが生まれる計算になります。年金額を見積もるときは、モデル世帯の数字ではなく、自分たちの見込み額を足し合わせて考えるほうが実態に近づきます。
※この記事に掲載された平均年金月額(男女別・全年齢)を単純に足し合わせた目安の試算です。実際の年金額は加入履歴によって個人ごとに異なり、加給年金や振替加算などの加算、社会保険料・税金の控除は考慮していません。将来の受給額を保証するものではありません。













