人事院は2026年9月4日に「令和8年国家公務員給与等実態調査報告書」を公表しました。
この調査によると、国家公務員の平均給与月額は43万9356円です。2026年8月7日には人事院勧告も出されていて、実際の給与改定は秋の給与法改正で決まります。
公務員は景気に左右されにくく安定しているとよく言われますが、会社員と比べて本当に高いのでしょうか。
そこで今回は、国家公務員のモデル給与例と、厚生労働省の賃金構造基本統計調査による会社員の賃金を並べて、生涯年収でどれだけ違うのかを見ていきます。地方公務員の水準もあわせて確認します。
1. 【役職別】国家公務員のモデル給与例
内閣官房内閣人事局は、俸給表に基づいて実際にどのくらいの給与が支給されているかをモデル給与例として示しています。
令和7年度のモデルは次のとおりです。
国家公務員のモデル給与例は役職によって月額で5倍以上の開きがある1/2
出所:内閣官房内閣人事局「国家公務員の給与(令和8年版)」を参考にLIMO編集部作成
同じ50歳でも、地方機関の課長が月42万9800円なのに対し、本府省の課長は月85万7720円です。年間給与では708万5000円と1447万3000円で、倍近い開きがあります。
公務員の給与といっても、勤務先が本府省か地方機関かで水準はまったく違います。
なお、内閣人事局の資料には、本府省に勤務する場合の新卒初任給の例が示されています。総合職の大卒程度で月30万1200円、一般職の大卒程度で月28万7600円、一般職の高卒者で月24万9560円です。
これらは地域手当などの諸手当を含んだ額です。人事院は初任給の例を本府省勤務と地方機関勤務に分けて示しており、勤務する官署の所在地によって額は変わります。
人事院も「上記は一例であり、初任給は採用後の職務に応じ、有する経歴、能力等を考慮して決定される」と説明しています。手元の額がこのとおりになるとは限らない点は、押さえておきたいところです。
2. 地方公務員の給与水準
続いて地方公務員を見ていきます。総務省が2025年12月25日に公表した令和7年地方公務員給与実態調査によると、一般行政職の平均給与月額は41万3968円でした。
内訳は平均給料月額が32万6911円、諸手当月額が8万7057円です。平均年齢は42.0歳となっています。
同じ時点の国家公務員の行政職俸給表(一)適用職員は、平均年齢41.9歳で平均給与月額41万4480円でした。地方と国でほとんど差がありません。
国の水準を100としたラスパイレス指数は98.9で、前年より0.1ポイント上がっています。地方公務員のほうがわずかに低い、という位置関係です。
3. 【企業規模・男女別】会社員の賃金はどれくらいか
では会社員はどうでしょうか。厚生労働省の令和7年賃金構造基本統計調査から、一般労働者の賃金を見ていきます。
ここでいう賃金は所定内給与額で、残業代と賞与は含みません。国家公務員のモデル給与例の月額とは含まれるものが完全には一致しないので、目安として比べます。
3.1 企業規模で比べる
企業規模別の賃金は、男女計で大企業38万5100円、中企業32万6200円、小企業30万5600円です。
男性では大企業42万8000円、中企業35万6000円、小企業32万9600円となります。女性では大企業31万800円、中企業28万100円、小企業26万4000円です。
全体の平均は男女計で34万600円、男性37万3400円、女性28万5900円でした。男性を100としたときの女性の賃金は76.6です。
3.2 役職で比べる
役職別に見ると差はもっとはっきりします。男女計で部長級63万5800円、課長級52万9200円、係長級39万9200円です。
会社員の役職別賃金と国家公務員のモデル月額を並べると本府省課長だけが突出する2/2
出所:厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」および内閣官房内閣人事局「国家公務員の給与(令和8年版)」を参考にLIMO編集部作成
男女別では、男性が部長級64万2400円、課長級54万1400円、係長級41万900円です。女性は部長級57万8300円、課長級47万300円、係長級36万5700円となっています。
部長級の平均年齢は53.1歳、平均勤続年数は22.6年でした。役職に就くまでに20年以上かかるのが平均的な姿です。
4. 役職をそろえて月額で比べる
ここまでの数字を並べると、答えは勤務先によって分かれます。
本府省の課長は月85万7720円で、会社員の部長級63万5800円を20万円以上うわまわります。年間給与でも1447万3000円ですから、民間の管理職と比べてかなり高い水準です。
一方、地方機関の課長は月42万9800円で、会社員の課長級52万9200円を10万円近く下回ります。地方機関の係長も月30万1600円で、係長級39万9200円に届きません。
つまり、本府省まで昇進すれば会社員の管理職を上回りますが、地方機関にとどまる場合は会社員の同じ役職より低くなる、という関係です。
5. 生涯年収で比べるとどれだけ違うのか
ここまでは1か月あたりの金額で見てきました。これを働く期間に引き伸ばすと、差はもっとはっきりします。
22歳から59歳までの38年間について、賞与を含まない月額だけを積み上げて試算しました。国家公務員はモデル給与例の月額を、会社員は賃金構造基本統計調査の年齢階級別の賃金を使っています。
国家公務員が本府省のコースをたどった場合は約2億4653万円です。34歳まで本府省係長、49歳まで本府省課長補佐、そのあとは本府省課長として60歳まで働いた前提で計算しました。
会社員の男性は、大企業で約1億9558万円、中企業で約1億6197万円、小企業で約1億4809万円となります。
一方、国家公務員が地方機関にとどまった場合は約1億5291万円でした。49歳まで地方機関係長、そのあとは地方機関課長という前提です。
高い順に並べると次のようになります。
- 国家公務員(本府省コース)約2億4653万円
- 会社員(大企業・男性)約1億9558万円
- 会社員(中企業・男性)約1億6197万円
- 国家公務員(地方機関コース)約1億5291万円
- 会社員(小企業・男性)約1億4809万円
本府省まで昇進できれば、大企業の会社員を5000万円以上うわまわります。ただし地方機関にとどまった場合は中企業の会社員を900万円ほど下回り、小企業の会社員との差も500万円ほどにとどまります。
公務員の生涯年収が高いかどうかは、どこに配属されるかで答えが変わる、というのが数字の示すところです。