「管理職になっても思ったほど楽にならない」「責任ばかり増える気がする」。そんな声を耳にすることが増えました。役職が上がれば収入は増えると分かっていても、素直に手を挙げにくいと感じている方もいるのではないでしょうか。

厚生労働省の「令和7年賃金構造基本統計調査」によると、部長級の所定内給与は月額63万5800円、課長級は52万9200円でした。一方、リクルートマネジメントソリューションズが2026年2月に公表した「管理職のあり方に関する実態調査」では、管理職の約6割が今後も管理職を続けたいと答えています。

この記事では、まず部長・課長・係長がどのくらいの収入を得ているのかを一覧で確認し、そのうえで、管理職本人の意識と一般社員の受け止め方の違いを見ていきます。

ココがポイント
  • 部長級の所定内給与は月額63万5800円、賞与を年4カ月分とすると年収の目安は約1017万円
  • 管理職の約6割が今後も管理職を続けたいと回答。理由の最多は「やりがい」
  • 続ける意向は、組織からの支援を感じているかどうかで65.2%と41.6%に分かれる

1. 部長・課長・係長はいくらもらっているのか

まずは収入から確認していきます。厚生労働省の「令和7年賃金構造基本統計調査」から、役職別の所定内給与を見ていきましょう。残業代などを除いた6月分の税引き前の金額です。

1.1 役職別の平均給与

雇用期間の定めのない一般労働者について、男女計の所定内給与は次のとおりです。

  • 部長級:63万5800円(男性64万2400円/女性57万8300円)
  • 課長級:52万9200円(男性54万1400円/女性47万300円)
  • 係長級:39万9200円(男性41万900円/女性36万5700円)
  • 非役職者:31万500円(男性33万2100円/女性28万100円)

非役職者と部長級では、月額で32万5300円の差があります。役職が一段上がるごとに、10万円前後ずつ積み上がる形です。

1.2 賞与を含めた年収の目安

ここに賞与を年4カ月分と仮定して加えると、年収の目安は次のようになります。

  • 部長級:約1017万円
  • 課長級:約847万円
  • 係長級:約639万円
  • 非役職者:約497万円

令和7年賃金構造基本統計調査による部長級・課長級・係長級・非役職者の所定内給与と年収の目安1/2

令和7年賃金構造基本統計調査による部長級・課長級・係長級・非役職者の所定内給与と年収の目安

出所:出所:厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」をもとにLIMO編集部作成

賞与の月数は勤務先によって異なりますので、あくまで目安として見てください。数字だけを並べると役職に就くことは割に合うように思えますが、その裏側では時間や気持ちの余裕という見えにくい負担も生じているようです。

2. 管理職の約6割は「今後も続けたい」と答えている

収入の次は、管理職本人がいまの役割をどう受け止めているのかを見ていきます。

リクルートマネジメントソリューションズが2026年2月24日に公表した「管理職のあり方に関する実態調査」では、管理職188名と一般社員166名の計354名がリアルな本音を回答しています。

2.1 続けたい理由は「やりがい」、続けたくない理由は「業務負荷」

同調査によると、「今後も管理職を続けたい」「どちらかといえば続けたい」と答えた管理職は約6割でした。現在の組織で管理職として働くことに「満足している」「どちらかといえば満足している」と答えた割合も、同じく約6割を占めています。

続けたい理由として最も多く挙がったのは「やりがい」でした。部下の成長を支えることや、組織の成果に貢献することを価値と捉えている様子がうかがえます。適性や向き不向きも、続ける意向を支える要因になっていました。

一方、続けたくない理由として最も多かったのは「業務負荷」です。業務量の多さや、仕事と生活のバランスが崩れることが負担になっている可能性があると報告されています。

2.2 時間外の働き方には一般社員との差があります

同調査では勤務実態も尋ねており、管理職は一般社員に比べて「勤務時間外の連絡」「勤務時間外の業務」「休日の業務対応」のいずれも選択率が高いという結果でした。

「ミーティングが多く自分のタスクを行う時間がない」といった項目でも、管理職の負荷が相対的に高くなっています。

満足度や継続意向は一定の水準にある一方で、負荷そのものは管理職に集まっている。この2つが同時に起きているというのが、調査から読み取れる姿です。

3. 【管理職】続ける意向を分けるのは何か

同じように負荷が高くても、続けたいと考える方とそうでない方がいます。同調査は、その差を生む要因として3つを挙げています。

3.1 組織からの支援を感じられているかどうか

組織から支援されているという認識が高い管理職では、続けたいと答えた割合が65.2%でした。これに対し、認識が低い管理職では41.6%にとどまっています。

自分の貢献や成果が評価されている、価値観を尊重されていると感じられるかどうかが、役割の受け止め方を左右している可能性があるでしょう。

3.2 孤独感とワークエンゲージメント

さらに、職場での孤独感が低い管理職では継続意向が70.2%、孤独感が高い管理職では40.6%と、およそ30ポイントの開きが出ました。

仕事への活力や充実感を示すワークエンゲージメントについても、高い管理職では74.6%、低い管理職では48.7%という差が見られます。

立場上、本音を共有しにくい状況が続くと孤立感が強まりやすくなります。相談できる相手がいるかどうかが、分かれ目の一つになっているといえます。

組織からの支援・孤独感・ワークエンゲージメント別に見た管理職の継続意向の割合2/2

組織からの支援・孤独感・ワークエンゲージメント別に見た管理職の継続意向の割合

出所:リクルートマネジメントソリューションズ「管理職のあり方に関する実態調査」をもとにLIMO編集部作成

3.3 時間の使い方にも違いが

管理職の時間の使い方を見ると、エンゲージメントも継続意向も高い層ではプレイヤー業務の割合が21.5%にとどまり、方針づくりや部下のマネジメントに時間を配分できていました。

反対に、どちらも低い層ではプレイヤー業務が29.6%と最も高くなっています。

役職に就いても自分の担当業務が残ったままだと、管理職本来の役割に向き合う時間が確保しにくくなる。数字はそうした構造を示しているようです。

太田 彩子

役職と収入の話は、そのまま家計の話につながりやすいです。収入が増えると税や社会保険料の負担も変わりますので、額面の増え方と手元に残る金額は分けて考えておくと安心です。判断に迷うときは、勤務先の担当部署に確認してみてください。

4. 一般社員の側はどう受け止めているのか

同じ調査は一般社員にも管理職への意向を尋ねています。管理職本人の回答とは、かなり違う姿が見えてきます。

4.1 管理職になりたいと答えたのは18.1%

一般社員に今後管理職になりたいかを尋ねたところ、「なりたい」「どちらかといえばなりたい」と答えたのは18.1%でした。

「なりたくない」が44.0%、「どちらかといえばなりたくない」が22.9%で、合わせて66.9%が否定的です。「どちらともいえない」も15.1%となりました。

なりたくない理由としては、責任や業務負荷の重さ、報酬や仕事と生活のバランスへの懸念が挙げられています。現場で専門性を発揮したいという声もありました。

4.2 上司への満足度が意向を左右している

現在の直属の上司と働くことに「満足している」「どちらかといえば満足している」と答えた一般社員は43.3%で、満足していない層の24.7%を上回りました。

そして、上司への満足度が高い一般社員ほど管理職を前向きに捉える傾向が示されています。管理職という役割そのものが敬遠されているというより、日常で見えている管理職の姿が影響しているという見方ができます。

5. 収入が増えると、負担も後から変わる

筆者は元公務員として、国民健康保険と後期高齢者医療の保険料を計算する仕事をしていました。所得の情報をもとに保険料を計算する立場から、収入の変化が負担にどう表れるのかを見てきました。

5.1 住民税は前年の所得で決まる

昇進して収入が増えると、その分だけ手取りも増えるように思えます。ただ、住民税は前年の所得をもとに計算されるため、負担が重くなるのは翌年からです。役職に就いた年より、その次の年のほうが差し引かれる額は大きくなります。

保険料を計算する仕事をしていた立場から見ても、収入が動いた年と負担が動く年がずれることは、家計の見通しを立てにくくする要因の一つでした。増えた分をそのまま生活水準に回すのではなく、1年先の負担増を見込んでおくと落ち着いて構えられます。

5.2 退職後に驚く方が多かったのも同じ理由

窓口でとくに多かったのが、勤務先の健康保険から国民健康保険に切り替わった方からの相談です。国民健康保険料の所得割は前年の総所得金額等をもとに計算されるため、現役時代の所得が高かった方ほど、退職直後の保険料が高くなります。

「収入がなくなったのに保険料が上がった」という声を何度も聞きました。役職に就いて収入が増えることは、退職後の1年目の負担にも関わってきます。この点は早い段階で知っておいて損はありません。

6. 数字の読み方で気をつけたいこと

今回紹介した数字を自分に当てはめるときは、いくつか前提を確認しておく必要があります。

6.1 年収の目安は賞与4カ月分を仮定した試算です

部長級で約1017万円という金額は、所定内給与に賞与を年4カ月分加えて計算した目安です。賞与の水準は業種や企業規模によって差がありますし、賞与のない勤務先もあります。

また、所定内給与には残業代が含まれていません。管理監督者にあたる場合は時間外手当の対象外となることもあり、役職に就いたことで額面の増え方が想定より小さくなる例もあります。

6.2 調査結果は回答者354名の傾向です

今回参照した意識調査は、管理職188名と一般社員166名の回答をまとめたものです。規模としては限られていますので、そのまま世の中全体の姿と受け取るのは避けたほうがよいでしょう。

「管理職は損だ」「いや、やりがいがある」といった一つの結論に寄せず、傾向の一つとして参考にする程度がちょうどよいと思います。

7. 【対応策】打診されたときに確認しておきたいこと

役職を打診された場面で、確認しておくと判断しやすくなる点を整理します。

7.1 手取りがどう変わるかを試算する

額面がいくら増えるかだけでなく、税や社会保険料を差し引いた後にいくら残るのかを確認します。勤務先の給与担当に聞けば、おおよその見込みを教えてもらえることがあります。

住民税の増加は翌年からになりますので、その年と翌年の2年分で見ておくと実態に近くなります。

7.2 担当業務がどこまで残るのかを確認する

調査では、プレイヤー業務の割合が高い層ほど続ける意向が低いという結果が出ていました。役職に就いたあと、いまの担当業務がどれだけ引き継がれるのかは、打診の段階で確認しておきたいところです。

相談できる相手がいるかどうかも、続けられるかどうかを左右します。同じ立場の管理職と話す機会があるか、上位者に相談できる関係があるかを見ておくとよいでしょう。

7.3 増えた分の置き場所を決めておく

収入が増えても、その分だけ支出がふくらんで手元に残らないという例は少なくありません。増えた金額のうち一定額を先に取り分けておくと、生活水準が上がりすぎるのを防げます。

NISAのつみたて投資枠やiDeCoを使う方法もありますが、いずれも元本割れの可能性があり、iDeCoは原則60歳まで引き出せません。家計の状況によって向き不向きが変わりますので、自分に合う方法をじっくり検討してみましょう。

8. まとめにかえて

部長級の所定内給与は月額63万5800円、課長級は52万9200円で、賞与を年4カ月分と仮定すると年収の目安はそれぞれ約1017万円、約847万円になります。役職に就くことで収入が増えやすいといえるでしょう。

その一方で、管理職には時間外の対応や業務量の負荷が集まりやすく、続ける意向は組織からの支援や孤独感の有無で大きく分かれていました。一般社員の66.9%が管理職に否定的という結果も、そうした姿を見てのことかもしれません。

世間で語られるイメージや一つの調査結果に判断を委ねる必要はありません。まずは手取りがどう変わるのか、担当業務がどこまで残るのかという事実を確認することから始めてみましょう。分からない点は、勤務先の担当部署に相談してみてください。

参考資料

太田 彩子