4. 一般社員の側はどう受け止めているのか

同じ調査は一般社員にも管理職への意向を尋ねています。管理職本人の回答とは、かなり違う姿が見えてきます。

4.1 管理職になりたいと答えたのは18.1%

一般社員に今後管理職になりたいかを尋ねたところ、「なりたい」「どちらかといえばなりたい」と答えたのは18.1%でした。

「なりたくない」が44.0%、「どちらかといえばなりたくない」が22.9%で、合わせて66.9%が否定的です。「どちらともいえない」も15.1%となりました。

なりたくない理由としては、責任や業務負荷の重さ、報酬や仕事と生活のバランスへの懸念が挙げられています。現場で専門性を発揮したいという声もありました。

4.2 上司への満足度が意向を左右している

現在の直属の上司と働くことに「満足している」「どちらかといえば満足している」と答えた一般社員は43.3%で、満足していない層の24.7%を上回りました。

そして、上司への満足度が高い一般社員ほど管理職を前向きに捉える傾向が示されています。管理職という役割そのものが敬遠されているというより、日常で見えている管理職の姿が影響しているという見方ができます。

5. 収入が増えると、負担も後から変わる

筆者は元公務員として、国民健康保険と後期高齢者医療の保険料を計算する仕事をしていました。所得の情報をもとに保険料を計算する立場から、収入の変化が負担にどう表れるのかを見てきました。

5.1 住民税は前年の所得で決まる

昇進して収入が増えると、その分だけ手取りも増えるように思えます。ただ、住民税は前年の所得をもとに計算されるため、負担が重くなるのは翌年からです。役職に就いた年より、その次の年のほうが差し引かれる額は大きくなります。

保険料を計算する仕事をしていた立場から見ても、収入が動いた年と負担が動く年がずれることは、家計の見通しを立てにくくする要因の一つでした。増えた分をそのまま生活水準に回すのではなく、1年先の負担増を見込んでおくと落ち着いて構えられます。

5.2 退職後に驚く方が多かったのも同じ理由

窓口でとくに多かったのが、勤務先の健康保険から国民健康保険に切り替わった方からの相談です。国民健康保険料の所得割は前年の総所得金額等をもとに計算されるため、現役時代の所得が高かった方ほど、退職直後の保険料が高くなります。

「収入がなくなったのに保険料が上がった」という声を何度も聞きました。役職に就いて収入が増えることは、退職後の1年目の負担にも関わってきます。この点は早い段階で知っておいて損はありません。

6. 数字の読み方で気をつけたいこと

今回紹介した数字を自分に当てはめるときは、いくつか前提を確認しておく必要があります。

6.1 年収の目安は賞与4カ月分を仮定した試算です

部長級で約1017万円という金額は、所定内給与に賞与を年4カ月分加えて計算した目安です。賞与の水準は業種や企業規模によって差がありますし、賞与のない勤務先もあります。

また、所定内給与には残業代が含まれていません。管理監督者にあたる場合は時間外手当の対象外となることもあり、役職に就いたことで額面の増え方が想定より小さくなる例もあります。

6.2 調査結果は回答者354名の傾向です

今回参照した意識調査は、管理職188名と一般社員166名の回答をまとめたものです。規模としては限られていますので、そのまま世の中全体の姿と受け取るのは避けたほうがよいでしょう。

「管理職は損だ」「いや、やりがいがある」といった一つの結論に寄せず、傾向の一つとして参考にする程度がちょうどよいと思います。

7. 【対応策】打診されたときに確認しておきたいこと

役職を打診された場面で、確認しておくと判断しやすくなる点を整理します。

7.1 手取りがどう変わるかを試算する

額面がいくら増えるかだけでなく、税や社会保険料を差し引いた後にいくら残るのかを確認します。勤務先の給与担当に聞けば、おおよその見込みを教えてもらえることがあります。

住民税の増加は翌年からになりますので、その年と翌年の2年分で見ておくと実態に近くなります。

7.2 担当業務がどこまで残るのかを確認する

調査では、プレイヤー業務の割合が高い層ほど続ける意向が低いという結果が出ていました。役職に就いたあと、いまの担当業務がどれだけ引き継がれるのかは、打診の段階で確認しておきたいところです。

相談できる相手がいるかどうかも、続けられるかどうかを左右します。同じ立場の管理職と話す機会があるか、上位者に相談できる関係があるかを見ておくとよいでしょう。

7.3 増えた分の置き場所を決めておく

収入が増えても、その分だけ支出がふくらんで手元に残らないという例は少なくありません。増えた金額のうち一定額を先に取り分けておくと、生活水準が上がりすぎるのを防げます。

NISAのつみたて投資枠やiDeCoを使う方法もありますが、いずれも元本割れの可能性があり、iDeCoは原則60歳まで引き出せません。家計の状況によって向き不向きが変わりますので、自分に合う方法をじっくり検討してみましょう。

8. まとめにかえて

部長級の所定内給与は月額63万5800円、課長級は52万9200円で、賞与を年4カ月分と仮定すると年収の目安はそれぞれ約1017万円、約847万円になります。役職に就くことで収入が増えやすいといえるでしょう。

その一方で、管理職には時間外の対応や業務量の負荷が集まりやすく、続ける意向は組織からの支援や孤独感の有無で大きく分かれていました。一般社員の66.9%が管理職に否定的という結果も、そうした姿を見てのことかもしれません。

世間で語られるイメージや一つの調査結果に判断を委ねる必要はありません。まずは手取りがどう変わるのか、担当業務がどこまで残るのかという事実を確認することから始めてみましょう。分からない点は、勤務先の担当部署に相談してみてください。

参考資料

太田 彩子