5. 粗利率は業種の中央値を大きく上回る。それでも営業利益率が低い理由

ローコスト住宅という言葉からは、薄い利幅で数をこなす商売が思い浮かぶ。だが2026年5月期の数字はそう単純ではない。

売上高1,977億円に対して売上総利益は479億円で、粗利率は24%台になる。建設業の粗利率の中央値は16.0%だから、これを大きく上回っている。

利幅が薄いのではない。薄いのはその先だ。販売費及び一般管理費は440億円で、売上高に対して22%台に達する。ここで粗利益のほとんどが消える。

結果として営業利益率は1.9%になった。建設業の営業利益率の中央値は7.1%である。粗利率では大きく上回り、営業利益率では大きく下回るという、ねじれた形になっている。

住宅を直接売る商売は、展示場と広告と営業人員に金がかかる。営業拠点は234ヶ所だ。この販売コストが固定費に近い性質を持つため、棟数が減ると利益率が一気に落ちる。

5期を並べると、その効き方がはっきりする。売上高は2,407億円、2,560億円、2,477億円、2,008億円、1,977億円と推移し、営業利益は118億円、132億円、125億円、41億円、38億円と動いた。営業利益率は4.9%、5.2%、5.1%、2.0%、1.9%である。

売上高がピークから2割強落ちたところで、営業利益は3分の1以下になった。固定費の重さがそのまま増幅装置として働いている。

ROE(自己資本利益率)も同じ向きだ。2021年5月期は30.3%だったが、2025年5月期は4.1%まで下がった。建設業の中央値は10.2%である。

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出所:タマホーム株式会社 有価証券報告書および決算短信をもとに筆者作成

出所:タマホーム株式会社 有価証券報告書および決算短信をもとに筆者作成

5.1 配当と借入。財務の側で起きていること

利益が細る一方で、配当は先に減っている。2025年5月期の年間配当は195円だったが、2026年5月期は125円になった。

それでも1株当たり当期純利益41.86円に対して125円だから、利益を大きく超える配当が続いている形だ。次期の予想は130円とされている。

自己資本比率は前期の37.1%から34.3%へ下がった。純資産は297億円で、配当金の支払56億円が主な減少要因である。

会社が短信に載せた参考指標も動いている。債務償還年数は前期の8.5年から16.3年へ、インタレスト・カバレッジ・レシオは10.7倍から2.6倍へ変化した。営業キャッシュフローが22億円から9億円へ細ったためだ。

借入の構成も変わった。短期借入金は75億円から123億円へ増え、長期借入金は79億円から14億円へ減っている。短期に寄った形だ。

自己資本比率34.3%は建設業の中央値58.4%を大きく下回る。翌期の計画が前提にする分譲の回転が鈍れば、財務の側から先に効いてくる並びになっている。

6. 筆者コメント

5期の数字を並べて眺めると、この会社の利益は売上の水準に対してかなり敏感に動くことが分かる。

売上が伸びた期と落ちた期で、営業利益率は倍以上の開きになる。粗利率そのものはほとんど動いていないから、振れているのは販売コストの吸収度合いだけだ。

この構造は、翌期の計画をどう読むかに直結する。売上が本文で触れた水準まで戻れば固定費の吸収が改善し、利益は計画に近づく。戻らなければ、逆側に同じ幅で振れる余地がある。

私が気にかかるのは、その振れを財務が支えられるかという点だ。自己資本比率は2期続けて下がっている。利益を超える配当を続けながら在庫を積むのは、両側から自己資本を薄くする組み合わせになる。

住宅会社を見るときは、棟数と粗利率だけでなく、販売コストの水準と在庫の回転を並べて追うことをおすすめしたい。全社の営業利益は、その2つの掛け算でほとんど決まってしまう。

 

参考資料

7.1 免責事項

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石津 大希