借入にほとんど頼らず自己資本比率の高い会社は、それだけで安心できる。そう受け取られることが多い。だが資本を厚く抱えることと、その資本を効率よく回すことは別の問題だ。しまむら(8227)の数字は、その二つがずれたまま5期続いている。株価はこの1カ月で最も低い水準まで下げた。
※本記事中の株価は、過去の株式分割の影響を調整した値を使用しています。
- ①2027年2月期1Qは売上高1,816億円で前年同期比+7.9%、営業利益178億円で+16.8%と増収増益になった。
- ②2026年2月期の営業利益率8.78%は小売業の中央値3.66%を大きく上回るが、ROE9.0%は中央値7.46%をわずかに超える程度にとどまる。
- ③株価は2026年8月20日の終値3,290円で直近1カ月の最も低い水準。直近時点のPERは14倍台、PBRは1.3倍台。
1. 株価は1カ月で最も低い水準へ、PERは14倍台という評価
2026年7月22日の終値は3,314円。そこから7月29日には3,571円まで上げ、直近1カ月では最も高い水準をつけた。
だが8月に入ると戻り足は続かなかった。8月5日に3,308円まで下げ、8月中旬は3,300円台から3,400円台での往復が続いている。
2026年8月20日の終値は3,290円。直近1カ月で最も低い水準となった。前日の3,341円から小幅に下落している。
1カ月では3,314円から3,290円へ、ほぼ横ばいの小幅安だ。ただ7月末の3,571円からは8%近く下げている。
直近時点のPERは14倍台、PBRは1.3倍台。会社が示す通期の1株当たり当期純利益予想227.92円を織り込んだ水準である。
増益基調が続くなかで株価が下押しすれば、倍率は自然に切り下がる。いま起きているのはそういう形だ。
2. 2027年2月期1Qは営業利益+16.8%。増収を上回る増益
2027年2月期1Qの売上高は1,816億円で前年同期比+7.9%。営業利益は178億円で+16.8%、経常利益は187億円で+18.9%、当期純利益は128億円で+19.0%だった。
注目したいのは伸び方の差である。売上が7.9%増えるあいだに営業利益は16.8%増えた。費用の伸びが売上の伸びを下回ったということで、利益率が改善したことになる。
会社は国内経済について、輸出の拡大と底堅い個人消費に支えられ、実質GDP成長率が1月から3月にかけて前期比年率+1.8%と2四半期連続のプラスになったとしている。一方で原油高や一部原材料の供給不安は、依然として企業活動の重石だという。
通期予想は売上高7,291億円で+4.2%、営業利益668億円で+8.7%、当期純利益473億円で+6.4%。1Q時点の営業利益の進捗は26.8%で、単純な4分の1のペースをわずかに上回る。
通期の増益率+8.7%に対して、1Qの実績は+16.8%。会社計画は1Qの勢いをそのまま年間へ延ばしていない。保守的な置き方だと読み取れる。
3. 粗利は薄いのに営業利益率は業種の2倍超。ROEは中央値並みという落差
衣料品のディスカウント業態と聞けば、薄利多売という言葉が出てくる。数字を見ると、その半分だけが当たっている。
2026年2月期の粗利率は35.0%で、小売業の粗利率中央値48.9%を大きく下回る。仕入れと売価の差で稼ぐタイプの会社ではない。
ところが営業利益率は8.78%。小売業の中央値3.66%の2倍を超える。答えは費用の側にあり、販売費及び一般管理費1,837億円は売上高に対して26.2%にとどまる。粗利率からこの販管費率を引いた残りが、そのまま営業利益率になっている。
粗利率と営業利益率の中央値の差から見て、小売業では販管費率が4割台に乗る会社が多いと考えられる。しまむらはその半分強で店を回している。薄利多売ではなく、薄利低コストと呼ぶべき形だ。
では資本効率はどうか。2026年2月期のROE(自己資本利益率)は9.0%。小売業のROE中央値7.46%を上回るが、その差は1.5ポイントほどしかない。営業利益率が中央値の2倍を超えているのに、ROEはほとんど並んでいる。
落差の理由は自己資本比率にある。88.1%という水準は、小売業の中央値48.9%の2倍近い。分子の利益が厚くても、分母の自己資本がそれ以上に厚ければROEは伸びない。
借入にほとんど頼らない財務は、一般には好感されやすい。もっとも、負債をほとんど使わない資本構成が効率の面で最適かどうかは、また別の論点だ。
4. 筆者コメント
印象的なのは、営業利益率とROEの並び方だ。片方は業種の2倍を超え、もう片方は業種と大差ない。同じ会社の同じ期の数字である。
この形は、事業が強いことと株主の資本が効率よく働いていることが別の問題だと教えてくれる。店の運営は明らかにうまい。資本の置き方はそこまで攻めていない。
厚い自己資本は、仕入れや出店の判断を焦らせないという意味では武器になる。値下げ競争が起きても持ちこたえられる。
ただ武器として使われていないなら、それは遊んでいる資本だ。決算を見るときは、利益率の高さと同じ熱量で、その利益が何倍の資本から生まれたのかを確かめる姿勢を持ってほしい。
