ローコストの注文住宅、という一語で片付けられがちな会社である。だがタマホーム(1419)の2026年5月期を開くと、その注文住宅を含む住宅事業がセグメント損失に沈んでいた。全社の利益を支えたのは別の事業だ。株価はこの1カ月で水準を切り上げ、直近は3,095円まで戻している。

※本記事中の株価は、過去の株式分割の影響を調整した値を使用しています。

この記事の3つのポイント
  • ①2026年5月期の売上高は1,977億円で前期比▲1.5%、営業利益は38億円で▲6.6%だった
  • ②株価は8月上旬に2,905円まで下押ししたのち直近は3,095円。PERは22.43倍、PBRは3.02倍
  • ③会社は2027年5月期に売上高2,300億円、営業利益75億円と大幅な増益を計画している

1. 株価は1カ月の上限近くへ。ただし通期の中身は減益だった

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出所:各種資料をもとに筆者作成

出所:各種資料をもとに筆者作成

直近の終値は3,095円だ。前日の3,000円から95円、率にして3.2%上げている。

この1カ月をたどると、7月下旬に3,105円まで上げたあと、8月上旬には2,905円まで下押しした。そこから戻り、足元は期間の上限に迫る水準にある。

起点だった7月下旬の2,958円と比べれば、1カ月で5%近く高い。

直近時点のPBR(株価純資産倍率)は3.02倍である。2026年5月期末の1株当たり純資産は1,023円だったから、株価はその3倍を超える水準で取引されていることになる。

PER(株価収益率)は22.43倍だ。ただしこの倍率は、2026年5月期の1株当たり当期純利益41.86円ではなく、会社が示した2027年5月期の予想1株当たり当期純利益137.99円を前提にした水準と読める。実績で割れば70倍台になる。

株価が動く理由は地合いや需給も絡むため断定はできない。ただこの1カ月の値幅が2,900円台から3,100円台に収まっていることを踏まえると、翌期の大幅増益計画をどこまで織り込むかで綱引きが続いている可能性は高い。

2. 主力が赤字に沈み、戸建分譲が支えた。セグメントを開くと見える構図

2026年5月期の連結業績は、売上高1,977億円で前期比▲1.5%、営業利益38億円で▲6.6%、親会社株主に帰属する当期純利益12億円で▲17.9%だった。

減益幅そのものは大きくない。だがセグメントを開くと、中身は入れ替わっている。

住宅事業の売上高は1,359億円で前期比▲7.0%、セグメント損失は▲10億円だった。前期は3億円のセグメント利益だったから、赤字に転じたことになる。

一方で不動産事業は売上高549億円で+14.9%、セグメント利益35億円で+48.1%と伸びた。金融事業は2億円、エネルギー事業は2億円、その他事業は8億円のセグメント利益である。

つまり全社の営業利益38億円は、主力の注文住宅ではなく戸建分譲が作った数字だということになる。

棟数でも同じ向きが出ている。注文住宅の引渡棟数は5,176棟で前期比7.5%の減少、戸建分譲の引渡棟数は1,444棟で7.1%の増加だった。

会社の説明では、注文住宅の集客はWEB施策の変更や住宅取得マインドの低下を背景に低調だったが、価格帯が市場ニーズと合致したことと受注促進施策の効果で成約率は向上し、受注は堅調に推移したという。戸建分譲については用地仕入れが順調に進み、販売活動の強化が引渡棟数の増加につながったとしている。

住宅事業には15億円の減損損失も出ている。会社が開示したセグメント別の減損損失は、全額がこの事業に計上された。

3. 営業利益+95%の計画は、何を前提に置いているのか

会社が示した2027年5月期の計画は強気だ。売上高2,300億円で前期比+16.3%、営業利益75億円で+95.2%、親会社株主に帰属する当期純利益40億円で+229.7%である。

売上高2,300億円は2024年5月期の2,477億円には届かないが、直近2期の水準からは大きく戻す数字になる。

その足がかりは在庫の側にありそうだ。仕掛販売用不動産は前期末の102億円から201億円へ増えている。用地の仕込みが翌期の引渡しに回れば、不動産事業の売上は積み上がる。

一方で受注の側は減っている。注文住宅の受注は7,195棟・1,674億円で、前期の7,375棟・1,743億円から棟数・金額とも下振れした。

会社は2027年5月期を初年度とする中期経営計画「タマステップ2031」を策定したとしている。注文住宅では商品ラインナップの拡充と提案力の強化、不動産事業では用地仕入と販売体制の強化、リフォーム事業では保証延長工事を起点とした大規模リフォーム提案の強化を挙げる。

計画の実現には、住宅事業の損失を止めることが要る。売上高で7割近くを占める事業が赤字のままでは、不動産事業の伸びだけで営業利益を倍にするのは厳しい。

4. 筆者コメント

受注の減少と在庫の増加を同時に見ると、この会社が置かれた場所が見えてくる。

注文住宅の受注は棟数も金額も減った。それでいて仕掛の用地は倍に近い水準まで積み上がっている。稼ぎの重心が、請負から分譲へ移りつつあるということだろう。

この移り方は、リスクの形も変える。請負は受注してから着工するので、在庫を抱える必要が薄い。分譲は先に用地を買い、建てて、売れるまで持つ。地価と金利が動けば、そのぶんが損益に返ってくる。

翌期の計画が売上高で2桁増、営業利益で倍増という形になっているのは、この分譲の回転を前提にしているからだと読める。

決算を追うときは、連結の営業利益より先に住宅事業のセグメント損益を見ることをおすすめしたい。全社の数字は、いま不動産事業の出来に強く引っ張られている。