5. 社会保険の適用拡大で「年収の壁」が動く――最大200万人規模の影響
2025年6月成立の年金制度改正法により、パート等の被用者保険(厚生年金・健康保険)加入要件が見直されます。
注目は、2026年10月に撤廃が予定される月額賃金8.8万円(年収換算106万円)の要件、いわゆる「106万円の壁」です。
企業規模要件も今後10年程度かけ段階的に撤廃されます。試算では、企業規模要件の撤廃などで約90万人、賃金要件撤廃まで含め約200万人が新たに加入対象になるとみられています。
年収の壁を意識して収入を抑えてきた人が、意図せず負担増に直面するケースも出てきそうです。「106万円の壁」撤廃を機に労働時間を延ばして収入を増やす場合、自治体が定める基準を超えると、「住民税非課税世帯」の判定からも外れる点にはあわせて注意が必要です。
6. 制度に頼るだけでなく「自分の貯蓄」も点検しておきたい
年収の壁が動けば非課税世帯から外れる人も出てくるため、公的支援だけに頼らない備えも考えたいところです。参考になるのが実際の貯蓄の実態です。
6.1 では50歳代・おひとりさまの貯蓄事情は?
※貯蓄額データについては「全世代比較の貯蓄額データ」を一部引用しています。
50歳代・おひとりさまの金融資産保有額
- 金融資産非保有:35.2%
- 100万円未満:10.1%
- 100~200万円未満:7.4%
- 200~300万円未満:4.6%
- 300~400万円未満:2.7%
- 400~500万円未満:3.3%
- 500~700万円未満:4.9%
- 700~1000万円未満:4.6%
- 1000~1500万円未満:6.0%
- 1500~2000万円未満:3.3%
- 2000~3000万円未満:5.5%
- 3000万円以上:10.4%
- 無回答:1.9%
- 平均:999万円
- 中央値:120万円
50歳代・おひとりさまの3人に1人以上が金融資産をまったく保有していない一方、平均値は999万円と中央値120万円の8倍以上に開いています。
一部の資産家が平均値を押し上げるためで、優遇制度や年金給付だけに頼らず、少額からのNISA・iDeCo活用も選択肢の一つです。
7. まとめにかえて|「知らなかった」で損をしないために
住民税非課税世帯には現金給付だけでなく国保料の減額や高額療養費の負担軽減、NHK受信料の免除など8つの優遇措置があり、多くは「申請主義」の制度です。
年収の基準が変わる動きも控えていますので、実家の親や自分自身が対象になっていないか、自治体や年金事務所の窓口で確認してみてはいかがでしょうか。貯蓄状況の把握も家計を守る一歩になります。
8. 筆者からのコメント
2025年の「国民生活基礎調査」によれば、65歳以上の高齢者世帯のうち、公的年金・恩給だけで生活している世帯は41.3%にのぼります。
制度改正で働き方の選択肢が広がる一方、年金収入だけに頼らざるを得ない世帯が依然として4割超を占めている現実も見逃せません。
特に単身世帯は保険料や年収基準の見直しが家計に直結しやすいため、毎年届く「ねんきん定期便」で見込み額を確認しておくことも大切です。
今回ご紹介した優遇措置や給付金は、知っているかどうかで受け取れる金額が変わります。
「うちは関係ない」と思い込まず、まずは自治体や年金事務所に一度問い合わせてみることも、家計を守る第一歩になるでしょう。
参考資料
- 総務省統計局「消費者物価指数」
- 総務省「個人住民税」
- 日本年金機構「国民年金保険料の免除・猶予」
- 厚生労働省「高額療養費制度について」
- NHK「受信料免除の対象となる方について」
- こども家庭庁「幼児教育・保育の無償化」
- 文部科学省「高等教育の修学支援新制度」
- 厚生労働省「社会保険の加入対象の拡大について」
- 厚生労働省「被用者保険の適用拡大」試算資料
- 日本年金機構「令和8年度の年金額改定について」
- 厚生労働省「国民生活基礎調査の概況」
- J-FLEC「家計の金融行動に関する世論調査(2025年)」
- LIMO「『2026年最新』住民税非課税世帯を対象とした『優遇措置』8選」
- LIMO「【全世代(20~70歳代)比較】貯蓄額の平均・中央値はいくら?単身・二人以上世帯で比較すると見えた「お金がある人・ない人の差」」


