3. 老齢年金生活者支援給付金、給付額の決まり方

年金生活者支援給付金の金額は、物価変動率を踏まえ年度ごとに改定されるルールがあります。これにより、2026年度分については、前年度から「+3.2%」となりました。

年金生活者支援給付金の支給金額2/3

年金生活者支援給付金の支給金額

出所:厚生労働省「令和8年度の年金額改定についてお知らせします」をもとにLIMO編集部作成

老齢年金生活者支援給付金:2026年度の給付基準額:5620円(月額)

老齢年金生活者支援給付金の実際の給付額は、月額5620円を基準額(2026年度)とし、保険料納付済期間等に応じて決定します。

なお、厚生労働省「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によれば、2025年3月における老齢年金生活者支援給付金の平均給付月額(2025年3月において認定されている平均給付金額)は4146円でした。

3.1 基準額5620円と平均給付額4146円、なぜ差があるのか試算してみる

給付額は「保険料納付済期間等」に応じて決まるため、40年間(480カ月)すべて納付していない人は基準額よりも少なくなります。仮に、保険料納付済期間が432カ月(36年、4年分の未納・免除期間あり)のケースで試算してみましょう。

給付額 = 5620円 ×(432カ月 ÷ 480カ月) = 5058円

4年間の未納・免除期間があるだけで、給付額は基準額から500円以上下がる計算になります。平均給付額(4146円)が基準額(5620円)を下回っているのは、こうした納付済期間の個人差が反映されているためだと考えられます。あくまで一定の前提を置いた目安の試算であり、実際の給付額は納付記録に基づいて決定されます。正確な金額はねんきん定期便や年金事務所でご確認ください。

3.2 年金生活者支援給付金の支給日:原則「偶数月の15日」

「年金生活者支援給付金」は、年金と同じく年6回、偶数月の15日に支払われます(※15日が土日・祝日の場合は、その直前の平日に前倒し)。年金とは別に、同じ口座に同じ日に振り込まれるため、通帳には2つの振込記録が記載されます。

原則として、各支払月にはその前月までの2カ月分がまとめて支払われます。例えば、10月には8月・9月分、12月には10月・11月分、といった具合です。

3.3 この給付金を10年間受け取り続けたら、総額はいくらになる?

月々数千円という金額だけを見ると、家計への影響を実感しにくいかもしれません。平均給付額(4146円)を使って、10年間受け取り続けた場合の総額を試算してみましょう。

4146円 × 12カ月 × 10年 = 約49万8000円

月あたりでは小さく見える金額でも、10年間の累計では約50万円近くになる計算です。請求手続きをしないままだと受け取れないお金であるため、対象になり得る方は忘れずに手続きしておきたいところです。あくまで一定の前提を置いた試算であり、実際の受給額・受給期間は個人によって異なります。

横野 会由子
月々の金額が小さいと後回しにしがちですが、積み重なると決して小さくない金額になります。対象になりそうな方は、請求書が届いたタイミングを逃さず手続きすることをおすすめします。

4. 国民年金・厚生年金の平均月額もあわせて確認

公的年金の本体を、今のシニアはどの程度受給できているのでしょうか。厚生労働省「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」から、国民年金と厚生年金の平均年金月額を、男女全体・男女別に見ていきます。

4.1 国民年金・厚生年金の平均年金月額《全体・男女別》

平均月額は国民年金(老齢基礎年金)が約6万円、厚生年金(国民年金部分も含む)が約15万円です。

国民年金

  • 〈全体〉平均年金月額:5万9310円
  • 〈男性〉平均年金月額:6万1595円
  • 〈女性〉平均年金月額:5万7582円

厚生年金(※国民年金月額を含む)

  • 〈全体〉平均年金月額:15万289円
  • 〈男性〉平均年金月額:16万9967円
  • 〈女性〉平均年金月額:11万1413円

現役時代の働き方・過ごし方による年金加入履歴の差が、データが示すように老後の年金額の男女差・個人差として反映されています。

監修者コメント

村岸 理美

年金生活者支援給付金は、金額こそ月数千円と小さく見えますが、対象になり得る方が請求を忘れているケースを実務でもよく見かけます。特に、所得が下がったことで新たに対象になった方には、こちらから案内が届くまで気づきにくい制度です。

給付額が保険料納付済期間に応じて按分される点も見落とされがちです。基準額(5620円)だけを見て「思ったより少ない」と感じた場合は、ご自身の納付記録を一度確認してみることをおすすめします。

5. 再雇用で収入が減り、毎月の赤字を貯蓄で埋めている。ファイナンシャルアドバイザー・横野会由子が整理する3つの順番

日々の相談現場では、「年金生活に入ってから、毎月の生活費が年金だけでは足りず、貯蓄を取り崩して埋め続けている」という声を数多く受けます。60代・70代を中心に、老後の家計運営に不安を抱える方は増えています。

5.1 再雇用後の家計をどう立て直すか。相談の場で多い「毎月の赤字」という悩み

定年退職や再雇用による収入の変化を経験された60代・70代の方からは、年金と収入だけでは毎月の生活費を十分にカバーできず、貯蓄を取り崩しながら生活しているといった、次のような声を耳にします。

60代の会社員(ご相談者)
定年後に再雇用となり、年収が半減してしまいました。住宅ローンや生活費を考えると、正直、毎月の家計はギリギリで、貯蓄を取り崩している状態です。ただ、これから資産をリスクにさらすのも怖くて、安定を重視した運用がしたいと思っています。

このように、収入が変化した後の家計を見直す際は、無理に資産を大きく動かすのではなく、リスクを抑えた運用で「今の生活を守りながら少しずつ安定させる」という視点が安心につながります。

5.2 ファイナンシャルアドバイザー・横野会由子が示した順番:まず見える化、次に値動き、最後に優先順位

横野 会由子
貯蓄が減っていってしまうのは不安ですが、それ以上に貯めたお金が運用により減ってしまっては困りますので、手段は慎重に決めていく必要がございます。
まずは毎月いくら減っているのかを見える化し、預貯金以外の運用はどのような値動きをするのかを確認しましょう。
使うタイミングによって適切な方法は変わりますので、この後解説するポイントを抑えておきましょう。

5.3 ポイント1:家計収支を可視化し、赤字の実態を数字で把握する

一つ目は、家計収支を可視化し、赤字の実態を把握することです。年金・再雇用後の収入と、生活費・住宅ローンなどの支出を数字で並べることで、どのくらいの金額を貯蓄から取り崩しているかが明確になり、対策の優先順位をつけやすくなります。

毎月いくら足りないのかが分かると、必要な対策の大きさも見えてきます。支出を見直すのか、資産の置き場所を変えるのか、あるいは働き方を調整するのか。打ち手を選ぶ前に、まず現在地を数字で押さえることが土台になります。

5.4 ポイント2:預貯金一辺倒にせず、値動きの小さい商品も組み合わせる

二つ目は、元本割れリスクを抑えた運用を組み合わせることです。すべてを預貯金で持つのではなく、債券のように値動きが比較的小さい商品を一部組み入れることで、必要なときに取り崩せる備えを持ちながら、預金だけに偏らない形をつくることができます。

ただし、値動きが小さいことと元本が守られることは同じではありません。債券は満期を待たずに売却すれば価格の変動によって元本を下回ることがあり、発行体の信用状況によっては予定どおり受け取れない可能性もあります。取り崩す時期の見込みと合わせて、条件を確認しておくことが前提になります。

5.5 ポイント3:退職金や保有資産の使い道に優先順位をつける

三つ目は、退職金や保有資産の使い道に優先順位をつけることです。まとまった資金を、元本の安定を重視する部分と、将来に向けて運用する部分に分けておくことで、住宅ローンの返済や急な出費にも対応しながら、資産を長持ちさせやすくなります。

先に役割を決めておくと、相場が動いたときや想定外の出費があったときにも、どこから充てるかで迷いにくくなります。

元本割れのリスクを伴う商品を選ぶ際は、家計に無理のない範囲で、リスクとリターンの関係を十分に理解した上で取り組むことが大切です。

なお、必要な生活費や取り崩しのペースはご家庭の状況によって大きく変わります。実際の判断にあたっては、加入中の商品の条件や手数料、換金時の扱いを確認したうえで、専門家に個別に相談することをおすすめします。

6. 老齢年金生活者支援給付金、請求手続きの流れ

老齢年金生活者支援給付金は、支給対象となったら自動的に年金に上乗せされるものではありません。公的年金本体と同様に「請求手続き」をおこなわないと、受け取ることができないお金です。

今回は、手続きフローを「これから65歳を迎え、老齢年金の受給がスタートする人」と「すでに老齢年金を受給している人」に分けて紹介しておきましょう。

6.1 これから65歳を迎え、老齢年金の受給がスタートする人

誕生日の3カ月前に、老齢基礎年金の請求書とともに給付金請求書が郵送されます。必要事項を記入し、老齢基礎年金の請求書とともに最寄りの年金事務所に提出します。

6.2 すでに老齢年金を受給している人

冒頭でも触れたように、すでに老齢年金を受給中の人が、所得の低下などにより新たに年金生活者支援給付金の対象となった場合、毎年9月の第1営業日から順次、年金生活者支援給付金請求書(はがき型)が届きます。

必要事項を記入し、郵便ポストに投函しましょう。

6.3 年金生活者支援給付金「要件満たせば、2年目以降は手続き不要で継続受給」

年金生活者支援給付金は、一度請求手続きをおこなえば「支給要件を満たす限り」2年目以降は手続き不要です。前年の所得に基づいて継続支給の判定がおこなわれ、その結果が毎年10月分(12月支給分)から1年間反映されます。

給付額が改定された際には「年金生活者支援給付金支給金額改定通知書」が、給付金の支給対象外となった場合には「年金生活者支援給付金不該当通知書」が郵送されます。

7. まとめ|請求しないと受け取れない給付金、まずはご自身の該当有無を確認

年金生活者支援給付金は、要件を満たしていても請求手続きをしなければ受け取れないお金です。基準額と実際の平均給付額に差があるのは、保険料納付済期間によって金額が按分される仕組みによるものです。

月々の金額は数千円と小さく見えても、10年単位で見れば決して小さくない金額になります。緑色の封筒が届いた際は見落とさず、必要事項を記入して手続きを済ませておきましょう。

参考資料

横野 会由子