「貯金の平均額は2059万円」という数字を見て、自分の家計と比べて落ち込んだ経験はないでしょうか。実はこの数字、多くの世帯の実感とはズレた「代表値」であることが、総務省の公的統計から読み取れます。
本記事では、総務省「家計調査報告(貯蓄・負債編)」の最新結果を一次資料から直接確認し、平均値と中央値がどのくらい違うのか、そしてなぜ2種類の中央値が公表されているのかを、編集部の試算も交えて整理します。
- 貯蓄現在高の平均値2059万円に対し、貯蓄保有世帯の中央値は1264万円と、800万円近い差があります。
- この平均値を下回る世帯は66.1%にのぼり、一部の世帯が平均を大きく押し上げていると考えられます。
- 中央値には「保有世帯のみ」と「0世帯を含む」の2種類があり、どちらを見ているかで受け取る印象が変わります。
1. 貯金の「平均値」と「中央値」、まずは最新の数字を確認する
貯金・貯蓄の実態を語るとき、最初に確認すべきは統計の定義です。総務省統計局が公表する最新の公的データから、基本となる数字を押さえておきましょう。
1.1 総務省「家計調査報告(貯蓄・負債編)」2025年平均の結果
総務省統計局の「家計調査報告〔貯蓄・負債編〕2025年(令和7年)平均結果」(2026年5月19日公表)によると、二人以上の世帯の貯蓄現在高(平均値)は2059万円でした。
前年に比べて75万円、3.8%の増加で、比較可能な2002年以降で最も高い水準です。7年連続の増加となっています。
「貯蓄現在高は2059万円で,前年に比べ実質3.8%の増加となった。」
出典:総務省統計局「家計調査報告〔貯蓄・負債編〕2025年(令和7年)平均結果の概要(二人以上の世帯)」(2026年5月19日公表)
1.2 貯蓄保有世帯の中央値は1264万円
同じ資料では、貯蓄現在高の中央値(保有世帯)も公表されています。2025年の値は1264万円で、前年の1189万円から増えました。
平均値2059万円と中央値1264万円の間には、795万円の差があります。この差の大きさこそが、平均値だけを見ていては見えてこない実態です。
2. 平均値を下回る世帯は66.1% ― 少数の世帯が全体を押し上げる構造を編集部で試算
「平均は一部の富裕層に引っ張られる」とよく言われますが、では実際にどの程度、誰が全体を押し上げているのでしょうか。公表値から編集部で試算してみます。
2.1 3分の2の世帯が平均を下回っている
総務省の資料には、貯蓄現在高が平均値(2059万円)を下回る世帯の割合が66.1%であると明記されています。約3分の2の世帯が、いわゆる「平均並み」に届いていないことになります。
「貯蓄現在高の分布をみると,平均値(2059万円)を下回る世帯が全体の66.1%を占めている。」
出典:総務省統計局「家計調査報告〔貯蓄・負債編〕2025年(令和7年)平均結果の概要(二人以上の世帯)」(2026年5月19日公表)
2.2 【総務省「家計調査」2025年平均で分かる4つの数字】
2025年平均で分かる4つの数字1/2
出所:総務省統計局「家計調査報告〔貯蓄・負債編〕2025年(令和7年)平均結果の概要(二人以上の世帯)」(2026年5月19日公表)などを基にLIMO編集部作成
まず基本となる代表値です。
- 貯蓄現在高(平均値、0世帯含む):2059万円(前年比75万円増・3.8%増)
- 貯蓄現在高(保有世帯の中央値):1264万円(前年1189万円から増加)
- 貯蓄現在高(0世帯を含む中央値):1167万円
分布から見えることです。
- 平均値を下回る世帯の割合:66.1%(約3分の2の世帯が該当)
2.3 編集部試算:上位の少数世帯が平均をどこまで押し上げているか
「66.1%が平均を下回る」という事実だけでは、押し上げの規模感がつかみにくいかもしれません。そこで、公表された数字を組み合わせて簡易的な試算をしてみます。
前提として、平均値を下回る66.1%の世帯の貯蓄現在高が、0世帯を含む中央値(1167万円)とおおむね同水準にあると仮定します。この仮定のもとで、残り33.9%の世帯が全体の平均(2059万円)まで引き上げるには、その世帯群の貯蓄現在高が平均でおよそ3798万円になっている必要がある、という計算になります。
これは総務省が公表した実測値ではなく、あくまで公表値2つ(平均値・下回る世帯割合)と中央値を組み合わせた編集部独自の簡易試算です。実際の分布はもっと複雑ですが、「上位の一部が全体の見え方を大きく変えている」という構造の大きさをつかむ目安として参考にしてください。
3. 【編集者の視点】
平均値と中央値の差を「なんとなく分かっている」つもりでも、実際に795万円という差額や、66.1%という下回る世帯の割合まで見ると、印象は大きく変わってくるはずです。
実務の現場でよく見かける誤解は、「平均並みに貯めていないと将来が危ない」という思い込みです。しかし平均値は、少数の高額保有世帯の影響を強く受ける代表値であり、多数派の実感を表す数字ではありません。
家計の状況を自分なりに把握したいときは、平均値だけで一喜一憂せず、同じ資料にある中央値や年齢階級別の数字も併せて確認することをおすすめします。総務省統計局のウェブサイトでは、家計調査の結果概要が無料で公開されています。
また、家計全体の見直しを検討する際は、独力で判断せず、自治体の消費生活センターや、必要に応じてファイナンシャル・プランナー等の専門家に相談する選択肢もあります。数字の意味を正しく理解したうえで、自分の家計に合った判断をすることが大切です。
4. なぜ中央値は2種類あるのか ― 「保有世帯のみ」と「0世帯を含む」の使い分け
総務省の資料には、貯蓄現在高の中央値が「保有世帯」と「0世帯を含む」の2つの形で載っています。なぜ2種類が必要なのか、その理由を整理します。
4.1 2025年は保有世帯1264万円・0世帯を含めると1167万円
2025年の値は、保有世帯の中央値が1264万円、0世帯を含めた中央値が1167万円でした。100万円ほどの差があります。
この差が生まれるのは、貯蓄が全くない、またはごく少額しかない世帯が一定数存在するためです。0世帯を含めて並べ直すと、中央付近の順位が下にずれ、中央値は下がります。
4.2 統計上の理由と、記事や資料を読むときの実務上の使い分け
統計上、「保有世帯のみ」の中央値は、実際に貯蓄をしている世帯の中での典型像を示すのに向いています。一方「0世帯を含む」中央値は、社会全体(保有・非保有を問わず)の中で自分がどの位置にいるかを見るのに向いていると考えられます。
実務上は、「同じくらい貯めている人と比べたい」場合は保有世帯の中央値を、「世の中全体で見た自分の位置を知りたい」場合は0世帯を含む中央値を参照する、という使い分けが妥当でしょう。
記事や資料で「中央値」という言葉が出てきたら、どちらの数字なのかを確認する習慣を持つと、数字に振らされにくくなります。
5. 総務省とJ-FLECで「中央値」の対象範囲が違う ― 2つの調査を混同しない
貯蓄・資産に関する統計は総務省の家計調査だけではありません。金融経済教育推進機構(J-FLEC)の世論調査も広く参照されていますが、両者の「中央値」は同じ土台の上にはありません。
5.1 J-FLEC「家計の金融行動に関する世論調査」との違い
J-FLEC「家計の金融行動に関する世論調査(2025年)」によると、二人以上世帯の金融資産保有額は平均値1940万円・中央値720万円でした。
総務省の貯蓄現在高(平均値2059万円・保有世帯の中央値1264万円)と比べると、平均値は近い水準ですが、中央値には500万円以上の差があります。
この調査における「金融資産」は預貯金・金銭信託・積立型保険商品・個人年金保険・債券・株式・投資信託・財形貯蓄等を指し、預貯金のうち日常的な出し入れに備えている部分は含まない。
出典:金融経済教育推進機構(J-FLEC)「家計の金融行動に関する世論調査(2025年)のポイント」(2025年12月18日公表)
5.2 【総務省とJ-FLEC、2つの調査の中央値を並べると】
二人以上世帯の場合です。
- 総務省・家計調査:平均値2059万円/中央値1264万円(保有世帯)
- J-FLEC世論調査:平均値1940万円/中央値720万円
単身世帯の場合です。
- J-FLEC世論調査:平均値919万円/中央値130万円
5.3 対象範囲が違うため、単純に数字だけを比較できない
この差が生じる主な理由は、集計対象や「資産」の定義が異なるためです。総務省の家計調査は世帯の貯蓄現在高(預貯金・生命保険の払込額・有価証券等)を対象とし、J-FLECの調査は運用・将来のために蓄えている金融資産(日常的な出し入れ用の預貯金は除く)を対象としています。
また、総務省の「家計調査(貯蓄・負債編)」は二人以上の世帯のみを対象とし、単身世帯の貯蓄現在高は同じ形式では公表されていません。単身世帯の実態を知りたい場合は、J-FLECの調査を参照する必要があります。
6. 【編集者の視点】
「貯蓄額の平均・中央値」という言葉を見かけたとき、まず確認したいのは、それがどの調査に基づく数字かということです。総務省とJ-FLEC、どちらも公的な位置づけの調査ですが、対象世帯や集計範囲が異なります。
実務でよくある落とし穴は、複数の調査結果を出典を示さずに並べて「貯蓄額の実態」として一括りに紹介してしまうケースです。読む側は同じ土台の数字だと誤解しやすくなります。
ご自身で数字を調べる際は、資料の中で「対象は二人以上の世帯か単身世帯か」「集計対象に生命保険や証券を含むか」といった前提条件を必ず確認する習慣を持つと、数字に振り回されにくくなります。
また、単身世帯の資産形成の実態を知りたい場合は、総務省の家計調査ではなく、J-FLECの世論調査(単身世帯調査)を確認するのが適切です。どの統計を見るべきか迷ったときは、各省庁・機関の統計担当窓口に確認する方法もあります。
7. 「最頻値」は公表されているのか ― 分からないことは分からないと言う
平均値・中央値と並んで、統計にはもう一つ「最頻値(最も回答が多い階級)」という代表値があります。この記事のテーマに関わる重要な観点なので、公表状況を確認しておきます。
7.1 今回確認した資料の範囲では、単一の数値として明示されていない
総務省「家計調査報告〔貯蓄・負債編〕2025年平均結果の概要」の本文を確認したところ、貯蓄現在高の階級別分布を示すグラフは掲載されているものの、「最頻値は〇〇万円である」と文章で明示した記述は見当たりませんでした。
階級区分(100万円未満から100万円ごとの区分、2000万円以上は2500万円・3000万円・4000万円以上の区分)に沿ったグラフから、どの階級の世帯が多いかをおおまかに読み取ることは可能です。しかし、グラフの目盛りから読み取れる範囲を超えて、具体的な最頻値の金額を断定することは避けるべきだと考えます。
7.2 「分からないこと」自体が実は重要な情報になる
最頻値が明確な一つの数字として公表されていないという事実は、それ自体が読者にとって意味のある情報です。平均値・中央値という2つの代表値だけでは、実際に「一番多くの世帯がどのあたりの金額に集まっているか」までは分かりません。
より詳しい階級別の世帯数・割合を確認したい場合は、e-Statで公開されている詳細結果表を個別に確認する必要があります。この記事では、公表資料の本文で確認できる範囲の情報にとどめています。
※本記事は、編集部が総務省統計局・金融経済教育推進機構(J-FLEC)が公表する公式の最新一次資料を直接確認の上、執筆・検証しています。
8. まとめ
- 総務省「家計調査」2025年平均で、貯蓄現在高の平均値は2059万円、保有世帯の中央値は1264万円、世帯を含む中央値は1167万円です。
- 平均値を下回る世帯は66.1%にのぼり、編集部試算では上位33.9%の世帯が平均を大きく押し上げていると考えられます。
- 中央値には「保有世帯のみ」と「0世帯を含む」の2種類があり、目的に応じて使い分けることが大切です。
- 総務省の家計調査とJ-FLECの世論調査では、集計対象や資産の定義が異なるため、中央値を単純比較できません。
「平均値」という一つの数字だけで自分の家計を判断すると、実態とズレた印象を持ちやすくなります。中央値や、対象範囲の異なる複数の統計を組み合わせて見ることで、より現実に近い位置づけがつかめます。
数字の意味を確認したうえで、自分の家計にとって必要な貯蓄額を考えたいときは、総務省統計局やJ-FLECの公式資料を参照するほか、自治体の相談窓口やファイナンシャル・プランナー等の専門家に相談する方法もあります。
9. よくある質問
9.1 Q. 貯金の平均値と中央値、どちらを見るべきですか。
A. どちらか一方だけで判断するのではなく、両方を確認することをおすすめします。平均値は少数の高額保有世帯の影響を受けやすく、中央値のほうが多数派の実感に近い数字になりやすいと考えられます。
9.2 Q. 貯蓄現在高の中央値が2種類あるのはなぜですか。
A. 総務省の資料では、実際に貯蓄を保有している世帯だけで計算した中央値と、貯蓄が全くない世帯も含めて計算した中央値の両方が公表されています。前者は保有世帯の中での典型像、後者は社会全体での位置づけを示す目的で使い分けられていると考えられます。
9.3 Q. 総務省とJ-FLECの調査、どちらの数字を使えばいいですか。
A. 対象世帯(二人以上か単身か)と、集計する資産の範囲が異なります。単身世帯の実態を知りたい場合はJ-FLECの調査を、二人以上世帯の貯蓄現在高(生命保険や証券を含む広い定義)を知りたい場合は総務省の家計調査を参照するのが適切です。
9.4 Q. 貯蓄額の「最頻値」はどこで確認できますか。
A. 今回確認した総務省の概要資料の本文では、最頻値を単一の数値として明示した記述は見当たりませんでした。より詳しい階級別データを確認したい場合は、e-Statで公開されている詳細結果表を参照する必要があります。
参考資料
- 総務省統計局「家計調査報告〔貯蓄・負債編〕2025年(令和7年)平均結果の概要(二人以上の世帯)」(2026年5月19日公表)
- 金融経済教育推進機構(J-FLEC)「家計の金融行動に関する世論調査(2025年)のポイント」(2025年12月18日公表)
LIMO編集部貯蓄解説班

