3. 定年を見据える方に多い「このままのバランスで良いのか」という不安。ファイナンシャルアドバイザー・横野会由子が伝えたいこと
定年後や定年を見据えた時期になると、これまで保有してきた投資信託や保険のバランスをどう調整すべきか迷うという方が多いです。長年続けてきた運用だからこそ、解約して別の資産に移すべきか、そのまま持ち続けるべきか判断が難しいという声をよくいただきます。
同じような不安は、実際のご相談の場でもよく聞かれます。
3.1 定年を見据える方に多いお悩み「インフレ対策として、まとまった資金を円預金で持つのではなく、物価上昇に負けない資産で運用したい」

こうした迷いをきっかけに、既存の資産の運用効率や手数料負担へ目を向け、少しずつ見直しへと踏み出していく方は少なくありません。定年後の資産寿命を延ばすためには、現状の資産配分がこれからのライフステージに合っているかを確認したい、と感じる方が多いようです。
3.2 【ファイナンシャルアドバイザー・横野会由子が回答】運用コスト・インフレ耐性・貯蓄効率・分散のバランスを整理する
3.3 ポイント1:長年の運用のコストとリターンを確認する
まず見直したいのは、長年保有している投資信託や運用サービスの実質的なコストとリターンです。「20年かけても現在の年率リターンでは、攻めの運用としては物足りない。手数料も二重にかかっているなら、見直した方が良いと感じた」という受け止めは、ファンドラップや分配型投資信託を長く保有してきた方に共通しやすいものです。過去の運用成績だけでなく、これから先に負担し続けるコストにも目を向けることが欠かせません。長年続けてきた運用であっても、現在のコストとリターンがこれからの目的に合っているかを、定期的に確認しておきましょう。
3.4 ポイント2:円建てと外貨建てのバランスを調整する
そのうえで、円建て資産と外貨建て資産のバランスを調整することも重要です。「円で持っているとインフレに負けるから、外貨の守りの商品も必要だと理解しました」という気づきは、物価上昇が続く環境下で資産の目減りを防ぐうえで大きな意味を持ちます。生活防衛費は円で確保しつつ、それ以外の資金についてはインフレへの耐性が期待できる資産へ一部を移していくことが、老後の購買力を維持する有効な選択肢になります。
3.5 ポイント3:貯蓄型の資産も金利環境に合わせて見直す
さらに、長年積み立ててきた貯蓄型の資産についても、現在の環境に合わせた見直しが求められます。財形貯蓄のように「円貯蓄とほぼ同じなので、そのまま円で置いておくのはもったいない。別の手段に変えたほうが将来的な増え幅は見込める」と判断できるケースは少なくありません。長年の習慣で続けてきた貯蓄であっても、金利環境の変化に合わせて役割を見直すことが、資産全体の効率を高めることにつながります。
3.6 ポイント4:複数の資産に分散し、市場の変動に振られない体制を作る
また、定年後の運用においては、市場の変動に一喜一憂しない体制づくりが欠かせません。「毎日市場を読みきれないから、ある程度ほったらかしでも耐えられる体制がいい」という声は、既存の資産を整理して新たな投資先を検討する段階で多く聞かれます。退職前後からの運用では、高いリターンを狙ってリスクを取りすぎるのではなく、複数の資産に分散して安定感を持たせることが、若い頃以上に大切になります。
既存の投資信託や保険をそのまま持ち続けるべきかと決めつける前に、運用コスト、インフレへの耐性、貯蓄の効率、分散のバランスを一つずつ整理してみることが、定年後の安心した資産管理の出発点になります。
3.7 【シミュレーション】平均月額15万289円は、20年後に実質いくらの価値になるのか
インフレ対策が話題になるのは、年金額そのものが減らなくても「買えるものの量」が減っていくためです。厚生年金の平均月額15万289円が名目上はそのまま据え置かれると仮定し、物価だけが上がった場合に実質的な価値がどう変わるかを試算してみます(改定や税・社会保険料は考慮しない、一定の前提を置いた単純な試算です)。
- 物価上昇率が年1.5%で続いた場合:20年後の実質価値は約11万1000円(現在との差は約3万9000円)
- 物価上昇率が年2.0%で続いた場合:20年後の実質価値は約10万1000円(現在との差は約4万9000円)
年2.0%のインフレが20年続くと、月15万289円の年金は、いまの感覚でいう10万円強の価値まで目減りする計算になります。実際には年金額も物価や賃金に応じて改定されますが、マクロ経済スライドによる調整が入るため、改定率が物価上昇率を下回る年が続く可能性があります。「額面が減らないこと」と「買えるものが減らないこと」は別問題であり、ここが円預金だけで備えることの難しさにつながります。
4. まとめ
厚生年金(国民年金を含む)の平均年金月額は男女全体で15万289円ですが、その平均をクリアしている人は49.8%と半数に届きません。男女別に見れば、男性68.8%に対し女性は12.3%と、5倍以上の開きがあります。
平均額は「よくある金額」ではなく、あくまで分布の中心を示すひとつの指標にすぎません。まずは「ねんきんネット」や「ねんきん定期便」でご自身と配偶者の見込額を確認し、世帯としていくら受け取れるのかを把握することから始めてみてください。そのうえで足りない部分をどう補うかを考えれば、老後の資金計画はぐっと具体的になります。
参考資料
- 日本年金機構「公的年金制度の種類と加入する制度」
- 日本年金機構「厚生年金保険の保険料」
- 日本年金機構「国民年金保険料」
- 厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- 厚生労働省「令和8年度の年金額改定についてお知らせします」
- LIMO「【国民年金+厚生年金】月15万円(年180万円)以上もらう人は何%?平均受給額を一覧で確認!私的年金の見直しで押さえておきたいポイント」
- LIMO「【2026年最新・年金早見表】厚生年金・国民年金はいくらもらえる?平均受給額一覧と手取りのリアル!社会保険料・税金が引かれる「天引き」まで徹底解説」
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横野 会由子
