5. 【試算】夫婦2人でみると?「片働き」と「共働き」で20年後に生まれる差

受給額の分布は個人単位のデータですが、実際の家計は世帯単位で回ります。そこで、先ほどの平均額を組み合わせて、夫婦2人世帯の年金収入を試算しました。いずれも令和6年度のデータをそろえて使用し、厚生年金の金額には国民年金部分が含まれます。

5.1 夫婦2人世帯の年金月額(平均値をもとにした試算)

  • ケース1:夫が会社員、妻が国民年金のみ
    16万9967円+5万7582円=月22万7549円
  • ケース2:夫婦ともに会社員
    16万9967円+11万1413円=月28万1380円

その差は月5万3831円。年間では64万5972円、65歳から85歳までの20年間では約1292万円に達します。個人単位でみれば「月10万円未満か、20万円以上か」という差ですが、世帯単位では配偶者が2階部分を持っているかどうかが同じくらい大きく効いてくるということです。

この試算は、あくまで公表されている平均値を機械的に組み合わせたものです。実際の年金額は加入期間と報酬で一人ひとり異なり、加給年金や振替加算も考慮していません。それでも、世帯として老後の収入をどう積み上げるかを考える出発点にはなるはずです。

長井 祐人

20年で約1292万円という数字は、多くの方にとって「今から準備するには大きすぎる」と感じられるかもしれません。ただ、裏を返せば、厚生年金に加入して働く期間を延ばすことや、配偶者の働き方を見直すことが、それだけの効果を持つということでもあります。年金額を動かす手段は投資だけではありません。

私自身、投資で損失を出した経験があります。そのときに痛感したのは、金額の大小よりも「何を根拠に判断したか」が後から効いてくるということでした。老後資金も同じで、平均額や他人の受給額に反応して慌てて動くより、自分の加入記録と受給見込額という根拠を先に固めるほうが、結果的に遠回りになりません。

分布の上のほうがどうなっているかは、「厚生年金を「月30万円以上」受け取っている人の割合」でも詳しく取り上げられています。上下の両端を知っておくと、自分がどのあたりに位置しているのかがつかみやすくなるはずです。

6. まとめにかえて

厚生年金(国民年金を含む)の平均年金月額は15万289円ですが、1万円刻みの分布をみると、月10万円未満が19.0%、月20万円以上が18.8%と、下側の層のほうがわずかに多いことがわかりました。国民年金のみの受給者まで含めれば、この傾向はさらに強まると考えられます。

平均額は、あくまで全体をならした一つの目安にすぎません。自分がどのあたりに位置しているのかは、ねんきん定期便やねんきんネットで受給見込額を確認すればすぐに把握できます。

10月には年金の支払いがあり、通知書が届く方もいます。金額を目にするこの時期を、老後の家計を点検するきっかけにしてみてはいかがでしょうか。

参考資料

長井 祐人