公的年金は偶数月の15日に支払われ、次回の支払日は10月15日です。それに先立つ10月上旬には、支給額が変わった人などに向けて日本年金機構から通知書が発送されます。手元に届いた金額を見て「思っていたより少ない」と感じる方は少なくありません。
厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、厚生年金(国民年金部分を含む)の平均年金月額は15万289円です。ただし「平均15万円台」という言葉の内側では、受給額が1万円未満から30万円超まで大きく散らばっています。
本記事では、厚生年金の受給額を1万円刻みでみたときに「月10万円未満」と「月20万円以上」のどちらが多いのかを確認したうえで、その差を埋める手立てを試算とあわせて考えます。
なお、公的年金の仕組みや平均受給額に関する詳しい解説は、下記の記事より一部を引用・参照しています。本文中の引用部分は引用ブロックで示しています。
- 厚生年金(国民年金を含む)の平均年金月額は15万289円。ただし1万円刻みでみると、受給額は1万円未満から30万円超まで広く散らばっている
- 「月10万円未満」は19.0%、「月20万円以上」は18.8%。人数が多いのは、実は下の層だった
- 月9万円の人が10万円台に乗せるには繰下げ16カ月。夫婦2人でみると、20年で約1292万円の差がつくケースも
1. 公的年金は「1階と2階」でできている
受給額の分布を読む前に、そもそも年金額に個人差が生まれる理由を押さえておきましょう。仕組みの部分は、LIMOの記事「【2026年最新・年金早見表】厚生年金・国民年金はいくらもらえる?」から要点を引用して確認します。
公的年金制度は、しばしば「2階建て構造」に例えられます。これは、日本の年金制度が「1階」の国民年金(基礎年金)と、「2階」の厚生年金という2つの制度で構成されているためです。
出所:【2026年最新・年金早見表】厚生年金・国民年金はいくらもらえる?平均受給額一覧と手取りのリアル!社会保険料・税金が引かれる「天引き」まで徹底解説
1.1 【1階】国民年金(基礎年金)は全員共通
1階部分は、働き方にかかわらず全員が同じ土台に乗る仕組みです。加入対象・保険料・受給額は、それぞれ次のように整理されています。
- 加入対象:原則として日本国内に居住する20歳以上60歳未満のすべての人
- 保険料:国民年金保険料は所得にかかわらず一律ですが、年度ごとに見直されます(2026年度は月額1万7920円)
- 受給額:保険料を40年間(480カ月)すべて納付すると、満額を受け取ることができます(2026年度は月額7万608円)
出所:【2026年最新・年金早見表】厚生年金・国民年金はいくらもらえる?平均受給額一覧と手取りのリアル!社会保険料・税金が引かれる「天引き」まで徹底解説
保険料が一律ということは、納めた月数がそのまま受給額に反映されるということでもあります。未納や免除の期間があれば、その分だけ満額から目減りします。
1.2 【2階】厚生年金は報酬と加入期間で変わる
2階部分は、会社員や公務員が国民年金に上乗せする形で加入します。こちらは1階と違い、収入によって保険料も受給額も変わります。
- 加入対象:会社員や公務員のほか、パートタイマーなどで特定適用事業所(※1)に勤務し、一定の要件を満たす人が国民年金に上乗せして加入
- 保険料:収入に応じて厚生年金保険料が変動します。ただし、保険料計算の基となる収入には上限が設けられています(※2)
- 受給額:加入していた期間や納付した保険料額によって個人差が生じます
出所:【2026年最新・年金早見表】厚生年金・国民年金はいくらもらえる?平均受給額一覧と手取りのリアル!社会保険料・税金が引かれる「天引き」まで徹底解説
※1の特定適用事業所とは、厚生年金保険の被保険者数が51人以上の企業などを指します。週の所定労働時間などの要件を満たすパートタイマーも、この事業所であれば厚生年金の加入対象になります。
※2の上限とは、保険料の計算に使う「標準報酬月額」の上限のことです。日本年金機構によると標準報酬月額は第1級の8万8000円から第32級の65万円まで区分されており、保険料率18.300%を会社と本人で折半して負担します。つまり、報酬が青天井に高くても、年金額に反映される部分には天井があるということです。
2. 厚生年金と国民年金、平均月額はどれだけ違うのか
それでは実際の受給額をみていきます。平均年金月額についても、LIMOの記事「【2026年最新・年金早見表】厚生年金・国民年金はいくらもらえる?」から要点を引用します。いずれも厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」が出所です。
2.1 厚生年金の平均年金月額(国民年金の金額を含む)
- 〈全体〉平均年金月額:15万289円
- 〈男性〉平均年金月額:16万9967円
- 〈女性〉平均年金月額:11万1413円
出所:【2026年最新・年金早見表】厚生年金・国民年金はいくらもらえる?平均受給額一覧と手取りのリアル!社会保険料・税金が引かれる「天引き」まで徹底解説
2.2 国民年金の平均年金月額
- 〈全体〉平均年金月額:5万9310円
- 〈男性〉平均年金月額:6万1595円
- 〈女性〉平均年金月額:5万7582円
出所:【2026年最新・年金早見表】厚生年金・国民年金はいくらもらえる?平均受給額一覧と手取りのリアル!社会保険料・税金が引かれる「天引き」まで徹底解説
男女差の大きさもさることながら、国民年金の水準そのものに注目してください。ここでの平均額は令和6年度のデータであり、当時の老齢基礎年金の満額は月6万8000円(昭和31年4月2日以後生まれの方)でした。全体平均の5万9310円は、その約87%にとどまります。
国民年金だけで月10万円以上を受け取ることは、制度上そもそも想定されていません。2階部分をどれだけ積み上げられたかが、老後の収入水準を大きく左右することになります。
3. 「月10万円未満」と「月20万円以上」、実は多いのはどちらか
厚生年金の受給額は、加入期間の長さと、その間の報酬によって大きな個人差が生まれます。ここからは厚生年金(国民年金部分を含む)の年金月額の分布をみていきましょう。
3.1 【厚生年金】1万円刻みでみた受給権者数
- ~1万円:4万3399人
- 1万円以上~2万円未満:1万4137人
- 2万円以上~3万円未満:3万5397人
- 3万円以上~4万円未満:6万8210人
- 4万円以上~5万円未満:7万6692人
- 5万円以上~6万円未満:10万8447人
- 6万円以上~7万円未満:31万5106人
- 7万円以上~8万円未満:57万8950人
- 8万円以上~9万円未満:80万2179人
- 9万円以上~10万円未満:101万1457人
- 10万円以上~11万円未満:111万2828人
- 11万円以上~12万円未満:107万1485人
- 12万円以上~13万円未満:97万9155人
- 13万円以上~14万円未満:92万3506人
- 14万円以上~15万円未満:92万9264人
- 15万円以上~16万円未満:96万5035人
- 16万円以上~17万円未満:100万1322人
- 17万円以上~18万円未満:103万1951人
- 18万円以上~19万円未満:102万6888人
- 19万円以上~20万円未満:96万2615人
- 20万円以上~21万円未満:85万3591人
- 21万円以上~22万円未満:70万4633人
- 22万円以上~23万円未満:52万3958人
- 23万円以上~24万円未満:35万4人
- 24万円以上~25万円未満:23万211人
- 25万円以上~26万円未満:15万796人
- 26万円以上~27万円未満:9万4667人
- 27万円以上~28万円未満:5万5083人
- 28万円以上~29万円未満:3万289人
- 29万円以上~30万円未満:1万5158人
- 30万円以上~:1万9283人
出所:【2026年最新・年金早見表】厚生年金・国民年金はいくらもらえる?平均受給額一覧と手取りのリアル!社会保険料・税金が引かれる「天引き」まで徹底解説
上記の受給権者数(男女全体)をもとに割合を算出すると、次のようになります。
- 月額10万円未満:19.0%
- 月額20万円以上:18.8%
高額受給者にあたる「月20万円以上」の人よりも、「月10万円未満」の人のほうがわずかに多いという結果です。平均が15万円台と聞くと分厚い中間層を思い浮かべがちですが、実際には下側にも同じくらいの厚みがあります。
公的年金だけで老後を暮らす場合、現役時代と比べて収入は大幅に少なくなるのが一般的です。年金生活が始まってから慌てることのないよう、資金計画は早めに立てておきたいところです。
【参考データ】厚生年金(男女全体)の受給額別の割合
- 10万円未満の割合:19.0%
- 10万円以上の割合:81.0%
- 15万円以上の割合:49.8%
- 20万円以上の割合:18.8%
- 20万円未満の割合:81.2%
- 30万円以上の割合:0.12%
ここで紹介した割合は、厚生年金(国民年金を含む)を受給している人に限ったデータです。国民年金のみを受け取っている人まで含めて全体で考えれば、「月10万円未満」の割合はさらに高まり、「月20万円以上」の割合はさらに下がることが見込まれます。
4. 【試算】月10万円に届かない年金を、繰下げで10万円台に乗せるには
老齢年金は、受給開始を65歳より後ろにずらす「繰下げ受給」を選ぶと、繰り下げた月数に応じて年金額が増えます。日本年金機構によると増額率は1カ月あたり0.7%で、最大で75歳まで(120カ月)繰り下げると84%の増額です。申し出ができるのは66歳に達した以降となります。
この仕組みを使って、厚生年金が月10万円に届かない人が「月10万円台」に乗せるには何カ月の繰下げが必要かを試算しました。増額後の金額は「年金月額×(1+0.7%×繰下げ月数)」で計算し、10円未満は四捨五入しています。
4.1 65歳時点の年金月額別・「月10万円台」に届く受給開始年齢
- 月9万円の人:16カ月の繰下げで11.2%増額 → 約10万80円(受給開始は66歳4カ月)
- 月8万円の人:36カ月の繰下げで25.2%増額 → 約10万160円(受給開始は68歳0カ月)
- 月7万円の人:62カ月の繰下げで43.4%増額 → 約10万380円(受給開始は70歳2カ月)
9万円台の人であれば1年4カ月ほど待つだけで大台に乗る一方、7万円台となると5年以上の待機が必要になります。同じ「10万円未満」でも、打ち手の現実味はかなり違うということです。
ただし、この試算はあくまで額面の話です。繰下げの待機期間中は年金を1円も受け取れませんし、増えた分だけ税金や社会保険料の負担も増えるため、手取りが増額率どおりに伸びるわけではありません。配偶者がいる場合、待機中は加給年金や振替加算を受け取れず、これらは繰下げによる増額の対象にもなりません。「増える」という一点だけで判断せず、貯蓄や就労収入と合わせて考える必要があります。


