6. ネット銀行やスマホ決済などのデジタル資産も相続財産
紙の通帳を発行しないネット銀行や、PayPay、楽天ペイなどのスマホ決済を使う人が増えています。仮想通貨(暗号資産)も、相続時に見つけにくい資産の一つです。
こうしたデジタル上の資産も、見落とさないよう注意が必要です。
- ネット銀行・ネット証券:郵便物が届かないケースもあり、家族や金融機関が状況を把握しにくいため、放置されることがあります。
- スマホ決済:本人のスマートフォンがロックされている場合、残高を確認すること自体が難しくなることがあります。
これらも相続財産に含まれます。家族が無断でログインして操作すると利用規約に違反する可能性があるため、各社のカスタマーサポートへ名義人が亡くなったことを伝え、正式な承継手続きを進めましょう。
7. 貸金庫の中身を先に持ち出すのは避ける
故人が銀行の貸金庫を契約していた場合、銀行に死亡を伝えると貸金庫も利用できなくなります。
そのため「使えなくなる前に中身を出しておこう」と考える方もいます。
ただし、銀行には貸金庫への入室記録が残ります。後になって、ほかの相続人から「貸金庫にあったはずの現金や貴金属がなくなっている」と指摘された場合、トラブルにつながる可能性があります。
8. 【独自試算】口座が止まっている間、家族が立て替える固定費はいくらか
凍結で影響が出るのは、引き出せなくなることだけではありません。口座振替が止まるため、その分を家族が立て替えることになります。前提は次のとおりです。
- 故人名義の口座で引き落としていた電気・ガス・水道・通信費・家賃などの合計を、月額で置く
- 凍結から支払先の名義変更が終わるまでの期間を2カ月・3カ月の2通りで置く
- 税金や社会保険料、医療費は含めない
8.1 月額別に見た立て替え額の目安
- 月3万円(光熱費・通信費が中心):2カ月で6万円/3カ月で9万円
- 月8万円(生活費の引き落としを含む):2カ月で16万円/3カ月で24万円
- 月12万円(家賃を含む):2カ月で24万円/3カ月で36万円
家賃まで故人名義の口座から引き落としていた場合、3カ月で36万円ほどを家族が立て替える計算になります。葬儀費用とは別に、この金額が必要になるということです。
立て替えを避けるには、支払先の名義変更を早めに進めるのが確実です。期間はあくまで目安で、書類の揃い方や金融機関の手続きによって変わります。
9. 死亡後の預金は動かさず、正式な相続手続きに沿って進める
この記事では、名義人が亡くなった後に銀行口座が凍結される時期、凍結前に預金を引き出すリスク、遺産分割前の払戻し制度などを整理しました。
銀行口座は、役所に死亡届を出しただけで自動的に凍結されるわけではなく、銀行が名義人の死亡を把握した段階で取引が停止されます。
ただし、凍結前だからといって故人の預金を自由に引き出してよいわけではありません。相続放棄への影響やほかの相続人とのトラブルにつながる可能性があります。
急ぎの資金が必要な場合は、遺産分割前の払戻し制度という正面からの選択肢があります。故人の財産を確認したうえで、自己判断で動かさず、正式な手続きに沿って対応しましょう。
要点を先に申し上げると、亡くなった後にやるべきことは「動かさない」「調べる」「制度を使う」の順番です。順番を入れ替えると、後から取り返しがつかなくなる場面が出てきます。
銀行の窓口で個人のお客様を担当していた経験から言うと、慌てて引き出してしまう背景にあるのは、たいてい情報不足です。凍結されると何も引き出せなくなる、と思い込んで先回りしてしまう。実際には払戻し制度がありますし、上限の範囲であれば正規の手続きで受け取れます。
調べる段階では、通帳のある口座だけを見て終わらせないことです。ネット銀行やスマホ決済、貸金庫まで含めて洗い出しておくと、後から出てきて分割協議をやり直す事態を避けられます。
大枠だけ理解いただければ十分です。判断に迷う点、とくに相続放棄を検討している場合や借金の有無がはっきりしない場合は、預金に手をつける前に、取引先の金融機関や弁護士・司法書士などの専門家にご確認ください。
