5. 最終利益へのこだわりと「守るべき」企業哲学
こうした大胆な事業再編を繰り返す三菱電機の根底には、「最終利益にこだわる」という強い経営哲学があります。
泉田氏は同社の特徴として「長い期間において赤字が少ない会社」であることを挙げます。2026年3月期の通期決算で親会社株主に帰属する当期純利益が4,077億円(前期比25.8%増)となり、さらに次期(2027年3月期)の会社予想でも純利益4,750億円(同16.5%増)と、連続して2桁の増益を見込んでいます。
過去には、こうした数字への厳しいプレッシャーが現場への過度な負担となり、データの改ざんなどのガバナンス問題を引き起こした側面もありました。
しかし、膿を出し切り、より厳格な管理体制を敷いた現在、資本市場との対話を重視し、着実に利益を積み上げる姿勢は機関投資家から高く評価されています。
では、三菱電機が事業を断捨離し、外部と提携してまで、究極的に守りたいものは何なのでしょうか。泉田氏は「同社の企業哲学の核心を突く見解」を語りました。
「この会社がやっぱり最後に守るべきところはインフラ事業だと思っていて、社会インフラ、エネルギー、防衛宇宙、ここは多分絶対的に守りたい、この国のために守りたいっていうところだと思うんですけども、そのために生存確率を上げるためには自分たちが何をしなきゃいけないのかっていうのを常に考えているところかなと思います」
エアコンやFA機器で世界で稼ぎ、自動車部品や半導体は他社と連合を組んで効率化する。
すべては、国家の根幹を支える「インフラ・エネルギー・防衛宇宙」という絶対に手放せない中核事業を守り抜き、企業として生き残るための合理的な戦略なのです。
一見すると複雑で分かりにくい三菱電機の事業構造ですが、その裏には「3番手」として磨き上げられた、極めて強靭でしなやかな生存戦略が隠されていました。
参考資料
- 三菱電機株式会社「2026年3月期 決算短信」(2026年4月28日)
- 三菱電機株式会社「2026年3月期 決算説明会資料」(2026年4月28日)
- 三菱電機株式会社「パワーデバイス事業の経営統合に関する基本合意書の締結について」(2026年3月27日)
- 三菱電機株式会社「鴻海精密工業との自動車機器事業の共同運営を通じた戦略的提携の検討開始に合意」(2026年4月24日)
著者
金融・経済YouTubeチャンネル「イズミダイズム」
「イズミダイズム」は、株式会社モニクルリサーチが運営する金融・経済YouTubeチャンネルです。フィデリティ投信や日本生命でポートフォリオマネージャーや証券アナリストとしての勤務経験のある元機関投資家の泉田良輔が、プロの視点で金融や経済に関する様々なニュースの解説や、資産形成に役立つトピックをお届けします。新NISAの開始やインフレを背景に、個人の資産運用への関心が高まる中、機関投資家と個人投資家の「視点の違い」や、経済ニュースの裏側にある「構造」をロジカルに解説します。(最新更新日:2026年1月30日)
監修者
株式会社モニクルリサーチ
代表取締役/日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)
株式会社モニクルリサーチ代表取締役。その他に株式会社モニクル取締役COO、株式会社モニクルフィナンシャル取締役COOも務める。東京科学大学大学院非常勤講師。日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)。慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科修了(同研究科最優秀賞受賞)
1. 経歴
2013年に株式会社ナビゲータープラットフォーム(現:株式会社モニクルリサーチ)を原田慎司(現同社取締役)らとともに共同創業。2013年に個人投資家向け金融経済メディア「Longine(ロンジン)」を立ち上げ、編集長に就任。Longineの立ち上げの経緯はBloombergにおいて「体力勝負アナリスト辞めます、元外資マン個人に長期投資指南」として掲載され大きな反響を呼ぶ。投資情報のサブスクモデルを確立する。その後、株初心者向けネットメディア「株1」、2015年にはくらしとお金の経済メディア「LIMO」の前身となる「投信1」を立ち上げる。
それ以前は、日本生命・国際投資部で外国株式ファンドマネージャー、フィデリティ投信・調査部や運用部にて10年に渡ってインターネット、電機(半導体・民生・産業エレクトロニクス)、機械(ロボットやセンサー企業中心)といったテクノロジーセクターの証券アナリストや中小型株ファンドのアシスタント・ポートフォリオ・マネージャー(最年少で就任)として従事。
2. 専門・研究領域
慶応義塾大学商学部卒業。国際金融及びコーポレート・ガバナンスを専攻。アジア通貨危機、昭和金融恐慌などの金融パニックのメカニズムを金融政策や金融機関への規制の観点から研究。それらの内容は「昭和金融恐慌からの教訓 平成恐慌になにをどう生かすべきか」(三田商学研究学生論文集)として発表。
3. 著書
・『機関投資家だけが知っている「予想」のいらない株式投資』(ダイヤモンド社)
・『テクノロジーがすべてを塗り変える産業地図』(クロスメディア・パブリッシング)
・『銀行はこれからどうなるのか』(クロスメディア・パブリッシング)
・『Google vs トヨタ 「自動運転車」は始まりにすぎない』(KADOKAWA)
・『日本の電機産業 何が勝敗を分けるのか』(日本経済新聞出版社)
4. 寄稿や講演他
「日経BizGate」での連載「泉田良輔の新・産業鳥瞰図」や「現代ビジネス」、「東洋経済オンライン」、「プレジデント」などへの寄稿や対談も多数。対談記事例としては「【未来予想】ブロックチェーン革命が、「半沢直樹」の世界に終わりを告げる」や「【未来予想】アマゾンとビットコインが、次世代の「銀行」になる理由」(いずれもNewsPicks)、「米独に遅れる日本の自動運転、自動車も電機の二の舞に?」(週刊ダイヤモンド)。海外ジャーナリストからインタビューされることも多く、Financial TimesやThe Economist、Bloombergにおいて自動車や金融業界についての国内外産業動向コメントも発信している。
講演会や動画での情報発信も盛んに行っており、NewsPicksのTHE UPDATE、日経ビジネススクール、慶應丸の内キャンパス、慶應義塾SDM、アカデミーヒルズなどでも講義を行う。またNewsPicksのNewSchoolではプロジェクトリーダーとして「本当に初心者のための資産運用」を開催。
最終更新日:2026年2月21日