3. 鴻海との自動車事業JVに見る「絶妙なポジション」
事業ポートフォリオの見直しを機敏に行う三菱電機の姿勢が如実に表れたのが、自動車機器事業の構造改革です。
同社は2026年4月24日、台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業との間で、自動車機器事業を担う「三菱電機モビリティ」への50%出資受け入れを視野に入れた、戦略的提携の検討を開始したと発表しました。
事実上のジョイントベンチャー(合弁会社)化です。
この動きに対して「自動車部門を売り渡すのか」というネガティブな見方もある中、泉田氏の評価は異なります。現在、自動車業界はガソリン車からEV(電気自動車)へのシフトが進み、さらに自動運転やSDV(ソフトウェアによって機能が定義される車)の開発競争が激化しています。
これら最先端の領域には巨額の研究開発費が必要です。泉田氏は、三菱電機が「自社の資本だけでは難しい」と冷静に判断し、豊富な資金力と強力な電子機器の組み立て能力(EMS)を持つ鴻海をパートナーに選んだと分析します。
さらに、この提携が実現した背景には、三菱電機ならではの「絶妙なポジション」があったと泉田氏は指摘します。
自動車業界では完成車メーカーに直接部品を納める一次サプライヤーを「Tier1(ティア・ワン)」と呼びますが、Tier1は特定の系列に深く組み込まれているケースも少なくありません。
「これがトヨタ系とかホンダ系の、日本の中でしっかり過去Tier1と言われるカーメーカーとがっつりやってきた会社だと、いきなりポンと入っていけなかったと思うんで、三菱電機っていうポジションだからできたのかもしれない」
特定のカーメーカーの強い系列に属さない独立系の部品メーカーだったからこそ、海外の巨大企業である鴻海と柔軟に手を組むことができたのです。
利益率が低下していた課題事業を切り離し、成長領域に外部資本を入れて生き残りを図る、極めて合理的な構造改革だと言えます。
【動画で解説】三菱電機はなぜ強い?3番手の生き残り戦略と事業再編を元機関投資家が解説
著者
金融・経済YouTubeチャンネル「イズミダイズム」
「イズミダイズム」は、株式会社モニクルリサーチが運営する金融・経済YouTubeチャンネルです。フィデリティ投信や日本生命でポートフォリオマネージャーや証券アナリストとしての勤務経験のある元機関投資家の泉田良輔が、プロの視点で金融や経済に関する様々なニュースの解説や、資産形成に役立つトピックをお届けします。新NISAの開始やインフレを背景に、個人の資産運用への関心が高まる中、機関投資家と個人投資家の「視点の違い」や、経済ニュースの裏側にある「構造」をロジカルに解説します。(最新更新日:2026年1月30日)
監修者
株式会社モニクルリサーチ
代表取締役/日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)
株式会社モニクルリサーチ代表取締役。その他に株式会社モニクル取締役COO、株式会社モニクルフィナンシャル取締役COOも務める。LIMO&ファイナンス編集長。東京科学大学大学院非常勤講師。日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)。慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科修了(同研究科最優秀賞受賞)
1. 経歴
2013年に株式会社ナビゲータープラットフォーム(現:株式会社モニクルリサーチ)を原田慎司(現同社取締役)らとともに共同創業。2013年に個人投資家向け金融経済メディア「Longine(ロンジン)」を立ち上げ、編集長に就任。Longineの立ち上げの経緯はBloombergにおいて「体力勝負アナリスト辞めます、元外資マン個人に長期投資指南」として掲載され大きな反響を呼ぶ。投資情報のサブスクモデルを確立する。その後、株初心者向けネットメディア「株1」、2015年にはくらしとお金の経済メディア「LIMO」の前身となる「投信1」を立ち上げる。2026年6月に専門家と実務家が情報発信をする金融経済ニュースサイト「LIMO&ファイナンス」を立ち上げ編集長に就任。
それ以前は、日本生命・国際投資部で外国株式ファンドマネージャー、フィデリティ投信・調査部や運用部にて10年に渡ってインターネット、電機(半導体・民生・産業エレクトロニクス)、機械(ロボットやセンサー企業中心)といったテクノロジーセクターの証券アナリストや中小型株ファンドのアシスタント・ポートフォリオ・マネージャー(最年少で就任)として従事。
2. 専門・研究領域
慶応義塾大学商学部卒業。国際金融及びコーポレート・ガバナンスを専攻。アジア通貨危機、昭和金融恐慌などの金融パニックのメカニズムを金融政策や金融機関への規制の観点から研究。それらの内容は「昭和金融恐慌からの教訓 平成恐慌になにをどう生かすべきか」(三田商学研究学生論文集)として発表。
3. 著書
・『機関投資家だけが知っている「予想」のいらない株式投資』(ダイヤモンド社)
・『テクノロジーがすべてを塗り変える産業地図』(クロスメディア・パブリッシング)
・『銀行はこれからどうなるのか』(クロスメディア・パブリッシング)
・『Google vs トヨタ 「自動運転車」は始まりにすぎない』(KADOKAWA)
・『日本の電機産業 何が勝敗を分けるのか』(日本経済新聞出版社)
4. 寄稿や講演他
「日経BizGate」での連載「泉田良輔の新・産業鳥瞰図」や「現代ビジネス」、「東洋経済オンライン」、「プレジデント」などへの寄稿や対談も多数。対談記事例としては「【未来予想】ブロックチェーン革命が、「半沢直樹」の世界に終わりを告げる」や「【未来予想】アマゾンとビットコインが、次世代の「銀行」になる理由」(いずれもNewsPicks)、「米独に遅れる日本の自動運転、自動車も電機の二の舞に?」(週刊ダイヤモンド)。海外ジャーナリストからインタビューされることも多く、Financial TimesやThe Economist、Bloombergにおいて自動車や金融業界についての国内外産業動向コメントも発信している。
講演会や動画での情報発信も盛んに行っており、NewsPicksのTHE UPDATE、日経ビジネススクール、慶應丸の内キャンパス、慶應義塾SDM、アカデミーヒルズなどでも講義を行う。またNewsPicksのNewSchoolではプロジェクトリーダーとして「本当に初心者のための資産運用」を開催。
最終更新日:2026年6月26日