「バザールでござーる」や「LAVIE」など、かつてパソコンメーカーとして一世を風靡した日本電気(NEC)。現在でも多くの人がそのイメージを抱いていますが、実態は売上高3.5兆円超を誇る巨大なB2B(企業間取引)企業へと変貌を遂げています。
一体なぜ、消費者向け製品から身を引いた同社が、直近の決算で利益が4割も増加するほどの驚異的な好業績を叩き出しているのでしょうか。
この知られざる事業構造と利益急増の秘密について、元機関投資家の泉田良輔氏がNECの最新決算を読み解き、業績好調の本当の理由を解説します。
この記事のポイント
- NECの利益急増の背景には、不採算事業の整理とAI事業の拡大による大規模な「オペレーション改善」がある
- 最新AIを企業に届ける「代理店モデル」により、従来のシステム開発から継続課金型のビジネスへの転換を図っている
- 利益成長の次なる主役は「社会インフラ事業」であり、特に世界シェア2割を握る海底ケーブル事業が重要性を増している
- 防衛や経済安全保障といった「国策」と事業内容が合致しており、外部環境の追い風を強く受けている
1. 「パソコンのNEC」は昔の話? 利益4割増の原動力とは
NECといえば、長らく日本のパソコン市場を牽引してきた存在です。インタビュワーが「一般市民からするとパソコンのイメージが強い」と率直な疑問を投げかけると、泉田氏はかつて自身が愛用していた「PC-98」の思い出を振り返りつつ、現在のNECの姿は大きく異なると指摘します。
「一般の人はto Cの製品というとパソコンになっちゃうんだけど、ビジネス全体を見た時にもともとそんなにパソコンも大きくなくて。どっちかというとSIerであるとか、携帯に使う基地局の設備を作って設置しているというのもこの会社のすごい大事な仕事だったから、to B(法人向け)が強い会社だね」
泉田氏が語る通り、現在のNECは企業のシステム構築を請け負うSIer(システムインテグレーター)事業や、通信インフラを支える事業が主力となっています。その変貌ぶりは、最新の決算数値にも如実に表れています。
2026年3月期(2025年度)の通期実績を見ると、売上収益は3兆5,827億円(前期比4.7%増)と堅調な伸びを示しました。しかし、特筆すべきは利益の急増ぶりです。
GAAP(会計基準)ベースの営業利益は3,599億円で前期比40.3%増、親会社所有者帰属当期利益に至っては2,702億円と、前期比54.3%増という驚異的な数値を叩き出しています。
売上が約5%の増加に留まる中で、なぜ利益がこれほどまでに激増したのでしょうか。
泉田氏は、企業の本業の儲けを示す「Non-GAAP営業利益(一時的な要因を除いた指標)」の増減要因を滝のように表した「ウォーターフォールチャート」に注目します。
このチャートによれば、前期の3,113億円から今期の3,972億円へと利益が拡大した最大の要因は、「オペレーション改善」によるプラス859億円です。
泉田氏の分析によれば、この改善の大部分は主力である「ITサービス」領域で起きています。長年にわたって進めてきた低採算事業の撤退やリストラといった構造改革の効果が表れたことに加え、後述するAIを活用したDX(デジタルトランスフォーメーション)事業「BluStellar(ブルーステラ)」の拡大により、利益率が大きく改善したことが原動力となっています。
【動画で解説】NECが利益4割増!背景にある「不採算事業の整理」とAI事業の拡大による大規模な「オペレーション改善」
著者
金融・経済YouTubeチャンネル「イズミダイズム」
「イズミダイズム」は、株式会社モニクルリサーチが運営する金融・経済YouTubeチャンネルです。フィデリティ投信や日本生命でポートフォリオマネージャーや証券アナリストとしての勤務経験のある元機関投資家の泉田良輔が、プロの視点で金融や経済に関する様々なニュースの解説や、資産形成に役立つトピックをお届けします。新NISAの開始やインフレを背景に、個人の資産運用への関心が高まる中、機関投資家と個人投資家の「視点の違い」や、経済ニュースの裏側にある「構造」をロジカルに解説します。(最新更新日:2026年1月30日)
監修者
株式会社モニクルリサーチ
代表取締役/日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)
株式会社モニクルリサーチ代表取締役。その他に株式会社モニクル取締役COO、株式会社モニクルフィナンシャル取締役COOも務める。LIMO&ファイナンス編集長。東京科学大学大学院非常勤講師。日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)。慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科修了(同研究科最優秀賞受賞)
1. 経歴
2013年に株式会社ナビゲータープラットフォーム(現:株式会社モニクルリサーチ)を原田慎司(現同社取締役)らとともに共同創業。2013年に個人投資家向け金融経済メディア「Longine(ロンジン)」を立ち上げ、編集長に就任。Longineの立ち上げの経緯はBloombergにおいて「体力勝負アナリスト辞めます、元外資マン個人に長期投資指南」として掲載され大きな反響を呼ぶ。投資情報のサブスクモデルを確立する。その後、株初心者向けネットメディア「株1」、2015年にはくらしとお金の経済メディア「LIMO」の前身となる「投信1」を立ち上げる。2026年6月に専門家と実務家が情報発信をする金融経済ニュースサイト「LIMO&ファイナンス」を立ち上げ編集長に就任。
それ以前は、日本生命・国際投資部で外国株式ファンドマネージャー、フィデリティ投信・調査部や運用部にて10年に渡ってインターネット、電機(半導体・民生・産業エレクトロニクス)、機械(ロボットやセンサー企業中心)といったテクノロジーセクターの証券アナリストや中小型株ファンドのアシスタント・ポートフォリオ・マネージャー(最年少で就任)として従事。
2. 専門・研究領域
慶応義塾大学商学部卒業。国際金融及びコーポレート・ガバナンスを専攻。アジア通貨危機、昭和金融恐慌などの金融パニックのメカニズムを金融政策や金融機関への規制の観点から研究。それらの内容は「昭和金融恐慌からの教訓 平成恐慌になにをどう生かすべきか」(三田商学研究学生論文集)として発表。
3. 著書
・『機関投資家だけが知っている「予想」のいらない株式投資』(ダイヤモンド社)
・『テクノロジーがすべてを塗り変える産業地図』(クロスメディア・パブリッシング)
・『銀行はこれからどうなるのか』(クロスメディア・パブリッシング)
・『Google vs トヨタ 「自動運転車」は始まりにすぎない』(KADOKAWA)
・『日本の電機産業 何が勝敗を分けるのか』(日本経済新聞出版社)
4. 寄稿や講演他
「日経BizGate」での連載「泉田良輔の新・産業鳥瞰図」や「現代ビジネス」、「東洋経済オンライン」、「プレジデント」などへの寄稿や対談も多数。対談記事例としては「【未来予想】ブロックチェーン革命が、「半沢直樹」の世界に終わりを告げる」や「【未来予想】アマゾンとビットコインが、次世代の「銀行」になる理由」(いずれもNewsPicks)、「米独に遅れる日本の自動運転、自動車も電機の二の舞に?」(週刊ダイヤモンド)。海外ジャーナリストからインタビューされることも多く、Financial TimesやThe Economist、Bloombergにおいて自動車や金融業界についての国内外産業動向コメントも発信している。
講演会や動画での情報発信も盛んに行っており、NewsPicksのTHE UPDATE、日経ビジネススクール、慶應丸の内キャンパス、慶應義塾SDM、アカデミーヒルズなどでも講義を行う。またNewsPicksのNewSchoolではプロジェクトリーダーとして「本当に初心者のための資産運用」を開催。
最終更新日:2026年6月26日