7月15日に厚生労働省が公表した「国民生活基礎調査の概況」によると、高齢者世帯の1世帯当たり平均所得金額は336.1万円となっており、そのうち「公的年金・恩給」が占める割合は61.3%にのぼることが示されています。このように年金が家計の柱となるなか、生活費の足しとしてパートなどで働くシニアが増加しています。

住民税非課税世帯に該当すると、国や自治体のさまざまな支援制度を利用できます。

ただし、非課税となるボーダーラインは自治体や家族構成、年齢によっても異なるため注意が必要です。

今回は、年金を受け取りながらパートで働いている人を想定して、「年金+パート収入」いくらまでなら非課税をキープできるかをシミュレーションします。

法改正を踏まえた最新のボーダーラインについても解説するため、ぜひ参考にしてください。

池田 夕華
「年金を受け取りながらパートで働くと、住民税非課税のラインを超えてしまわないか」という悩みは少なくありません。非課税かどうかで利用できる支援制度が大きく変わるため、まずは制度の仕組みと収入の目安を正しく押さえておきましょう。

1. この記事の3つのポイント

  •  住民税非課税世帯に該当すると、国や自治体のさまざまな支援制度を利用できる
  •  非課税となる所得のボーダーラインは、自治体や家族構成、年齢によって異なる
  •  「年金+パート収入」の非課税シミュレーションと、「年収の壁」見直しによる控除額拡大への対応法を解説

2. 「住民税非課税世帯」に該当するのはどんな世帯?

住民税非課税世帯とは、世帯に属する全員が住民税非課税である場合を指します。

住民税非課税に該当するのは、所得割・均等割のどちらともが非課税となる人です。

池田 夕華
住民税の「所得割」と「均等割」の違いを正しく理解されている方は意外と少ない印象です。均等割は所得が一定額を超えるとすぐに課税されるため、「非課税だと思っていたのに数千円だけ住民税がかかった」というケースも珍しくありません。
  • 所得割:所得金額に応じて負担するもの
  • 均等割:一定の所得を上回る人すべてが定額を負担するもの

3. 【住民税非課税】具体的な要件と所得の目安

住民税の所得割・均等割がどちらも非課税となる人の要件は、以下のとおりです。

  • 生活保護法の規定による生活扶助を受けている人
  • 障がい者、未成年者、寡婦またはひとり親で、前年の合計所得金額が135万円以下である人
  • 前年の合計所得金額が一定の基準を下回っている人

なお、所得要件の基準は自治体により異なります。

例として、東京23区で非課税となる所得金額は、以下のとおりです。

同一生計配偶者または扶養親族がいる場合

35万円×(本人・同一生計配偶者・扶養親族の合計人数)+31万円以下

同一生計配偶者または扶養親族がいない場合

45万円以下

※扶養親族は、年齢16歳未満の者及び地方税法第314条の2第1項第11号に規定する控除対象扶養親族に限る

4. 【住民税非課税】「年金+パート収入」いくらまでなら非課税になる?

非課税世帯の要件である所得の目安は、各種控除を差し引いた後の金額がもとになっています。

例として、65歳以上の年金受給者について、住民税非課税となるパート収入を計算してみましょう。

〈条件〉

  • 65歳以上
  • 単身世帯
  • 東京23区内に在住
  • 年金収入120万円(月額10万円)

〈控除額(令和8年度基準)〉

  • 公的年金等控除:110万円 ※65歳以上・公的年金以外の所得が1000万円以下・年金収入330万円未満の場合
  • 給与所得控除:65万円 ※給与収入金額190万円以下の場合
  • 所得金額調整控除:最大10万円 ※給与所得と公的年金等に係る雑所得の両方がある場合

単身世帯・東京23区内在住のため、非課税となる目安は所得45万円以下です。

年金収入120万円から110万円の控除額を引くと、年金所得は10万円となります。

年金とパート収入の両方がある場合は最大10万円の「所得金額調整控除」が適用され、パートの給与所得から差し引かれます。

これにより、給与所得控除(65万円)適用後の給与所得(調整前)を45万円以下に抑えれば、所得金額調整控除(10万円)が差し引かれて合計所得金額は45万円以下(35万円+10万円)となり、パート収入110万円までであれば非課税世帯を維持できます。

5. 「年収の壁見直し」で非課税ボーダーラインが変わる?

「年収の壁」の見直しに伴い、今後は給与所得控除の最低保証額が65万円から69万円に引き上げられました。

さらに、2027年度・2028年度の住民税については、給与収入220万円以下の場合、さらに5万円引き上げられた74万円を給与所得控除として差し引くことが可能です。

「年収の壁見直し」で非課税ボーダーラインが変わる?見直しに関する主な税制改正事項2/2

「年収の壁」見直しに関する主な税制改正事項

出所:名古屋市「令和9年度以降適用される市民税・県民税に関する主な税制改正」

池田 夕華
税制改正のタイミングでは「いつの収入から新しい控除額が適用されるのか」を誤解しているケースをよく見かけます。今回の見直しはあくまで2026年・2027年中の収入が対象になる点に注意しましょう。

非課税の判定は、前年の所得金額が基準となります。

つまり、2026年・2027年中の給与収入が220万円以下であれば、控除額74万円を差し引いた金額が2027年度・2028年度の給与所得とされます。

この場合、前章で非課税ラインを計算したモデルケースをもとにすると、「年金120万円+パート収入119万円」までが非課税世帯に該当する条件です。

中本 智恵
「年収の壁」の見直しは、非課税ラインぎりぎりで働き方を調整してきた方にとって数万円単位で家計に影響する変更だと感じます。ボーダーライン付近で働いている方は、2026年・2027年の収入がどちらの控除額の対象になるのか、早めに確認しておくと安心です。