物価高や収入減少で家計の負担が重い際に、頼れる制度が「生活保護」です。

一定の要件を満たせば誰でも申請する権利があり、困窮時に最低限度の暮らしを支えてくれます。近年は、申請件数がここ数年連続で増加傾向にあります。

では、どのような世代の申請・受給が多いのでしょうか。

本記事では、生活保護制度の概要と、世代構成・申請件数の動向について解説します。

1. この記事の3つのポイント

  •  生活保護は8種類の扶助に分かれる制度
  •  受給世帯の55.3%が高齢者、その大半が単身
  • 申請件数は単月減も数年連続で増加傾向

 

2. 生活保護制度と8つの扶助

生活保護は、日本国憲法25条に基づき「健康で文化的な最低限度の生活」を保障し、自立を助ける制度です。

その人の収入が地域ごとに定められた最低生活費を下回る場合、その不足分が支給されます。保護費は原則として現金給付で行われ、用途に応じて8種類の扶助に分かれているのが特徴です。

扶助の種類には以下のようなものがあります。

2.1 生活保護の8つの扶助

  • 生活扶助:日常生活に必要な費用(食料や衣料、光熱費など)
  • 住宅扶助:アパート等の家賃や住宅維持費
  • 教育扶助:義務教育に必要な学用品や給食費
  • 医療扶助:診療費や薬代など医療サービスの費用
  • 介護扶助:介護サービスの費用
  • 出産扶助:出産にかかる費用
  • 生業扶助:就労に必要な技能習得や高等学校等の学費
  • 葬祭扶助:お葬式など葬祭にかかる費用

世帯の状況に応じて、これらの扶助が一部または複数組み合わせて適用されます。

特に医療扶助によって、生活保護を利用している方は診療時の窓口負担が実質ゼロとなるため、経済的な理由で治療を受けられないという事態を防ぐことができます。

なお生活保護を利用するには、「資産・預貯金を生活費に充てる」「働ける能力があれば活用する」「年金や手当など他制度で受けられる給付を優先して利用する」「扶養義務のある親族から支援を受ける」といった要件を満たす必要があります。

これらをすべて尽くしてもなお収入が国の定める最低生活費に満たない場合に、生活保護が適用される仕組みです。

苛原 寛
企業向けの保険提案でリスク分析に携わってきた立場から見ても、費目ごとに支援の内容が分かれている生活保護の仕組みは、公的なセーフティネットとして理にかなった設計だと感じます。

医療費や介護費、教育費など「何にどのくらいのお金がかかるリスクがあるか」を事前に整理しておく発想は、保険を考えるときの考え方とも共通しています。制度の内容を知っておくこと自体が、いざという時の安心材料になります。

3. 生活保護の受給、どの世代に多い?

2026年8月5日にリリースされた厚生労働省「被保護者調査(令和8年5月分概数)」によると、生活保護を利用している世帯のうち、高齢者世帯が最も多くを占めています。

2026年5月時点の世帯類型別の集計対象世帯数は163万7522世帯で、そのうち高齢者世帯は90万3908世帯と、全体の55.3%にのぼります。

さらに内訳を見ると、高齢者世帯の大半が単身世帯であり、単身の高齢者世帯は84万4908世帯(全体の51.7%)を占めています。

一方で、18歳未満の子どもがいる母子世帯は5万4975世帯(3.4%)にとどまり、高齢者世帯を除く世帯全体(母子世帯・障害者・傷病者世帯・その他の世帯を合わせたもの)は72万9467世帯(44.7%)となっています。

これらの数字から、生活保護は年金や貯蓄だけでは生活費を十分にカバーしきれない高齢の単身世帯が多くを占める制度であることがうかがえます。

なお、保護の申請件数は令和8年5月分で2万991件となり、前年同月からは2037件(8.8%)減少しました。

ただし単月の増減はあるものの、厚生労働省の集計では申請件数はここ数年連続で増加傾向にあり、現行の調査方法になった2013年以降で最多水準にあるとされています。物価高や単身世帯の増加などが背景として挙げられています。