4. 国防・安保と連動する新セグメントの狙い
この社会インフラ事業の重要性の高まりは、NECの組織体制にも変化をもたらしています。
これまで社会インフラ事業は、基地局などを扱う「テレコムサービス」と、航空宇宙・防衛・海洋を含む「ANS(エアロスペース&ナショナルセキュリティ)」の2つに大別されていました。
前期の実績では、テレコムのNon-GAAP営業利益が291億円であったのに対し、ANSは544億円と、すでに防衛や海洋分野が利益の柱となっていました。
来期の予想では、基地局の構造改革効果が表れるテレコムが増益に転じることに加え、ANS全体が売上13.8%増、利益45%増と強烈な成長を見込んでいます。
こうした状況を受け、NECは2026年度からセグメントの区分を変更し、「航空宇宙防衛」「海洋システム(海底ケーブル等)」「ネットワークインフラ」の3つに分割して業績を開示することにしました。
泉田氏はこの変更について、「会社がどの事業をアピールしたいのか、どこを主力として伸ばしていくのかという強いメッセージ」だと分析します。
日本がアジアにおけるデータ通信のハブとなっていること、AIの普及によってグローバルなデータ通信量が爆発的に増加していること、そして昨今の地政学的な緊張から防衛予算が拡大していること。これらすべてが、NECの事業領域にとって強烈な追い風となっています。
泉田氏は動画の最後に、機関投資家としての視点からNECの現状をこう総括しました。
「防衛宇宙も昔から当然やっていたんだけど、地政学的なリスクとか、この日本っていう国の国策に本当に乗ってきているので。NECも変わっているんだけど、外部環境の変化っていうのもすごく大きいなと感じました」
私たちが知る「パソコンのNEC」は、今やAIによる企業の生産性向上を裏方として支え、さらには海底深くで国家のデータ通信網を守る、巨大なインフラ企業へと進化を遂げていました。
同社の業績を追う際には、目先の売上だけでなく、こうした「国策」や「マクロ環境のトレンド」と事業がどう結びついているかを見極めることが、投資判断の重要な鍵となりそうです。
【動画で解説】NECが利益4割増!背景にある「不採算事業の整理」とAI事業の拡大による大規模な「オペレーション改善」
詳しくは、泉田良輔氏が解説する「イズミダイズム」の動画本編をぜひご覧ください。
参考資料
- NEC(日本電気株式会社)「2026年3月期 決算短信」(2026年4月28日)
- NEC(日本電気株式会社)「2026年3月期 決算説明会資料」(2026年4月28日)
- 総務省「国際海底ケーブルを巡る現状と課題」
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Youtubeチャンネル「イズミダイズム」
著者
金融・経済YouTubeチャンネル「イズミダイズム」
「イズミダイズム」は、株式会社モニクルリサーチが運営する金融・経済YouTubeチャンネルです。フィデリティ投信や日本生命でポートフォリオマネージャーや証券アナリストとしての勤務経験のある元機関投資家の泉田良輔が、プロの視点で金融や経済に関する様々なニュースの解説や、資産形成に役立つトピックをお届けします。新NISAの開始やインフレを背景に、個人の資産運用への関心が高まる中、機関投資家と個人投資家の「視点の違い」や、経済ニュースの裏側にある「構造」をロジカルに解説します。(最新更新日:2026年1月30日)
監修者
株式会社モニクルリサーチ
代表取締役/日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)
株式会社モニクルリサーチ代表取締役。その他に株式会社モニクル取締役COO、株式会社モニクルフィナンシャル取締役COOも務める。東京科学大学大学院非常勤講師。日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)。慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科修了(同研究科最優秀賞受賞)
1. 経歴
2013年に株式会社ナビゲータープラットフォーム(現:株式会社モニクルリサーチ)を原田慎司(現同社取締役)らとともに共同創業。2013年に個人投資家向け金融経済メディア「Longine(ロンジン)」を立ち上げ、編集長に就任。Longineの立ち上げの経緯はBloombergにおいて「体力勝負アナリスト辞めます、元外資マン個人に長期投資指南」として掲載され大きな反響を呼ぶ。投資情報のサブスクモデルを確立する。その後、株初心者向けネットメディア「株1」、2015年にはくらしとお金の経済メディア「LIMO」の前身となる「投信1」を立ち上げる。
それ以前は、日本生命・国際投資部で外国株式ファンドマネージャー、フィデリティ投信・調査部や運用部にて10年に渡ってインターネット、電機(半導体・民生・産業エレクトロニクス)、機械(ロボットやセンサー企業中心)といったテクノロジーセクターの証券アナリストや中小型株ファンドのアシスタント・ポートフォリオ・マネージャー(最年少で就任)として従事。
2. 専門・研究領域
慶応義塾大学商学部卒業。国際金融及びコーポレート・ガバナンスを専攻。アジア通貨危機、昭和金融恐慌などの金融パニックのメカニズムを金融政策や金融機関への規制の観点から研究。それらの内容は「昭和金融恐慌からの教訓 平成恐慌になにをどう生かすべきか」(三田商学研究学生論文集)として発表。
3. 著書
・『機関投資家だけが知っている「予想」のいらない株式投資』(ダイヤモンド社)
・『テクノロジーがすべてを塗り変える産業地図』(クロスメディア・パブリッシング)
・『銀行はこれからどうなるのか』(クロスメディア・パブリッシング)
・『Google vs トヨタ 「自動運転車」は始まりにすぎない』(KADOKAWA)
・『日本の電機産業 何が勝敗を分けるのか』(日本経済新聞出版社)
4. 寄稿や講演他
「日経BizGate」での連載「泉田良輔の新・産業鳥瞰図」や「現代ビジネス」、「東洋経済オンライン」、「プレジデント」などへの寄稿や対談も多数。対談記事例としては「【未来予想】ブロックチェーン革命が、「半沢直樹」の世界に終わりを告げる」や「【未来予想】アマゾンとビットコインが、次世代の「銀行」になる理由」(いずれもNewsPicks)、「米独に遅れる日本の自動運転、自動車も電機の二の舞に?」(週刊ダイヤモンド)。海外ジャーナリストからインタビューされることも多く、Financial TimesやThe Economist、Bloombergにおいて自動車や金融業界についての国内外産業動向コメントも発信している。
講演会や動画での情報発信も盛んに行っており、NewsPicksのTHE UPDATE、日経ビジネススクール、慶應丸の内キャンパス、慶應義塾SDM、アカデミーヒルズなどでも講義を行う。またNewsPicksのNewSchoolではプロジェクトリーダーとして「本当に初心者のための資産運用」を開催。
最終更新日:2026年2月21日