75歳以上になると医療費の窓口負担は「1割」になると思われがちですが、実際には年金収入などが一定の基準を超えると「2割」や「3割」に引き上げられます。

実際、J-FLEC(金融経済教育推進機構)の「家計の金融行動に関する世論調査 2025年」によると、年金生活にゆとりがない理由として「医療費の個人負担増」を挙げる70歳代は、二人以上世帯で30.0%、単身世帯で22.6%に上ります。

物価上昇などに次いで、医療費への不安がシニア世代の家計に重くのしかかっている現状が浮き彫りになっています。

さらに、今年度(2026年4月)からは新たに「子ども・子育て支援金」の徴収がスタートし、後期高齢者医療制度の加入者にも実質的な負担増が生じています。

本記事では、75歳時点で医療費の窓口負担が「2割」となる年金収入の目安と、新たに始まった「子ども・子育て支援金」の制度概要を整理して解説します。今後の生活設計や家計管理に向けて、まずは最新の制度の仕組みをしっかり確認しておきましょう。

1. 日本の「公的な医療保険制度」の仕組みをおさらい

日本の公的医療保険制度は、働き方や暮らしの状況に応じて加入先が分かれています。

代表的な制度は大きく3つに分かれており、誰もが公的医療保険を利用できる体制が整っています。

  • 被用者保険:会社勤めの人が対象
  • 国民健康保険:自営業者・フリーランス・退職者などが対象
  • 後期高齢者医療制度:原則75歳以上の人が対象

これにより、必要な医療を受けやすい体制が整えられ、医療機関で支払う自己負担の軽減にもつながっています。

次章では、こうした制度の中でも、原則75歳以上を対象とした「後期高齢者医療制度」について詳しく見ていきます。

2. 75歳以上が原則加入対象となる「後期高齢者医療制度」について

後期高齢者医療制度は、公的医療保険の一制度であり、原則として75歳以上の人が対象となります。

75歳に達すると、就労しているかどうかにかかわらず、それまで加入していた国民健康保険や勤務先の健康保険、共済組合などから自動的にこの制度へ移ります。

また、65歳から74歳までの人でも、一定の障害があると認められた場合には、後期高齢者医療制度へ加入することができます。

次章では、この制度における医療費の窓口負担の仕組みについて詳しく見ていきます。

2.1 【後期高齢者医療制度】医療費の自己負担は「1割・2割・3割」のいずれか

後期高齢者医療制度では、住民税の課税状況などをもとに、医療機関の窓口で支払う自己負担割合が判定され、「1割」「2割」「3割」のいずれかが適用されます。

制度が始まった当初は、一般的な所得水準の人は1割、現役世代並みの収入がある人は3割という区分が基本でした。

その後、医療費の増大や現役世代の負担を抑える観点から、2022年10月より、一般所得者の中でも一定以上の所得がある人を対象に、新たに「2割負担」が設けられています。

  • 3割負担:現役並み所得者(同じ世帯の被保険者の中に住民税課税所得が145万円以上の方がいる場合)
  • 2割負担:一定以上所得のある方
  • 1割負担:一般所得者等(同じ世帯の被保険者全員の住民税課税所得がいずれも28万円未満の場合など)

厚生労働省の試算では、後期高齢者医療制度の被保険者のうち、およそ20%(約370万人)が医療費の自己負担2割の対象になると見込まれています。

また、2割負担となる人の急激な負担増を和らげるため、2025年9月30日までは経過的な配慮措置が設けられていました。

2.2 【すでに終了】昨年まで実施されていた「2割負担」への配慮措置とは?

窓口での負担割合が2割へ引き上げられる際の急激な増加を防ぐため、2022年10月1日からの3年間は、外来診療における負担増を月3000円までに抑える措置が設けられていました。

この特例は2025年9月30日で終了し、現在は原則どおり2割負担が適用されています。

【現在はすでに終了】以前まで実施されていた「2割負担」への配慮措置5/10

【現在はすでに終了】以前まで実施されていた「2割負担」への配慮措置

出所:厚生労働省「後期高齢者の窓口負担割合の変更等(令和3年法律改正について)」

ただし、配慮措置が終了した後も、高額療養費制度によって外来医療における自己負担額には上限が設定されており、月額1万8000円(年額14万4000円)までに抑えられます。

では、どのような条件に該当する人が「2割負担」の対象となるのかについて、次章で確認していきましょう。

3. 【後期高齢者医療制度】医療費が「2割負担」に該当する年金収入はどのくらい?

政府広報オンラインによると、医療費の自己負担割合が「2割」と判定されるのは、(1)(2)の両方の要件を満たした場合です。

医療費が「2割負担」に該当する年金収入の目安6/10

医療費が「2割負担」に該当する年金収入の目安

出所:政府広報オンライン「後期高齢者医療制度 医療費の窓口負担割合はどれくらい?」

  1. 同じ世帯の被保険者の中に課税所得が28万円以上の方がいる。
  2. 同じ世帯の被保険者の「年金収入」+「その他の合計所得金額」の合計額が以下に該当する。
    ・1人の場合は200万円以上
    ・2人以上の場合は合計320万円以上

たとえば単身世帯では、「年金収入」と「その他の合計所得金額」の合計が200万円以上、月額にするとおよそ16万6000円を上回ると、2割負担の対象となります。

次章では、窓口での負担割合が「2割」に当てはまるかどうかを、フローチャートを用いて分かりやすく確認していきます。

3.1 【フローチャート図】医療費の窓口負担は「2割」になる?

医療費の自己負担割合が2割となるかどうかは、まず「課税所得が28万円以上であるか」を確認し、その後に「年金収入とその他の所得を合わせた額が基準を上回っているか」で判定されます。

フローチャートを活用しながら、ご自身やご家族が2割負担に該当するかどうかを確認してみてください。

  • 単身世帯:現役並み所得者に該当しない→課税所得が28万円以上である→年金収入とその他の合計所得が200万円以上である
  • 複数人世帯:現役並み所得者に該当しない→世帯内75歳以上の方等のうち課税所得が28万円以上の方がいる→年金収入とその他の合計所得が合計320万円以上である

さらに、2026年度には「子ども・子育て支援金制度」の導入が予定されており、今後はシニア世代の保険料負担がいっそう重くなる可能性があります。

4. 【全世代が対象】今年度(2026年4月)からスタートした「子ども・子育て支援金」

「子ども・子育て支援金制度」は、児童手当の拡充や保育サービスの強化など、子育て支援策の財源を確保する目的で創設されました。

「子ども・子育て支援金制度」は、児童手当の拡充や保育サービスの強化など、子育て支援策の財源を確保する目的で創設されました。

今年度、2026年4月からは、この財源として「子ども・子育て支援金」が公的医療保険の保険料に上乗せされる形で徴収が始まっています。
この制度の最大の特徴は、世代や立場を問わず、すべての経済主体が幅広く負担を分かち合う点にあります。そのため、現役を退いて年金生活を送る高齢者であっても、原則として負担の対象となります。

4.1 子ども・子育て支援金の上乗せにより、月々の負担額はどう変わる?

子ども・子育て支援金は、2026年度から2028年度にかけて段階的に引き上げられていく予定です。

こども家庭庁の資料によると、徴収が始まった2026年度における加入者一人あたりの平均月額(見込み額)は以下の通り試算されています。

【2026年度の医療保険加入者一人当たり平均月額(見込み額)】

  • 全制度平均:月額約250円
  • 被用者保険(会社員や公務員など):月額約300円
  • 国民健康保険(専業主婦やフリーランスなど):月額約250円
  • 後期高齢者医療制度(高齢者など):月額約200円

なお、この支援金の負担額は一律ではなく、所得(年収)に応じて変動する仕組みとなっています。

4.2 【シニア世代向け】「子ども・子育て支援金」の月額上乗せを年収別に確認

こども家庭庁の資料をもとに、制度が完全に段階的引き上げを終える「2028年度時点」における、後期高齢者(単身世帯・年金収入のみ)の年収別負担額の目安を確認してみましょう。

後期高齢者(単身世帯・年金収入のみ)の年収別負担額10/10

後期高齢者(単身世帯・年金収入のみ)の年収別負担額

出所:こども家庭庁長官官房総務課支援金制度等準備室「子ども・子育て支援金制度について」をもとにLIMO編集部作成

  • 年収80万円の場合:月額 50円(均等割7割軽減)
  • 年収160万円の場合:月額 100円(均等割7割軽減)
  • 年収180万円の場合:月額 200円(均等割5割軽減)
  • 年収200万円の場合:月額 350円(均等割2割軽減)
  • 年収250万円の場合:月額 550円(軽減なし)
  • 年収300万円の場合:月額 750円(軽減なし)

今後の保険料率の見直し等によって実際の金額は変動する可能性がありますが、年収が高くなるにつれて段階的に負担が増える設計となっています。

5. 【まとめ】シニアの家計を圧迫する医療費と保険料増。不安なときは軽減措置の確認を

冒頭でご紹介したJ-FLECの調査データが示す通り、シニア世代の家計において「医療費の個人負担増」は、生活のゆとりを奪う大きな要因として重くのしかかっています。

本記事で確認したように、75歳以上であっても年金収入などの条件次第では窓口負担が「2割」に引き上げられます。さらに、今年度(2026年4月)から本格的に徴収が始まった「子ども・子育て支援金」により、月々数百円程度とはいえ、新たな固定費の負担が追加されました。

少子高齢化を背景に、後期高齢者医療制度の保険料自体も年々上昇傾向にあります。長引く物価高も相まって、限られた年金収入でやり繰りするシニア世代にとって、家計への影響は決して無視できるものではありません。

老後の生活を守るためには、まずはご自身やご家族の医療費の負担区分と、今後の保険料の天引き額を正確に把握しておくことが不可欠です。もし、経済的な事情で医療費や保険料の支払いが困難な場合には、各自治体が設けている「一部負担金の減額・免除等」の支援制度を利用できる可能性があります。家計の負担に不安を感じた際は、一人で抱え込まず、早めにお住まいの自治体の窓口へ相談してみましょう。

参考資料