3. なぜ「非課税世帯だけ」がもらえる?給付金が抱える「資産の不公平」問題
給付金の支給が住民税非課税世帯に限定される実情に、不公平感を抱く人もいるでしょう。なぜ住民税の課税状況で支援の線引きがされているのでしょうか。
理由はさまざまなものが考えられますが、そのひとつに「スピード感」が挙げられます。これまでの給付金の意義は「本当に困っている人に届ける」ものでした。誰が経済的に困っているのか把握するには、各自治体で把握している「住民税の課税状況」を使うのがスムーズです。給付金の意義に沿う基準のひとつが「住民税非課税世帯」なのです。
しかし、この線引きにもさまざまな課題があります。中でも表面化しているのは、資産が考慮されない点です。J-FLECの「家計の金融行動に関する世論調査」をもとに、60歳代・70歳代の夫婦世帯の資産額を見てみましょう。
- 金融資産非保有:20.5%
- 100万円未満:6.5%
- 100~200万円未満:5.3%
- 200~300万円未満:3.7%
- 300~400万円未満:3.1%
- 400~500万円未満:3.1%
- 500~700万円未満:6.3%
- 700~1000万円未満:5.3%
- 1000~1500万円未満:8.9%
- 1500~2000万円未満:5.8%
- 2000~3000万円未満:8.0%
- 3000万円以上:20.0%
- 無回答:3.6%
- 平均:2033万円
- 中央値:650万円
- 金融資産非保有:20.8%
- 100万円未満:5.4%
- 100~200万円未満:4.9%
- 200~300万円未満:3.4%
- 300~400万円未満:3.7%
- 400~500万円未満:2.3%
- 500~700万円未満:4.9%
- 700~1000万円未満:6.4%
- 1000~1500万円未満:10.2%
- 1500~2000万円未満:6.6%
- 2000~3000万円未満:8.9%
- 3000万円以上:19%
- 無回答:3.5%
- 平均:1923万円
- 中央値:800万円
金融資産のない世帯も2割ほどいますが、ほぼ同様の割合で3000万円以上の資産を持つ世帯も存在します。退職金収入などにより、資産を多く持つ高齢者世帯も決して少なくないのです。
住民税非課税世帯への給付金は、所得が少ない世帯に支給されるものです。そのため、上記のようにたとえ多くの資産を持っていても、住民税が非課税であれば給付対象となります。生活に困らない程度の資産がある人にも、住民税非課税世帯であることを理由に給付金が支給されている状況なのです。
所得が少なくても資産の多い世帯に給付金が支給され、所得があっても資産がなく苦しい生活を送る人には負担が強いられる状況が、国民に不公平感を生んでいる理由といえるでしょう。