秋が深まり、過ごしやすい季節となった10月は、落ち着いて将来の計画を立てるのに良い時期です。老後を安心して過ごせるかどうかは、現役時代の生活習慣や準備に大きく左右されます。
実際、公的調査やさまざまな事例を振り返ると、”ゆとりある老後”を実現している人々にはいくつかの共通点が見えてきます。例えば、計画的な家計管理や早い段階からの資産形成、健康維持のための取り組みなど、日々の小さな積み重ねが後の安定につながっています。
この記事では、データをもとに、豊かな老後を実現した人たちが現役時代にどのような工夫や行動をしていたのかを、具体的に紹介していきます。
1. 取り組み①家計管理を習慣化していた
老後の安心感は、実は若い頃からの日々の習慣に支えられています。その中でも、特にゆとりある老後を実現している人たちが続けてきたのが、「お金の流れを見える化」する習慣です。
毎月の生活費を細かく帳簿につける人もいれば、家計簿アプリでおおまかな支出の推移を把握する人もいるでしょう。やり方は違いますが、「自分の家計を常に把握する意識」を持っていた点は共通しています。
これは、今日からでも比較的簡単に取り入れられそうな習慣ではないでしょうか。
上記調査によると、2021年以降ではおよそ7割近くの人が資金計画を立てて家計を管理していることがわかります。
この習慣が身についていれば、急な出費にも落ち着いて対応でき、使途不明金を減らすことにもつながります。結果的に、長期にわたり資産を維持・増やすための基盤が築かれていくのです。
2. 取り組み②毎月コツコツ貯蓄を継続した
「余ったら貯める」ではなく、「給料日にまず貯蓄を取り分ける」という“先取り貯蓄”を徹底していた人は、退職後の資金に明らかな余裕があります。
J-FLEC 金融経済教育推進機構が実施した「家計の金融行動に関する世論調査 二人以上世帯(2024年)」のデータによれば、60歳代世帯の金融資産は中央値650万円に対し、平均値は2033万円と大きな差が見られます。
※調査の貯蓄額には、日常の支出や口座引き落としのための普通預金残高は含まれていません。
60歳代の貯蓄額(平均値・中央値)
2033万円・650万円
70歳代の貯蓄額(平均値・中央値)
1923万円・800万円
この結果は一部の裕福な世帯が平均値を大きく押し上げていることを示しています。この中央値より大幅に上回る世帯は、多くが「毎月の積立」を続けていた層です。
また、長期にわたる積立を投資や運用に回すことで、「複利効果」を最大限に活かせます。現金を銀行に預けているだけでは得られない、この効果を味方につけた人は、少額であっても若い頃から始めることで、老後に大きなゆとりを実感しているのです。
3. 取り組み③資産を分散して守りながら増やしていた
現在のシニア世代が現役時代に意識していたのは、「資産をひとつに偏らせないこと」でした。
定期預金や郵便貯金といった安全性の高い金融商品を土台にしつつ、一部を社債や投資信託に回すなど、時代に応じて資産を分散していました。
また、財形貯蓄や企業年金制度など、勤務先を通じて計画的に積み立てを行っていた人も多く、これが老後の生活資金を支える柱になっています。
シニア層の中でも60歳代後半は、85歳以上の世代と比較すると、分散して自身の資産を守る意識がより高いこともわかります(参照:内閣府「令和7年版高齢社会白書 第2節 高齢期の暮らしの動向」)。
一方で、今の現役世代にとっては、低金利が続く中で昔ながらの預貯金だけでは資産を増やしにくいのも事実です。
そのため、NISAやiDeCoといった制度を活用し、リスクを分散しながら長期投資を行うことが、将来の「ゆとりある老後」につながるでしょう。
4. 取り組み④ 住宅ローンを計画的に完済していた
老後の家計を大きく圧迫するのが「住宅ローンの残債」です。
総務省の調査が示す通り、住宅ローン返済中の世帯は負債が貯蓄を上回り、家計が厳しい状況にあることが明らかになっています。定年後もローン返済が続けば、年金収入の大半を住居費に充てざるを得ず、生活の自由度が大きく制限されてしまいます。
家賃を払い続ける必要がないという安心感は、退職後の家計を安定させる大きな要因となります。
ゆとりある老後を過ごしている人の多くは、定年前に繰り上げ返済やボーナス返済を活用し、早めに負債をゼロにする計画を立てていました。また、「退職金をローン完済に充てる」「子どもの独立を機に住み替える」など、ライフイベントに合わせた判断をしていたことも特徴的です。
住居費が抑えられることで、年金収入を旅行や趣味に回す余裕が生まれ、精神的にも安心感のある暮らしにつながります。
賃貸暮らしの場合も注意すべき「固定費」
一方、持ち家ではなく賃貸暮らしの場合も、住居費の負担は決して軽視できません。国土交通省の調査では、高齢者の住まいとして持ち家が多い一方で、賃貸住宅に住み続ける高齢者も未だに多く、家賃だけで毎月数万円の固定費がかかり、大きな支出の一つとなっています。
このように、持ち家であっても賃貸であっても、現役時代に「老後の住居費の負担をいかにゼロに近づけるか」という計画を立てていたことが、ゆとりある老後の共通点といえます。
5. 取り組み⑤健康管理に気を配っていた
経済的な備えと同じくらい重要なのが「健康の備え」です。
厚生労働省のデータによれば、日本人の生涯医療費は平均約2900万円。
さらに生涯医療費の半分が70歳以降に集中していることがわかります。
全額が負担になるわけではなく、保険適用で自己負担分は少なくなります。
特に70代後半〜80代前半に医療費がピークを迎え、もし慢性疾患があったり入院する必要が出てくると、家計を圧迫する要因となります。
医療費の備えはもちろん、病気にならないことも重要です。
豊かな老後を過ごしているシニアは、現役時代から定期健診の受診、適度な運動、バランスの取れた食生活を心がけていました。
特に生活習慣病の予防に努めることで、高額な医療費や通院負担を避けられたことが、家計にも健康にもプラスに働いています。
また、健康は「お金の節約」だけでなく、「やりたいことを楽しむための体力」を保証してくれます。
旅行や趣味、孫との交流など、活動的な暮らしを支える土台として、健康管理は欠かせない投資だったといえるでしょう。
6. 取り組み⑥社会とかかわり、人間関係・趣味を育んでいた
お金と健康に加え、老後の生活を豊かにするのは「人とのつながり」と「生きがい」です。
総務省のデータによると、2024年時点の高齢者の就業率は、65歳~69歳が53.6%、70~74歳が35.1%、75歳以上が12.0%となっています。
高齢者の就業率が増加している背景には、健康寿命の延伸や「社会とのつながりを持ち続けたい」という意欲的な動機もあります。
同統計では、高齢者がなぜ仕事を続けるのか、その理由についても明らかになっています。
「収入のため」に働いているシニアが多いですが、仕事を通じてやりがいを感じたり、社会と関わりを持ち続けることで孤独に陥りにくく、そして健康にも気を遣うという方も多くいる傾向があります。
また、仕事だけでなくゴルフや囲碁・将棋、園芸などの趣味を通じて仲間ができたり、地域のイベントやPTA活動をきっかけに築いた人脈が、老後の支えとなるケースも少なくありません。
社会とのかかわり持っていたことが、心の豊かさと日々の充実感につながっているのです。
7. まとめにかえて
ゆとりある老後を過ごすシニアには、「計画的なお金の管理」「長期的な資産形成」「健康と生活習慣への意識」といった共通点がありました。
現役時代の小さな積み重ねが、退職後の大きな安心につながります。
将来の自分のために、今日からできることを少しずつ取り入れていくことが大切です。







