2025年9月5日に総務省統計局が「家計調査(2025年7月分)」を公表しました。ここには、二人以上の世帯の消費支出は、1世帯あたり月額30万5694円、前年同月比では実質1.4%の増加、名目では5.1%の増加となることが、示されています。
食料品をはじめとする物価の上昇が続く中、年金収入に依存する高齢者世帯では、生活費のやりくりがますます重要な課題となっています。
本記事では、70歳代の平均貯蓄額や、老後に必要とされる生活費の実態について、最新の統計データをもとに詳しく説明します。
1. 働くシニアの増加、年金制度改正法の成立「今後、誰にどんな影響がある?」
2025年6月13日、年金制度改正法が成立しました。
これは働き方や家族構成の多様化に対応した制度整備や、私的年金制度の充実を図ることで、老後の生活の安定や所得保障機能の強化を目指すものです。
では、今回の改正における主な見直し点を確認していきましょう。
1.1 年金制度改正の全体像をチェック!「年金制度改正法」の主な見直しポイント
社会保険の加入対象の拡大
- 短時間労働者の加入要件(賃金要件・企業規模要件)の見直し(年収「106万円の壁」撤廃へ)
在職老齢年金の見直し
- 支給停止調整額「月62万円」へ大幅緩和(2025年度は月51万円)
遺族年金の見直し
- 遺族厚生年金の男女差を解消
- 子どもが遺族基礎年金を受給しやすくする
保険料や年金額の計算に使う賃金の上限の引き上げ
- 標準報酬月額の上限を、月65万円→75万円へ段階的に引き上げ
私的年金制度
- iDeCo加入年齢の上限引き上げ(3年以内に実施)
- 企業型DCの拠出限度額の拡充(3年以内に実施)
- 企業年金の運用の見える化(5年以内に実施)
今回の改正からも分かるように、公的年金制度は一人ひとりの働き方やライフプランと密接に関係しています。
総務省「2024年(令和6年)労働力調査」によれば、65歳以上の就業者数は930万人に達し、前年より16万人増加しており、シニア世代の就労は着実に拡大しています。
一方で、厚生労働省の統計では、平均寿命(男性約81歳・女性約87歳※1)と健康寿命(男性約73歳・女性約75歳※2)の間には、男性で約8年、女性で約12年の差があることが示されています。
この差が意味するのは、多くの高齢者が医療や介護の支援を必要とする期間を過ごす可能性が高いということです。
だからこそ、現役世代のうちから貯蓄や資産形成に取り組むことが、70歳以降の安心につながると言えるでしょう。
※1 平均寿命:2022年 男性81.05歳、女性87.09歳・2023年 男性81.09歳・87.14歳(「令和5年簡易生命表の概況」)
※2 健康寿命:2022年 男性72.57歳、女性75.45歳(「健康寿命の令和4年値について」)