8月は夏休みなどの長期休暇もあり「将来の年金」についてゆっくり考えた方もいたのではないでしょうか。また、もしも万が一、将来的に離婚することになったら、これまで積み上げてきた年金はどうなるのか、漠然とした不安を感じる方もいらっしゃるかもしれません。
今回は、厚生労働省の統計資料をもとに、離婚後の年金が増える可能性がある「年金分割制度」について解説します。この制度は、請求しなければ受け取ることができず、知らずに損をしている人も少なくありません。将来の生活設計を考える上で、この機会に年金分割制度の仕組みを正しく理解しておきましょう。
1. 【年金分割】「離婚した夫婦の約2割が利用」制度の活用は進んでいない
日本では、どのくらいの夫婦が離婚時に年金分割制度を利用しているのでしょうか。
厚生労働省が発表した「令和5年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」の厚生年金保険(第1号)における離婚等に伴う年金分割の状況についてみていきます。
【令和5年度】離婚等に伴う保険料納付記録分割件数について
- 厚生年金(第1号)被保険者の離婚件数(組):18万4223件
- 分割件数総数(件):3万2642件
厚生年金に加入していた夫婦の離婚のうち、約17.8%が年金分割を利用していることが分かります。これは、離婚した夫婦のおよそ2割弱にとどまっており、まだまだ制度の活用が進んでいない現状がうかがえます。
年金分割には、夫婦の合意が必要な「合意分割」と、配偶者の同意が不要な「3号分割」の2種類があります。内訳を見ると、合意分割と3号分割の両方、または合意分割のみが行われたケースが2万1625件、3号分割のみが行われたケースが1万1017件でした。このことから、合意が必要なケースよりも、合意なしで手続きできる「3号分割」の利用は少ないことが分かります。
2. 【年金分割】年金を受け取る側「いくらもらえる?」
厚生労働省「令和5年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」の「離婚後に年金分割を利用した夫婦を対象にした統計」をみていきましょう。合意分割を利用したケースでは、年金を分割する側(第1号改定者)の月額が平均で約3.1万円減少し、受け取る側(第2号改定者)の月額が平均で約3.3万円増加しています。このことから、老後の家計に与える影響が非常に大きいことがわかります。
2.1 3号分割の利用状況
一方、3号分割のみを利用したケースでは、主に男性である分割する側の月額が平均約7000円減少し、主に女性である分割される側の月額が平均約7800円増加しました。
これは、3号分割の対象期間が平成20年4月1日以降の期間に限られているため、合意分割に比べて変動額が小さい傾向にあります。
以上のように年金分割を行うことで、実際に数千円から数万円単位で年金額が変わるケースがあることがわかります。制度の仕組みを理解し、状況に応じて適切に活用すれば、離婚後の老後資金に大きな違いを生む可能性もあります。
では、ここからは「合意分割」と「3号分割」の違いや特徴について詳しく見ていきましょう。
3. 【年金分割】合意分割と3号分割
年金分割制度には、「合意分割」と「3号分割」の2種類があります。この制度は、離婚した夫婦が、婚姻期間中に納めた厚生年金の記録を分け合うしくみです。年金そのものを半分にするわけではなく、将来の年金額に影響する記録を分割します。分割ということで年金記録を書き換えるので、年金分割の手続きは年金事務所で行います。
「合意分割」は、婚姻期間中にどちらかが厚生年金に加入していた夫婦が対象です。共働き夫婦でも、専業主婦と会社員の夫婦でも利用できます。分割の際には、標準報酬の多い方から少ない方へ記録が移されるため、仮に妻の方が高収入だった場合には、妻の記録の一部が夫に分割されるケースもあります。
一方の「3号分割」は、会社員や公務員などに扶養されていた配偶者、いわゆる「第3号被保険者」だった人が対象です。専業主婦やパートで扶養に入っていた方が主な該当者となります。分割できるのは、平成20年4月1日以降の第3号被保険者期間中に配偶者が納めた厚生年金の記録です。この部分については配偶者の同意がなくても、自動的に2分の1に分けることができるのが特徴です。
3.1 年金分割は「離婚から2年以内」に請求しないとできない
年金分割を請求するには期限があり、離婚した日から2年以内に請求しなければなりません。これを過ぎると、分割そのものができなくなり将来の年金額に反映されません。「合意できていないから…」と言って放置して2年を過ぎると、年金分割の権利が消滅するので、必ず期限内に年金事務所で手続きするように気を付けましょう。
4. 【年金分割】不安なことがあれば専門家に相談を
今回の記事では、厚生労働省の統計資料をもとに、年金分割制度について解説しました。
年金分割には、夫婦の話し合いが必要な「合意分割」と、配偶者の同意が不要な「3号分割」の2種類があり、手続きをすることで実際に数千円から数万円単位で年金額が変わるケースがあることが分かりました。特に、請求期限は離婚から2年以内と決まっているので期限内に手続きをすることが重要です。年金は老後の生活を支える大切な資金です。制度の内容を知る中で、もし不安なことなどがあれば、年金事務所や弁護士事務所などの法律・年金に詳しい専門家に相談してみてはいかがでしょうか。



