長生きリスクという言葉も聞かれるようになり、老後の備えについて本格的に考え始めた方も多いでしょう。
老後にいくらあれば安心できるのかは、個人の状況によって異なります。
例えば、厚生年金の平均額は月額で15万円弱です。この金額でやりくりできる人であればほとんど備えがいらないことになりますが、「15万円ではとても足りない」という人も多いでしょう。
毎月のやりくりはできても、入院や介護、住宅補修などの突発的な支出への備えも必要です。
長生きできるにつれて、貯蓄の取り崩しの不安も出てくるかもしれません。
本記事では、80歳代~90歳以上の平均年金額に注目してみます。他の年代と違いはあるのでしょうか。
1. 公的年金は2階建て構造!厚生年金と国民年金のしくみ、知ってる?
ひとことに「公的年金」といっても、国民年金と厚生年金の2階建て構造となっているため、それぞれ年金の水準が異なります。まずはしくみを復習しておきましょう。
1.1 国民年金と厚生年金のしくみを図で確認
日本の公的年金は、1階部分に当たる「国民年金」と、2階部分に当たる「厚生年金」の2つの年金制度から成り立つ、2建て構造です。それぞれの年金制度の基本を確認しておきましょう。
1.2 国民年金と厚生年金の違いに注目
「国民年金」は、基礎年金とも呼ばれる年金制度のベースとなる部分です。原則として国内在住の20歳以上60歳未満の全員に加入義務があります。
年金保険料は全員一律(※1)で、老後に受給する年金額は保険料納付期間に応じて決定します(※2)。
一方、2階部分の「厚生年金」は被用者年金とも呼ばれ、民間企業や官公庁などに雇用されている人が国民年金に上乗せする形で加入する年金です(※3)。
厚生年金保険料は、給与や賞与に基づいて決まり(※4)、老後に受給する年金額は現役時代の年金加入期間や納付額に応じて計算され、国民年金に上乗せする形で支給されます。
つまり、「国民年金のみを受給する人」または「国民年金+厚生年金のどちらも受給する人」のいずれかとなります。
- 国民年金のみを受給する人:フリーランス、専業主婦、自営業者など
- 国民年金+厚生年金のどちらも受給する人:会社員や公務員、またパート・アルバイトで特定適用事業所(※5)に働き一定要件を満たした人など
現役時代の働き方や過ごし方により、老後の年金事情は大きく変わってくるのです。
※1 国民年金保険料:2025年度の月額は1万7510円
※2 保険料を480カ月の全期間納付すると老齢年金の満額(2025年度の月額は6万9308円)を受給できる
※3 被保険者区分は第1号~第4号。第1号は、第2号~第4号以外の、民間の事業所に使用される人、第2号は国家公務員共済組合の組合員、第3号は地方公務員共済組合の組合員、第4号は私立学校教職員共済制度の加入者
※4 保険料額は標準報酬月額(上限65万円)、標準賞与額(上限150万円)に保険料率をかけて計算されます。
※5 1年のうち6カ月間以上、適用事業所の厚生年金保険の被保険者(短時間労働者は含まない、共済組合員を含む)の総数が51人以上となることが見込まれる企業など
2. 【年金一覧表】国民年金「60歳~79歳」「80歳~90歳以上」の平均受給額の違い
ここからは厚生労働省年金局「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」を参考に、現在のシニアが受け取っている年金額について1歳刻みで確認していきましょう。
「60歳~79歳」と「80歳~90歳以上」では平均受給額の違いがあるのでしょうか。
まずは、自営業者やフリーランス、専業主婦など、厚生年金加入期間がない人が受給する「国民年金のみ」の平均月額について紹介します。
2.1 国民年金の平均月額(60歳~69歳)
- 60歳:4万3638円
- 61歳:4万4663円
- 62歳:4万3477円
- 63歳:4万5035円
- 64歳:4万6053円
- 65歳:5万9599円
- 66歳:5万9510円
- 67歳:5万9475円
- 68歳:5万9194円
- 69歳:5万8972円
2.2 国民年金の平均月額(70歳~79歳)
- 70歳:5万8956円
- 71歳:5万8569円
- 72歳:5万8429円
- 73歳:5万8220円
- 74歳:5万8070円
- 75歳:5万7973円
- 76歳:5万7774円
- 77歳:5万7561円
- 78歳:5万7119円
- 79歳:5万7078円
2.3 国民年金の平均月額(80歳~89歳)
- 80歳:5万6736円
- 81歳:5万6487円
- 82歳:5万6351円
- 83歳:5万8112円
- 84歳:5万7879円
- 85歳:5万7693円
- 86歳:5万7685円
- 87歳:5万7244円
- 88歳:5万7076円
- 89歳:5万6796円
2.4 国民年金の平均月額(90歳以上)
- 90歳以上:5万3621円
国民年金の平均年金月額は、65歳以降のすべての年齢で約5万円台でした。64歳までは繰上げ受給(※)を選んだ人の年金額となるため、4万円台と低めです。
※繰上げ受給:老齢年金を60歳~64歳までで前倒しして受け取ること。繰上げた月数に応じて年金が減額(0.4%/月)され、一度決まった減額率は生涯変わりません。
わずかではありますが、80歳以上の方が平均が低くなっています。年金への加入が強制でなかった世代も含まれるため、上の世代ほど低くなる傾向があります。
3. 【年金一覧表】厚生年金「60歳~79歳」「80歳~90歳以上」の平均受給額の違い
では、厚生年金の年金月額も年齢による違いがあるのでしょうか。同資料から見ていきます。
※ここでご紹介する厚生年金の年金月額には、国民年金の月額部分が含まれています。
3.1 厚生年金の平均月額(60歳~69歳)
- 60歳:9万6492円
- 61歳:10万317円
- 62歳:6万3244円
- 63歳:6万5313円
- 64歳:8万1700円
- 65歳:14万5876円
- 66歳:14万8285円
- 67歳:14万9205円
- 68歳:14万7862円
- 69歳:14万5960円
3.2 厚生年金の平均月額(70歳~79歳)
- 70歳:14万4773円
- 71歳:14万3521円
- 72歳:14万2248円
- 73歳:14万4251円
- 74歳:14万7684円
- 75歳:14万7455円
- 76歳:14万7152円
- 77歳:14万7070円
- 78歳:14万9232円
- 79歳:14万9883円
3.3 厚生年金の平均月額(80歳~89歳)
- 80歳:15万1580円
- 81歳:15万3834円
- 82歳:15万6103円
- 83歳:15万8631円
- 84歳:16万59円
- 85歳:16万1684円
- 86歳:16万1870円
- 87歳:16万2514円
- 88歳:16万3198円
- 89歳:16万2841円
3.4 厚生年金の平均月額(90歳以上)
- 90歳以上:16万721円
64歳までの受給権者は、特別支給の老齢厚生年金の定額部分の支給開始年齢が引き上げられたため、報酬比例部分のみ受給している人や、繰上げ受給をしている人の年金額となるため、低くなっています。
国民年金とは反対に、年齢が上がるほどに平均が高まることがわかりました。
年金額を決定する乗率について、昔の方が高かったことが一因です。今後も低くなる可能性があるでしょう。
4. 年金には個人差があることに注意
ここまで紹介してきたのは、あくまでも年齢ごとの「平均額」です。
平均額は厚生年金で14万6429円、国民年金で5万7584円となっているものの、下記の棒グラフのように男女差や個人差が大きいことを知っておきましょう。
4.1 厚生年金の平均年金月額
〈全体〉平均年金月額:14万6429円
- 〈男性〉平均年金月額:16万6606円
- 〈女性〉平均年金月額:10万7200円
4.2 国民年金の平均年金月額
〈全体〉平均年金月額:5万7584円
- 〈男性〉平均年金月額:5万9965円
- 〈女性〉平均年金月額:5万5777円
月額2万円未満となる人から月額30万円を超える人まで、幅広く分布していることがわかります。平均並みの金額を受け取れるのは、半数に満たないのですね。
年金額については「ねんきんネット」「ねんきん定期便」などで見込額を知ることができるため、この機会に確認しておきましょう。
5. まとめにかえて
長生きに備えるには、終身で受け取れる公的年金が頼りになります。
できるだけ多く受け取りたいと考える人も多いでしょう。年金を増やすには、加入期間を延ばすことや報酬をあげることなどが必要です。そのほか、未納期間や年金記録に漏れがないかなども確認するようにしましょう。
また、公的年金だけでなく私的年金で備えるという視点もあります。民間の保険会社が販売する個人年金保険やiDeCoなどが選択肢になるでしょう。
その他、貯蓄を取り崩すことや仕事を続けることも老後対策のひとつです。
それぞれメリットデメリットがあるため、自分に合う方法についてじっくり考えてみましょう。
参考資料
- 厚生労働省「令和7年度の年金額改定についてお知らせします」
- 日本年金機構「公的年金制度の種類と加入する制度」
- 厚生労働省年金局「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- 日本年金機構「年金の繰上げ受給」
- 日本年金機構「特別支給の老齢厚生年金」
太田 彩子