相続は、家族の絆を深める機会となり得ますが、現実には「争族」と呼ばれるトラブルに発展することも少なくありません。

家族のあり方が多様化し、子どものいない夫婦や、家を継ぐという意識の希薄化、さらには認知症などの高齢化問題が絡むことで、争いの火種は以前にも増して複雑になっています。

この記事では、実際に起こりがちな典型的なトラブルを5つ取り上げ、その背景と防止策を解説します。

1. 相続トラブルの背景

相続トラブルというと、ドラマのような、資産家の間で起こるようなどこか他人事のように思われる方も多いのではないでしょうか。

しかし相続税がかかる・かからないにかかわらず、遺産をめぐる争いは誰の身にも起こりうるものです。

1.1 遺産分割でもめるのは約4分の3が遺産5000万円以下

家庭裁判所での遺産分割事件の件数は年々増えており、特に「遺産総額が5000万円以下」の事案が大半を占めています。

つまり、特別裕福な家庭でなくても、相続が“争い”の火種になる可能性は十分にあるということです。

また、令和4年の統計では裁判になる家庭事件のうち、約1割が遺産分割に関わるものとなっています。

令和4年 第二審判事件の新受事件数の事件別の構成比

令和4年 第二審判事件の新受事件数の事件別の構成比

出所:最高裁判所事務総局「令和4年 司法統計年報概要版(家事編)」

相続トラブルは、今後私たちにとっても身近な問題になる可能性が高いことを認識しておく必要があります。

では、どんなケースがトラブルに発展するのでしょうか?

具体的にみていきたいと思います。