バブル崩壊後の厳しい経済環境下で社会に出た「就職氷河期世代」。

その後も景気の影響を受けやすい非正規雇用が長期化し、現在に至るまで経済的に厳しい状況に置かれています。

今回は、この世代の貯蓄の実態について、統計データをもとに分析します。

1. 就職氷河期世代ってどの世代?

「就職氷河期世代」とは、1993年ごろから2005年ごろにかけて高校・大学を卒業し、就職活動を行った世代を指します。

2025年現在、40代半ばから50代前半に差し掛かる人々です。

バブル崩壊後の企業の採用抑制が直撃し、希望する正社員の職に就けず、非正規雇用や不安定な職を転々とする人も少なくありません。

就職氷河期世代の就職率について詳しく見ていきましょう。

大学卒・高校卒ともに新卒の就職率が悪かったことが明らかです。

この世代は、就職難に始まり、賃金の低迷、非正規雇用の長期化、転職市場の未整備、社会保障の縮小と、複数の不利な要因が積み重なった世代です。

以下は2018年の統計ですが、新卒で就職できなかった多くの方が非正規などで働いている現状が顕著に表れています。

就職氷河期世代の就労状況2/5

就職氷河期世代の就労状況

出所:内閣府「就職氷河期世代支援プログラム関連参考資料」

このように、就職氷河期世代の多くが厳しい生活をしています。

2. 就職氷河期世代の貯蓄額はどれくらい?

就職難については前章でお伝えしてきましたが、では実際に就職氷河期世代は貯蓄できているのでしょうか?

詳しく見ていきたいと思います。

2.1 データで見る就職氷河期世代の“貯蓄のリアル”

J-FLEC 金融経済教育推進機構が実施した「家計の金融行動に関する世論調査 二人以上世帯(2024年)」のデータを基に、40歳代・50歳代の貯蓄状況を見ていきましょう。

※調査の貯蓄額には、日常の支出や口座引き落としのための普通預金残高は含まれていません。

40歳代・50歳代では貯蓄ゼロが2~3割と高めで推移しており、他の世代と比べても資産形成が遅れている傾向がわかります。

さらに、これらの世帯の平均値と中央値は以下の通りです。

40歳代・50歳代の貯蓄額(平均値・中央値)

  • 40歳代 944万円・250万円
  • 50歳代 1168万円・250万円

貯蓄がある層でも中央値は250万円程度とされ、他の年代に比べて少ないこともわかるでしょう。

就職難であったことに加え、この世代は結婚や子育て、住宅ローンといった支出が増える時期と重なっており、十分な貯蓄ができていないまま中高年を迎えているケースが多くあります。

2.2 他世代と比較して見える課題

では他の世代はどうでしょうか。60歳代以上(就職氷河期より上の世代)の貯蓄を見てみると、

60歳代の貯蓄額(平均値・中央値)

2033万円・650万円

70歳代の貯蓄額(平均値・中央値)

1923万円・800万円

70歳代においては中央値が800万円ほどとかなり高くなっている一方で、就職氷河期世代の中央値はその半分以下であり、かなり苦しい現状です。

貯蓄に回す余力が少ない生活を長年強いられてきた影響が表れています。

この先退職金や年金もこの世代では期待しづらい現状があり、「老後2000万円問題」が特に深刻にのしかかる層でもあります。

3. 就職氷河期世代の“お金が貯まらなかった構造的理由”

就職氷河期世代が貯蓄を十分に行えなかった背景には、個人の努力ではどうにもならない社会的・経済的な構造の壁が存在しています。

非正規雇用の長期化と収入の低さ

就職氷河期世代は、正社員になれず非正規雇用で働く人が多くいました。

非正規は収入が少なく、賞与や退職金もないため、生活を維持するだけで精一杯という人も多いのが実情です。

長く非正規でいると正社員に転職するのも難しくなり、収入面の改善が見込めず、貯蓄に回せる余裕が生まれにくくなります。

転職市場の整備不足とキャリア構築の難しさ

当時は転職支援や職業訓練が充実しておらず、一度非正規になると正社員への道が閉ざされがちでした。

また、非正規の職歴がキャリアとして評価されにくい風潮もあり、安定した雇用や収入を得にくい状況が続きました。

住宅ローンや教育費にお金がかかる時期と重なったタイミングの悪さ

この世代は結婚・子育て・住宅購入など支出が増える時期に差し掛かっています。

収入が限られるなかで住宅ローンや教育費が重なり、将来に備えた貯蓄をする余裕がないまま中高年期を迎えるケースも多く見られます。

これらのように、現時点での貯蓄不足は本人の努力だけでは解決しがたい構造的な問題といえます。

4. 氷河期世代が使える支援制度と給付金まとめ

就職氷河期世代の多くは、十分な貯蓄がないまま中高年期を迎えています。

そうした状況を踏まえ、国や自治体ではこの世代を対象とした支援策を少しずつ拡充しています。ここでは、老齢年金以外の代表的な制度や給付金、利用しやすい地域のサポートを紹介します。

4.1 厚生労働省の「就職氷河期支援プログラム」

厚生労働省は2020年度より、「就職氷河期世代支援プログラム」を推進しています。

これは、概ね1970年代後半〜1980年代前半生まれの人を対象にした、以下のような支援です。

  • ハローワークでの専門相談員による再就職支援:キャリア相談や求人紹介などを個別にサポート。
  • 訓練付きの求人(トライアル雇用や職業訓練の併設):職業訓練と連動し、未経験でも就職しやすい仕組み。
  • 地方自治体と連携した就職フェアやインターン機会の提供:自治体と連携し、企業との接点を増やす機会を提供。

正社員経験が乏しい人や、非正規雇用が長期化している人にとって、キャリア再構築の足がかりになります。

詳しくは、厚生労働省のHP「就職氷河期世代の方々への支援のご案内」で詳細をご確認ください。

4.2 年金生活者支援給付金

すでに老齢基礎年金(国民年金)を受け取っている人のうち、一定の所得以下の方に支給されるのが「年金生活者支援給付金」です。

将来、年金を受給する氷河期世代の中にも、該当者が多く出ると見込まれています。

年金生活者支援給付金は3種類5/5

年金生活者支援給付金は3種類。年金生活者支援給付金の申請方法は次の写真でチェック!

出所:厚生労働省「年金生活者支援給付金制度について」

この中でも就職氷河期世代の所得が少ない方々が該当する可能性が高いのが老齢年金生活者支援給付金です。

主な支給対象者

  • 老齢基礎年金を受け取っている人
  • 前年の所得が住民税非課税水準である(市区町村民税が課されていない)
  • 同じ世帯の全員が住民税非課税である

所得制限の目安

  • 昭和31年4月2日以降に生まれた人:年間所得が88万9300円以下
  • 昭和31年4月1日以前に生まれた人:年間所得が88万7700円以下

※なお、生活保護を受けている場合など、一部対象外となることがあります。

支給額の目安

2025年度の老齢年金生活者支援給付金支給額は、月額最大5450円(満額支給の場合)となっています。

手続き

年金請求時や後日郵送された申請書で手続きが可能です。

4.3 住民税非課税世帯向けの医療・介護優遇制度

住民税非課税世帯になることで、医療や介護に関する自己負担が軽減される制度もあります。

  • 高額療養費制度:限度額が通常より低く設定される
  • 介護保険の利用料軽減:第2・第3段階の軽減措置で自己負担が減額
  • 入院時の食事・居住費の減額(標準負担額の減免)

など。

非正規雇用や長期の無職経験によって住民税が課されていない世帯は、これらの制度を活用することで生活の負担を軽くできます。

4.4 シルバー人材センターでの働き方と地域の居場所づくり

仕事の機会が限られる中高年世代にとって、シルバー人材センターは大きな選択肢のひとつです。

  • 軽作業や事務補助、家事代行など短時間・柔軟な働き方が可能
  • 収入は小額でも、就労意欲や社会参加を維持する意義は大きい
  • 地域コミュニティの活動に参加することで、孤立を防ぐ効果も

特に、60歳を前にした「早期高齢者」層にとっては、次のステップを考える準備期間として有効な手段です。

就職氷河期世代は、制度のはざまで見落とされがちな存在でしたが、現在はさまざまな公的支援が整いつつあります。自ら情報を集め、利用可能な制度を知ることが、将来への備えとして欠かせません。

必要に応じて地域の支援窓口などにも相談し、活用の幅を広げていきましょう。

5. まとめにかえて

就職氷河期世代は、経済的にも社会的にも長く厳しい立場に置かれてきました。

現在はようやく支援策が進みつつありますが、今後はより実効性のある貯蓄支援や生活保障策が求められます。

貯蓄の現実を正しく把握することが、制度設計や社会的支援の第一歩となるでしょう。

6. 参考文献