3.1 自己都合退職者が教育訓練等を自ら受けた場合の給付制限解除

自己都合離職者が失業給付(基本手当)を受給するためには、待期期間満了の翌日から原則2ヵ月間(5年以内に2回を超える場合は3ヵ月)の給付制限期間が設けられていました。

しかし今回の改正により、離職期間中や離職日前1年以内に、自ら雇用の安定及び就職の促進に資する教育訓練を行った場合には、給付制限が解除されます。

基本手当の受給手続の流れ(自己都合離職者)

基本手当の受給手続の流れ(自己都合離職者)

出所:厚生労働省「令和6年雇用保険制度改正(令和7年4月1日施行分)について」

多くの労働者にとって待機期間中の経済的負担は大きな問題でしたが、給付制限が短縮されることで早期の支援を受けることができます。

これが「2025年に自己都合退職者が相次ぐ」と予想される理由であり、例えば「キャリアチェンジやリスキリングのために退職を検討している方」「在職中の不満や不安を抱えている方」にとっては大きなインセンティブとなり得ます。

一方で、給付制限の緩和が人材の流出を助長する懸念もあり、企業にとっては人材を確保するための戦略が求められるでしょう。

4. まとめにかえて

今回の雇用保険改正は、自己都合退職でも教育訓練などを利用すれば即給付を受けられるようになるなど、働く個人にとってはポジティブな変更点が多く含まれています。

一方、雇用保険全体の財政負担増を支えるための保険料率の調整や国庫負担割合の引き上げなど、企業や被保険者にとっては負担増となる面も無視できません。

しかし、多様化する働き方やリスキリングの必要性を考えれば、セーフティネットの拡充は社会全体にとっても重要な課題といえます。

特に、自己都合退職でも給付制限が解除されることで、「働きながらスキルを磨く」だけでなく、「失業期間中に計画的に学び直す」という選択肢が取りやすくなる点は見逃せません。

ご自身のキャリア形成や将来設計を考えるうえで、今回の雇用保険改正を上手に活かせるよう、最新の情報をチェックしましょう。

参考資料

加藤 聖人