4. 新規採用職員の声を聞いてみる

人事院では、昨年12月25日に「総合職試験等からの新規採用職員に対するアンケート」の結果を公表しました。この結果をもとに、国家公務員になろうと思った理由や歩みたいキャリア、今後の採用に関する課題などを見ていきましょう。

4.1 国家公務員になろうと思った理由

はじめに、国家公務員になろうと思った理由を見てみます。2024年度新規採用職員751人に「国家公務員になろうとした主な理由」を聞いたところ、回答結果は以下のようになりました。

国家公務員になろうと思った理由

国家公務員になろうと思った理由

出所:人事院「総合職試験等からの新規採用職員に対するアンケート」をもとに筆者作成

  • 公共のために仕事ができる:73.6%
  • 仕事にやりがいがある:56.3%
  • スケールの大きい仕事ができる:54.9%
  • 性格・能力が適している:31.7%
  • 堅実で生活が安定している:18.6%
  • キャリア形成として有効である:18.1%
  • 専門性を身に付けることができる:12.0%
  • 職場の雰囲気がよい:11.7%

(※3つまで選択可)

「公共のために仕事ができる」の回答が全体の約4分の3となっており、多くの職員が志望理由のひとつに挙げていることがわかります。仕事へのやりがいやスケールの大きさなどの割合も高くなっており、国家公務員の特徴である「世の中や国民全体のために働ける」点が、志望理由の多くを占めているといえるでしょう。

一方で、キャリア形成や専門性と言った回答の割合は低くなっています。国家公務員はゼネラリストとしての活躍が求められる仕事です。昇進や専門知識の習得については、あまり関心を示していない職員が多いようです。

4.2 国家公務員のキャリアの見通し

次は、今後のキャリアの見通しを見てみましょう。「国家公務員としていつまで働きたいか」を聞いたところ、結果は以下のようになりました。

キャリアの見通し

キャリアの見通し

出所:人事院「総合職試験等からの新規採用職員に対するアンケート」をもとに筆者作成

  • 定年まで公務員生活を続けたい:47.5%
  • 長期間勤めてから転職を考えたい:19.7%
  • 分からない:18.9%
  • 条件が合えばいつでも転職したい:9.2%
  • 若いうちに転職を考えたい:4.7%

定年まで公務員として働こうと考えている人は、全体の半数を下回っています。「条件が合えばいつでも転職したい」「若いうちに転職を考えたい」と回答した人の合計は13.9%で、約7人に1人が早期の転職を検討しているといえます。安定した職種といわれる国家公務員ですが、転職を考える人は決して少なくないようです。

4.3 魅力アップに向けて必要な取り組み

最後に、魅力の向上や優秀な人材の獲得に向けて必要と考えられる取り組みについて見てみましょう。結果は、以下のとおりでした。

国家公務員の魅力アップに向けて必要な取り組み

国家公務員の魅力アップに向けて必要な取り組み

出所:人事院「総合職試験等からの新規採用職員に対するアンケート」をもとに筆者作成

  • 給与水準の引上げ:79.8%
  • 働き方改革の推進(超過勤務・深夜勤務の縮減):60.9%
  • 働き方改革の推進(フレックスタイム制やテレワークの活用推進、業務効率化等):40.3%
  • 育児・介護等のための両立支援策を推進し負担に配慮する:24.4%
  • 年次に関わらない能力・実績に基づく柔軟な人事管理・処遇を徹底する:23.2%
  • キャリア形成に役立つ様々な職務を経験させるとともに、将来のキャリアパスを示す:20.1%
  • 広報活動を通じた国家公務員という職業のイメージアップ:16.8%
  • 若手の裁量の幅を広げ、早くから責任ある仕事を任せる:12.6%
  • 研修など担当職務以外での能力開発機会を充実させる:10.4%

(※複数回答可)

仕事の魅力アップや優秀な人材確保のためには、給与水準の引き上げが必要だと回答した人が8割近くいます。また、超過勤務の削減や業務の効率化を挙げる人も多くなっています。

国家公務員の給与は、民間給与との給与水準の均衡をめざす人事院勧告をもとに決められるものです。民間企業の賃上げが進めば、国家公務員の給与も追随するように引き上げられる可能性があるでしょう。

また、超過勤務や深夜勤務を削減してほしいという意見が新規採用職員からも6割超出ていることから、労働環境の改善も喫緊の課題です。形式的で非効率な、いわゆる「お役所仕事」からの脱却や、不要な業務の終了など、職員に過度な負担がかからない働き方が求められています。

近年、国家公務員の申込者数は減少傾向にあるようです。国家公務員の採用における課題を次章で解説します。