2024年9月25日、国税庁は「令和5年分民間給与実態統計調査」をリリースしました。これによると2023年の平均年収は約460万円で、そのうち平均賞与割合は18.4%となりました。

また、過去10年間で平均年収は概ね伸びていることがわかりました。ただし、その伸び率はごくわずか。物価上昇率には追い付いていません。

2024年8月分の物価上昇率は前年同月比3.0%であるのに対し、2022年から2023年の平均年収の伸び率は0.4%でした。

物価上昇により資産価値が目減りしている状況下、ファイナンシャルアドバイザーである筆者の元には老後の資金準備についてご相談にくる方が増えています。

皆さんの中にも同じような悩みを抱えている方がいらっしゃるのではないでしょうか。

今回の記事では、現シニア世代の受給額とそこから天引きされるお金を解説しています。

働き世代の皆さんは、現行の年金制度で、自身の年金手取り額がどのくらいになるのか想定しましょう。

また記事後半では、年金だけでは足りないと感じた方向けに対策を載せています。ぜひ最後までご覧ください。

1. 老齢年金の「手取りと額面」天引きされる4種類のお金とは

現役世代が、毎月給与の額面から税や社会保険料などが天引きされるように、シニア世代もまた、毎月老齢年金から4種類のお金が天引きされることになります。公的書類には「特別徴収」と書かれます。

2009年10月に始まったこの制度によって、老齢年金の受給者が、役所や金融機関などの窓口へ行く手間をかけずに、スムーズに税金などを納められるようになりました。

とはいえ、特別徴収により老齢年金が額面通りではなくなるため、貰える金額を正確に把握するためにも、どんなお金が天引きされるのかは知っておいた方が良いでしょう。以下で、一つずつ整理して見ていきます。

1.1 【天引きされるお金 その1】個人住民税と森林環境税額

前年中の所得にかかる個人住民税および森林環境税は、一定の条件を満たす場合、年金から特別徴収されます。※個人住民税非課税となる場合、個人住民税の支払い義務は発生しません。

1.2  【天引きされるお金 その2】所得税および復興特別所得税

老齢年金は「雑所得」扱いとなるため、所得税および復興特別所得税も天引きされます。

1.3 【天引きされるお金 その3】介護保険料

64歳までは健康保険料と介護保険料は併せて納付しますが、65歳以降はそれぞれ別に納付することになります。

年金支給額が年額18万円以上ある方については、介護保険料は年金から天引きされます。一方、18万円未満の方は市区町村へ直接納める必要があります。

介護保険料の支払いは、要介護・要支援認定を受けたあとも、生涯続くことには注意しておきましょう。

1.4 【天引きされるお金 その4】健康保険料

国民健康保険や後期高齢者医療制度の保険料についても、原則的には年金から天引きされ、納付することになります。

年金通知書には、現役時代の給与明細と同じように、控除される各種税や社会保険料が記載されるため、金額が全く分からないまま天引きされる心配はありません。しかし、ねんきん定期便などで試算されていた、年金の「額面」と「実際の振込額」には差が生じることになります。

公的年金の支給月は2ヵ月ごとの偶数月です。「10月に支給された年金」から年金の振込額が変わり、驚いた方もいるのではないでしょうか。次で詳しく確認していきましょう。