老後には公的年金が支給されることから、「年金さえあれば安心して暮らせる」と考える人も少なくないかもしれません。
しかし現実には、年金収入だけでは生活が難しい世帯が多く、厚生労働省「2024(令和6)年 国民生活基礎調査の概況」によれば、100%年金のみで暮らしている人の割合は43.4%にとどまっています。
つまり、過半数の高齢者世帯は年金だけでは生活が成り立たず、働いて収入を得たり、貯蓄を取り崩したりして家計を支えていることがうかがえます。
では、実際に年金生活をスタートさせている「70歳代」の人たちは、どのような貯蓄状況にあるのでしょうか。
本記事では、70歳代の貯蓄実態に加え、年金暮らしをしている世帯の家計状況についても紹介していきます。
1. 【70歳代・二人以上世帯】貯蓄平均は1923万円。でも中央値は…?
金融経済教育推進機構「家計の金融行動に関する世論調査 2024年」によると、70歳代・二人以上世帯の平均貯蓄額は「平均が1923万円」「中央値が800万円」となりました。
貯蓄額を示す指標には「平均値」と「中央値」がありますが、平均値は一部の高額な貯蓄によって大きく左右されるため、実態をより正確に知るには中央値の方が適していると言えます。
70歳代・二人以上世帯の中央値は1000万円に満たず、実際の貯蓄水準はそれほど高くないことが見て取れます。
さらに、平均値と中央値の差が1000万円以上あることからも、シニア世帯内での貯蓄状況に大きな格差があることが明らかです。
では、70歳代・二人以上世帯の貯蓄割合はどのようになっているのでしょうか。
1.1 【70歳代・二人以上世帯】貯蓄割合は二極化の傾向
金融経済教育推進機構の同資料より、70歳代・二人以上世帯の貯蓄割合についても見ていきましょう。
- 金融資産非保有:20.8%
- 100万円未満:5.4%
- 100~200万円未満:4.9%
- 200~300万円未満:3.4%
- 300~400万円未満:3.7%
- 400~500万円未満:2.3%
- 500~700万円未満:4.9%
- 700~1000万円未満:6.4%
- 1000~1500万円未満:10.2%
- 1500~2000万円未満:6.6%
- 2000~3000万円未満:8.9%
- 3000万円以上:19%
- 無回答:3.5%
70歳代・二人以上世帯においては、金融資産をまったく保有していない世帯が最も多く、全体の20.8%を占めています。
一方で、3000万円以上の貯蓄を持つ世帯も19.0%存在しており、資産状況には大きな幅があることがうかがえます。
70歳代・二人以上世帯の貯蓄状況は、これまでの収入や退職金の有無、相続の有無、さらには健康状態など、さまざまな条件によって大きな差が見られます。
また、公的年金の受給額についても、加入歴や職業によってばらつきがあり、年金収入だけでは生活が成り立たない世帯も少なくありません。
とくに貯蓄がほとんどない場合、老後の生活に支障をきたす可能性もあります。
では、70歳代の主な収入源である「公的年金」は、実際にどの程度支給されているのでしょうか。