少子高齢化が進む日本では、現役時代に納める年金の保険料と、将来受け取ることのできる年金額について不安に感じている方もいるのではないでしょうか。
本記事では、厚生年金について、通常65歳から受け取ることができるのに対し、早めて受け取る繰上げ受給と、遅めて受け取る繰下げ受給について解説します。
60歳・65歳・70歳それぞれで受け取ることのできる年金総額のシミュレーションをご紹介します。
1. 厚生年金の繰上げ受給と繰下げ受給
日本の年金制度は3階建てとなっており、全員が受給できる老齢基礎年金(1階部分)に加え、加入期間の要件などを満たすと老齢厚生年金(2階部分)を受け取ることができます。
【写真全3枚中1枚目】年金制度の仕組み図。2枚目以降では、年金の繰上げ受給・繰下げ受給などについて掲載。1/3
これらの年金は、加入要件を満たすことで、原則として65歳から受給できるようになっています。
また、希望があれば、通常65歳から受け取る年金を早めて60歳から受け取ることのできる「繰上げ受給」や、70歳まで年金の受給を遅らせる「繰下げ受給」が可能です。
次の章で詳しくみていきましょう。
2. 年金の繰上げ受給:請求時の年齢別早見表
繰上げ受給を選択すると早く年金を受け取れる代わりに、受け取れる年金の額が減ってしまいます。
繰上げ受給の場合の受給額を求める計算式は以下の通りです。
減額率(最大24%)=0.4%✕繰上げ請求月から65歳に達する日の前月までの月数
以下の表を利用すると、繰上げる月数別に減額される割合を簡単に求めることができます。
2.1 繰上げ受給の減額率の早見表(昭和37年4月2日以降生まれ)
- 60歳0ヶ月:24.0%
- 61歳0ヶ月:19.2%
- 62歳0ヶ月:14.4%
- 63歳0ヶ月:9.6%
- 64歳0ヶ月:4.8%
3. 年金の繰下げ受給:請求時の年齢別早見表
一方、年金の繰下げ受給を利用することで、年金を受け取れる年齢が遅くなる代わりに、受け取れる年金の額が高くなります。
繰下げ受給で受け取れる年金の額を求める計算式は以下の通りです。
増額率(最大84%)=0.7%✕65歳に達した月から繰下げ申出月の前月までの月数
また、繰下げする月別に増額される割合を記載した表が以下の通りです。
3.1 繰下げ受給の減額率の早見表
- 66歳0ヶ月:8.4%
- 67歳0ヶ月:16.8%
- 68歳0ヶ月:25.2%
- 69歳0ヶ月:33.6%
- 70歳0ヶ月:42.0%
- 71歳0ヶ月:50.4%
- 72歳0ヶ月:58.8%
- 73歳0ヶ月:67.2%
- 74歳0ヶ月:75.6%
- 75歳0ヶ月:84.0%
次の章では、60歳・65歳・70歳でそれぞれ受給を開始する場合に、受け取れる年金の額について見ていきましょう。
4. 【60歳・65歳・70歳】年齢別の保険料と受給額シミュレーション
厚生労働省「令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、2022年の厚生年金の平均受給額は14万3973円でした。
また、厚生労働省「令和5年簡易生命表の概況」によると日本人の平均寿命は男性で81.09歳、女性で87.14歳です。
繰上げ受給や繰下げ受給しない場合は毎月14万円程度を受け取り、80歳まで生きることを前提に、繰上げする場合と繰下げする場合で年齢別のシミュレーションをチェックしていきます。
4.1 65歳で通常通り受給した場合
まずは、繰上げ受給や繰下げ受給をせず、65歳で通常通り年金の受給を始めた場合を見ていきましょう。
80歳までに受け取れる年金の総額は以下の通りです。
14万円✕12ヶ月✕15年=2520万円
4.2 60歳で繰上げ受給した場合
次に、60歳で繰上げ受給した場合を見ていきましょう。
60歳で繰上げ受給する場合、1962年4月2日以降生まれの方は、24%減額されることとなっています。
このため、毎月受け取れる額は14万円✕(100%-24%)=10万6400円です。
また、上記年金額を80歳まで受け取った場合の平均受給額は以下のようになります。
10万6400円✕12ヶ月✕20年間=2553万6000円
4.3 70歳まで繰下げ受給した場合
最後に、70歳で繰下げ受給した場合を見ていきます。
70歳で繰下げ受給する場合、増額される割合は42%です。
このため、毎月受け取れる額は14万円✕(100%+42%)=19万8800円となります。
また、上記年金額を80歳まで受け取った場合の平均受給額は以下の通りです。
19万8800円✕12ヶ月✕10年間=2385万6000円
80歳まで生きることを前提に、通常通り受け取るケースと60歳で繰上げ受給する場合、70歳まで繰下げ受給する場合の年金総額をシミュレーションしました。
結果的に、60歳で繰上げ受給するケースが最も多くなることが分かりました。
しかし、平均寿命87歳である女性の場合、例えば90歳まで生きた場合には、受け取れる年金総額は以下のようになります。
- 60歳で繰上げ受給:10万6400円✕12ヶ月✕30年間=3830万4000円
- 65歳で通常通り受給:14万円✕12ヶ月✕25年=4200万円
- 70歳まで繰下げ受給:19万8800円✕12ヶ月✕20年間=4771万2000円
上記通り、長生きすればするほど、遅く繰下げ受給した方がお得になることが分かります。
5. まとめにかえて
老齢年金は原則として65歳から受け取ることができますが、早く受け取ることのできる繰上げ受給や、遅く受け取る繰下げ受給があります。
本記事では、繰上げ受給、繰下げ受給で受け取れる年金額の計算方法と、60歳、65歳、70歳から年金を受け取る場合の年齢別年金総額をシミュレーションしました。
本記事でご紹介したシミュレーションを、年金の受け取りを何歳から始めるかを判断する際の参考になさってみてください。
参考資料
- 日本年金機構「年金の繰上げ受給」
- 日本年金機構「年金の繰下げ受給」
- 日本年金機構「令和6年4月分からの年金額等について」
- 厚生労働省「令和4年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- 厚生労働省「令和5年簡易生命表の概況」
- 厚生労働省「 [年金制度の仕組みと考え方] 第3 公的年金制度の体系(被保険者、保険料)」
逆瀬川 勇造