3. 警察から電話が……「介護放棄を疑われたとき」
そんなある日、オフィスで働く千秋さんの携帯電話に実母宅の電話番号から着信が。折り返してみると、「A警察の者」と名乗る男性が状況を説明し始めました。
「お母さんから『娘がずっと来ていない。ほったらかしにされている。食べるものもない。このままだと命が危ない』と110番通報があり出動しました。娘さん、電話代わってもらえますか?」
電話を代わった実母は泣き叫びながら、こうまくし立てたそうです。
「親をこんな状態でほったらかしにして、よく仕事なんてできたもんだ。ずっと顔を見てない。電話もしていない。あんた私をこの先どうするつもりなの。死ねばいいと思っているワケ?あんな婿とは離婚して戻ってきなさい!」
最後に母と会ったのは前日の夜。上等なステーキ肉を焼いて「明日は一日会社に出勤だから来れないよ。カレンダーにも書いておくからね」と伝えたはずなのに……。
「母をなだめた後、先の警察官と再び話しましたが、やるせない気持ちになりました。
『お母さん、娘さんがずっと顔を見せてないって言ってるんですよね。最後に会ったのはいつ頃?』『でも認知症の診断がおりているんですよね?長いこと一人きりにしていたんですか?』『ケアマネジャーやヘルパーなどの支援は受けていますか?』」
と矢継ぎ早に訊ねられました。決して私を責める口調ではありませんでしたが、きっと介護放棄(ネグレクト)を疑っているんだろうな、って思うと切なくなっちゃって……」
と無力感をにじませながら話してくれました。