2. 昼夜問わない「鬼電」の始まり。着信音に動悸
その後認知症の症状は緩やかに悪化。見当識障害(※)から、不安になると昼夜問わず千秋さんの自宅の固定電話を鳴らすように。
「私が実家にいないときは、ほぼ30分おきに自宅や携帯電話に着信が入ります。着信音とランプの光はもはや恐怖。鳴った瞬間から動悸呼び出し音の『幻聴』まで聞こえるようになってしまいました。
夜中の電話は地獄ですね。とらなければ延々に鳴り続ける。着信音を消音モードにすることも考えましたが、万が一火事が起こったときなどを考えると、踏み切れませんでした」
電話機の発信履歴からは、千秋さん宅が不在の場合は家族や友人宅に延々とダイヤルしていた様子が分かりました。長年疎遠になっていた親族や知り合いも含まれており、電話の相手先からの苦情が千秋さんに直接入ったこともあったそうです。
「なぜ電話をかけたのか理由を聞いても、当の本人は『電話なんてかけていない』の一点張り。まったく記憶にないようで、声を荒げて猛抗議してきました」
やがてその「鬼電攻撃」の範囲は千秋さんたちが想像もしていなかった相手先にまで及ぶように……。
※見当識障害:時間や場所が分からなくなること