約1年ぶりに受注を再開したスズキの「ジムニーノマド」。
人気が高すぎて一時受注停止となっていましたが、ようやく再開にこぎつけたことで、改めて注目が集まっています。
その話題に乗る形で、東京オートサロン2026に出展されたカスタム車両が大きな注目を集めています。
圧倒的なサスペンションストロークを誇り走破性アップ1/6
筆者撮影
ドレスアップ・SUV部門で優秀賞を受賞したこの車両は、徳島県のジムニー専門店「アウトクラス」が製作したものです。
見た目のインパクトだけでなく、実際に山を走れる構造を持っていることまで含めた完成度の高さが評価されたといいます。しかし、ここまで改造された車両は果たして車検に通るのでしょうか?
1. 約1年ぶりに受注再開した「ジムニーノマド」とは? 今さら聞けないジムニー兄弟の違い
ジムニーに詳しくない人にとっては、「ジムニー」「ジムニーシエラ」「ジムニーノマド」の違いがわかりにくいかもしれません。
まず基本を整理しておきましょう。
軽自動車規格・3ドアのモデルが「ジムニー」、1.5Lエンジンを搭載した普通車登録の3ドアが「ジムニーシエラ」です。そして、そのシエラをベースに全長とホイールベース(前後輪の間隔)を拡大し、使い勝手を高めた5ドアモデルが「ジムニーノマド」です。
いずれも共通しているのは、見た目だけのSUVではなく、本格的なオフロード四輪駆動車であるという点です。
外装やフェンダーを覆うように配置されるアウターロールケージ2/6
筆者撮影
近年は街乗り用のクロスオーバーSUVが主流となっていますが、ジムニーシリーズは昔ながらの本格派オフローダーとしての性格を貫いています。
ジムニーシリーズは、強度と耐久性を重視したはしご型フレーム(ラダーフレーム)を採用し続けていることでも知られています。
これはクロスカントリー車やトラックなどに使われる構造で、悪路走行時のねじれや衝撃に非常に強いのが特徴。一般的な乗用車で採用されるモノコック構造と比べると、重量は増えますが、その分だけ悪路での耐久性は段違いに高くなります。
そのため走破性は世界トップクラスとされ、クロスカントリー競技でも使用されるなど、世界中で高い評価を受けています。
2. 東京オートサロン2026で優秀賞を受賞した「公道を走れるジムニーノマド」
東京オートサロンは、毎年1月に千葉県の幕張メッセで開催される日本最大級のカスタムカーの祭典です。今回は国内外から389社が参加し、856台ものカスタムカーが集まり、3日間で合計27万人以上が訪れました。
「東京国際カスタムカーコンテスト2026」では、8部門のジャンルからそれぞれ最優秀賞1台、優秀賞2台が選ばれます。その中でドレスアップ・SUV部門の優秀賞に選ばれたことは、この車両の完成度の高さを物語っています。
ただし、このジムニーノマドは販売車両ではありません。アウトクラス代表・赤地社長の愛車として製作された1台で、同社の技術力とカスタムに対する考え方を示すショーカーという位置づけになります。
つまり、このままの仕様で販売されるわけではなく、あくまで「こんなことまでできる」という技術のデモンストレーションというわけです。
最大の特徴は、足まわりの構造そのものを作り替えた点にあります。
リアの足まわりはオリジナルの5リンクサスペンション3/6
筆者撮影
フロントには石塚エンジニアリング製の4リンクサスペンションをベースに、独自のアレンジを加えた構成を採用。リアには完全ワンオフとなる5リンクサスペンションが組み込まれ、リンク位置や角度、ブラケット類まで一から設計されています。
さらにリアショックの動きを最大限に生かすため、リアシート部分のフロアに加工を施し、ショックが車内に突き抜ける構造として、リアシートは取っ払っています。
これにより、タイヤが上下に大きく動く圧倒的なストローク量を確保し、見た目だけでなく、悪路走行を本気で想定した「走れるノマド」に仕上げられています。
岩場や急斜面など、通常の車両では到底走れないような場所でも、このサスペンションがあれば走破できる可能性が高まります。
3. 超大径タイヤとフル加工ボディ、それでも公道走行を前提にした理由
装着されているタイヤは、トーヨータイヤの「オープンカントリーMT」(255/85R16)という非常に大きなサイズです。
通常のジムニーノマドと比べると、かなり大径のタイヤを履いていることがわかります。このサイズを成立させるため、フェンダーやボディには大規模な加工が施され、ブレーキもアウトクラス製の4ポットキャリパーと強化ローターに変更されています。
大径タイヤを装着すると、制動距離が伸びる傾向にあるため、ブレーキの強化は必須です。見た目だけを追求するのではなく、安全性をしっかり確保した上でカスタムを進めているのがわかります。
重要なのは、「履けるから履いた」のではなく、「安全に使うために必要な改造をすべて行っている」という点です。
アウトクラスは公認車検・指定工場でもあり、違法改造を前提としたカスタムは行いません。構造変更を行うことで、公道走行可能な改造車として成立させることを重視しています。
もっとも、この車両も展示状態のままで車検が通るわけではありません。車高は構造変更取得時に調整が必要で、Aピラーからルーフに沿って装着されたアウターロールケージも、公道走行時には取り外す前提となります。
画像04 大径タイヤを履かせるためにフェンダーにはアウターロールケージを装着4/6
筆者撮影
それでも、「どこを直せば車検に通るのか」「何が保安基準に抵触するのか」を明確にしたうえで製作されている点が、このジムニーノマドの大きな価値だと言えるでしょう。ショーカーとして派手に作り込みながらも、公道走行への道筋をしっかり残しているのです。
グリル手前には電動ウインチも装着されるがこれも合法5/6
筆者撮影
4. 改造車=違法ではない? アウトクラスが示した一つの答え
改造車というと、「車検が通らない」「違法なのでは?」というイメージを持つ人も少なくありません。実際、違法改造車が社会問題になったこともあり、改造車全般に対してネガティブな印象を持つ人もいるでしょう。
しかし、このジムニーノマドは、構造変更を前提に正規の手続きを踏むことで、公道走行を可能にするという考え方で作られています。構造変更とは、車の構造や装置を変更した際に、その内容を陸運局に届け出て、車検証の記載内容を変更する手続きのこと。
手間を惜しまず、陸運局と向き合いながら合法の範囲を探る。その姿勢こそが、アウトクラスがジムニー専門店として積み重ねてきた経験の集大成だと言えるでしょう。
東京オートサロン2026での優秀賞受賞は、派手な見た目だけでなく、そうした背景や思想まで含めて評価された結果でした。
ジムニーノマドという存在が注目される今、「改造車でも公道を堂々と走れる」という選択肢を示したこの1台は、ジムニーカスタムの可能性をさらに広げたと言えそうです。
カスタムカー文化を健全に発展させるためにも、こうした正攻法のアプローチが広まっていくことが期待されます。
スペックボードには書ききれないほど実はカスタマイズされている6/6
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参考資料
鈴木 博之