2025年は「団塊の世代」すべてが75歳以上の後期高齢者となる年。親の介護や終活を「もはや他人事ではない」と感じている人も多いでしょう。

では、家族の間で具体的な「老後の話」はできていますか?

介護やお墓、はたまた遺産相続などの問題は、お金が絡むうえ、しばしば親族間のトラブルにも発展するデリケートな話ですね。あえて話題に出す必要もないだろうと、つい避けてしまう心情は理解できます。

今回は2023年8月30日に公表された実態調査の結果を交えながら「親の介護とお金」について考えていきましょう。

お墓・介護・遺産など「つい避けがちな」老後の話題

LIFULL seniorは2023年8月30日、家族や親族とどこまで老後についてのことを話し合っているか、実態を調査するためアンケート調査の結果を公表しました。

家族と話していることのトップは「お墓」!じゃあ「介護」は?

■家族と老後について話していること

※身近な人が「まだ老人ホームに入居していない人」

  • 1位:あてまはるものはない:68.8%
  • 2位:お墓について:16.6%
  • 3位:遺産について(金融資産、不動産など):10.7%
  • 4位:延命治療、終末期に受けたいケアについて:10.6%
  • 5位:遺品整理、住まいの片付けについて:8.5%
  • 6位:老人ホームについて:7.3%
  • 7位:認知症になった場合の対応、資産管理について:6.1%
  • 8位:受けたい介護について:5.5%

最初に紹介するのは、身近な人が「まだ老人ホームに入居していない」という人からの回答ランキングです。

配偶者、親、子、きょうだいなどの家族と、老後の暮らしに関するどんなトピックを話し合ったことがあるかをたずねたところ68.8%と約7割の人が「あてはまるものはない」と回答しています。

話し合ったトピックの中で10%を超えたのは「お墓について(16.6%)」、次いで「遺産について(10.7%)」「延命治療や終末期に受けたいケアについて(10.6%)」の3つのみ。

お墓や遺産相続よりも前に発生する、「認知症になった場合の対応、資産管理について(6.1%)」や「受けたい介護(5.5%)」について、事前に家族で意見共有ができている世帯は多数派ではないのかもしれません。

そもそも老後に関する話題は明るいとは言い難いものがほとんどですから、何のきっかけもなく話題に出すことが憚られるという気持ちも納得できますね。

ちなみに「あてはまるものはない」と回答した人の割合を世代別でも見てみましょう。

  • 20代:77.6%
  • 30代:75.2%
  • 40代:71.0%
  • 50代:65.5%
  • 60代:60.4%
  • 70代:53.6%

40代までは全体の68.8%より高い数字になっていますが、必然的に50代を超えると緩やかに減少していきます。親の老いを目の当たりにしたことが、自分自身の遠い将来を考えるきっかけとなったケースもあるでしょう。

ただし、この意識調査の対象を「身内が介護施設入居を経験した人」に絞ると、結果は大きく動きます。次で見ていきましょう。

【特養など】介護施設に家族が入居すると、老後の話題が身近に

■家族と老後について話していること

※身近な人が「まだ老人ホームに入居した人」

  • 老人ホームについて:23.2%
  • 受けたい介護について:20.0%
  • 遺品整理、住まいの片付けについて:19.5%
  • 遺産について(金融資産、不動産など):20.9%
  • 認知症になった場合の対応、資産管理について:16.2%
  • 延命治療、終末期に受けたいケアについて:19.4%
  • お墓について:21.1%
  • あてはまるものはない:30.8%

同調査では、家族、親族など身近な人が介護施設に入居した人(n=2000)と、そうでない人(n=48736)で、意識の違いがどの程度あるのかを比較しています。

身近な人が介護施設に入居する場合、老後の話題はぐんと身近になる模様。7項目中4項目で20%を超える人が「話している」と回答しています。

具体的には、「老人ホームについて」が最多の23.2%、次いで「お墓について(21.1%)」「遺産について(20.9%)」の回答が上位にランクイン。

在宅介護から施設介護への切り替えは、介護する家族や親族にとっても大きなインパクトがあるできごとです。自然と老後について話すきっかけとなっていることがうかがえます。

ここで大きく上昇したのは「老人ホームについて」をのぞき、「受けたい介護について」(14.5%上昇)と「遺品整理」(11%上昇)、「認知症になった場合」(10.1%上昇)でした。

いずれも、施設入所にともない必然的に話題に出す機会が増える項目であると言えます。

みんなの介護費用の出どころは?厚生労働省の資料を見る

さて、実際に本格的な介護が必要となる前に、介護について家族や親族で話し合えているケースは多数派ではないのかもしれませんね。

実際に必要となる介護費用には、要介護度や介護施設への入居有無、世帯の状況によっても変わります。

健康面での不安が増えていく老後の暮らし。「介護費用」はいつから、どの程度必要となるか見えにくく、また個人差が大きいところでしょう。

ここで厚生労働省の「令和4年(2022年) 国民生活基礎調査」より、介護を必要とする人の「介護費用の出どころ」に関するデータに目を向けてみましょう。

同調査では、介護費用の負担力について「介護を要する人」の年齢階級ごとにまとめたデータを見ることができます。

介護費用の負担力(厚生労働省「令和4年国民生活基礎調査」)

※複数回答可
※介護を要する人がいる世帯数1万対
※介護を要する人が複数いる世帯については「要介護の程度が高いほう」に計上
※図表内では「40歳~90歳以上」までの各年齢階級についてのデータを記載

■総数(10000)

介護を要する者(あるいは配偶者)の収入を充てた:7386
・年金・恩給の収入:7200
・その他の収入:867
介護を要する者(あるいは配偶者)の貯蓄を充てた:1047
介護を要する者(あるいは配偶者)以外の者の収入・貯蓄を充てた:718

■65歳以上~(9749)

介護を要する者(あるいは配偶者)の収入を充てた:7225
・年金・恩給の収入:7109
・その他の収入:784
介護を要する者(あるいは配偶者)の貯蓄を充てた:1015
介護を要する者(あるいは配偶者)以外の者の収入・貯蓄を充てた:698

■75歳以上~(8685)

介護を要する者(あるいは配偶者)の収入を充てた:6425
・年金・恩給の収入:6315
・その他の収入:650
介護を要する者(あるいは配偶者)の貯蓄を充てた:877
介護を要する者(あるいは配偶者)以外の者の収入・貯蓄を充てた:641

いずれの世代も、介護費用を自分、もしくは配偶者の収入(年金収入がメイン)・貯蓄から捻出していることがうかがえます。

介護が始まってからでは遅い!「想定外の事態」を見据えた話し合いを

今回紹介したLIFULL seniorの調査結果によると、家族や親族などが介護施設に入所していない場合、老後について家族で話し合っている人の割合は約3割。それが、介護施設に入所を経るとその割合がぐっと上がることが分かりました。

何らかのきっかけもなく、家族や自分に「介護が必要となったとき」を自分ごととしてイメージすることは難しいかもしれません。

でも、いったん介護生活が始まると、その先の見通しは立ちにくくなり、想定外のできごとも起こります。

特別養護老人ホーム(特養)への入所が叶わず有料老人ホームに入居するために、住み慣れた住まいを処分するケースなどはよく聞く話ですね。

そこで認知症などにより判断能力が低下している場合、不動産の売却ができなくなったり、金融機関の口座が凍結されたりする可能性も想定しておく必要があるでしょう。

こともあろうに介護費用として準備していたはずの本人の資産が、使えなくなる事態も起こり得るわけです。万が一に備え、家族信託などの活用を検討を話し合っておけると安心かもしれませんね。

また、遠距離介護の場合、交通費がかさんだり、介護休暇取得で子ども側が収入減となったりすることは容易に想定できるでしょう。

介護する側・される側、双方の負担をトータルで考えるためにも、親子が元気なうちに介護について、特に「お金のこと」についてオープンな話し合いができれば理想的なのかもしれません。

参考資料

吉沢 良子