3. 金融資産の高齢化

さきほどのデータでも分かるように、高齢化が進む日本では、「金融資産の高齢化」が進行している点も看過できない課題の一つと言えるでしょう。

ここでは内閣官房が公表する「資産所得倍増に関する基礎資料集」より、「日本の家計金融資産の世代別保有」に関するデータを見ていきます。

出所:内閣官房 新しい資本主義実現本部事務局「資産所得倍増に関する基礎資料集」(令和4年10月)

上のグラフのように、世帯主の年齢が60歳以上の世帯が保有する金融資産は、日本の家計金融資産全体の63%。実に全体の6割を超える金融資産をシニア世代が持っているわけです。

では、各世帯の金融資産がどのような種類の金融商品に配分されているのか、ここでも70歳代世帯と40歳代世帯の平均を比較してみましょう。

3.1 70代以上・二人以上世帯「種類別金融商品保有額」

※金融資産を保有していない世帯を含む
※( )内は金融資産保有額に占める割合

預貯金(定期性預金含む)

  • 70歳代:814万円(42.7%)
  • 40歳代:356万円(43.2%)

金銭信託

  • 70歳代:16万円(0.8%)
  • 40歳代:11万円(1.3%)

生命保険

  • 70歳代:198万円(10.4%)
  • 40歳代:101万円(12.2%)

損害保険

  • 70歳代:29万円(1.5%)
  • 40歳代:12万円(1.5%)

個人年金保険

  • 70歳代:66万円(3.5%)
  • 40歳代:51万円(6.2%)

債券

  • 70歳代:96万円(5.0%)
  • 40歳代:20万円(2.4%)

株式

  • 70歳代:473万円(24.8%)
  • 40歳代:149万円(18.1%)

投資信託

  • 70歳代:183万円(9.6%)
  • 40歳代:70万円(8.5%)

財形貯蓄

  • 70歳代:10万円(0.5%)
  • 40歳代:46万円(5.6%)

その他金融商品

  • 70歳代:20万円(1.0%)
  • 40歳代:10万円(1.2%)

金融資産保有額合計

  • 70歳代:1905万円
  • 40歳代:825万円

70歳代、40歳代ともに、金融資産の約4割を預貯金が占めていますね。

そもそも70歳代の金融資産保有額は40歳代の約2.3倍。さらに、預貯金以外に株式や投資信託などの「将来的に増える期待がもてる資産」も多く保有しているわけです。

「金融資産の現役層への移転」を進めるべきとの考えもあり、適切なタイミングで資産移転が起きるようになれば、働く世代にとって、生活が楽になりつつ消費の活性化も期待され、経済の活性化へも繋がるきっかけが生まれるかもしれません。

では、この「資産移転」について70歳代世帯はどのように考えているのか。今回は相続の面から、「遺産」に関する意識を参考に確認してみましょう。