2024年1月からはじまる予定の新しいNISAや、またiDeCoなど、国による税制優遇制度が拡充されています。
しかし、現在60歳代で貯金がゼロの方にとっては、これらの制度を使って今から資産形成をはじめることは難しいかもしれません。
現在60歳代の方で、貯金がゼロの方はどの程度いるのでしょうか。また、貯金がなくても年金だけで生活することはできるのでしょうか。
今回は、60歳代で貯金がゼロの方の割合と、60歳代の厚生年金と国民年金の平均受給額を解説します。年金を増やす方法も紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
60歳代ではひとり世帯の4人に1人が貯金ゼロ
金融広報中央委員会の「令和3年家計の金融行動に関する世論調査」によると、金融資産を保有していない貯金ゼロの60歳代の割合は、単身世帯で28.8%、二人以上世帯で19.0%です。
金融資産を保有していない世帯とは、年金保険や株式、投資信託などの金融資産をまったく保有していない世帯に加え、金融資産が預貯金のみで、そのうち「運用または将来の備え」に該当する金額がゼロの世帯を指します。
ひとり世帯では4人に1人以上、二人以上世帯では5世帯に1世帯が金融資産を保有しておらず、貯金ゼロということになります。
ひとり世帯の世帯ごとの分布は以下の通りです。
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出所:各種分類別データ(令和3年) ― 家計の金融行動に関する世論調査[単身世帯調査](平成19年以降)|知るぽるとをもとに筆者作成
また、単身世帯で金融資産保有額を1000万円以上保有している世帯は約36.8%、3000万円以上保有している世帯は17.7%となっており、世帯により大きな差があることがわかります。
65歳から受給する「厚生年金と国民年金」の平均年金月額
60歳代で貯金がゼロでも、老後の生活資金が全くないわけではありません。原則、65歳から年金を受給できます。
厚生労働省の「令和3年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、65歳の厚生年金平均月額受給額は14万5372円(年間約174万円)、国民年金平均月額受給額は5万8078円(年間約70万円)です(厚生年金には国民年金部分を含みます)。
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出所:厚生労働省「令和3年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとに筆者作成
厚生年金は会社員や公務員などが加入する年金で、国民年金は自営業者や専業主婦などが加入する年金となります。
基本的に厚生年金は国民年金に上乗せして払うため、国民年金加入者に比べて年金受給額は高くなりやすいです。
また、受給額は加入年数や納めた年金保険料などによっても異なります。
特に、厚生年金は人によって受給額に大きな差があるので、ねんきん定期便やねんきんネットなどで受給予定額を確認してみてください。
60歳代で考えたい収入と支出の工夫
では、60歳代でも行える収入と支出に対する工夫にはどのようなものがあるでしょうか。
まず支出部分ですが、保有金融資産がなくても、受給する年金を生活費が上回らなければ基本的に生活は可能です。できれば年金での生活を始める前に、家計を見直すといいでしょう。
特に携帯料金や新聞代、保険料、駐車場代などの毎月発生する固定費は見直しポイントです。月間5000円の固定費を節約するだけで、年間6万円も節約できます。
月に固定費はどれくらいかかっているか、これを機に確認するといいでしょう。
また、65歳で年金の受給を開始する前に検討したい点があります。それは、「年金の受給開始期間を遅らせることができないか」です。
実は、年金は75歳まで受給を遅らせることができます。受給開始を遅らせる分だけ、年間の受給金額は高くなります。
たとえば、65歳から受け取る年金が年間100万円の方の場合、受給開始を75歳に遅らせれば年間受給額は184万円です。年齢ごとの年間受給額は以下のようになります。
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出所:日本年金機構「年金の繰下げ受給」をもとに筆者作成
近年は、定年退職の年齢を延長する企業や再雇用を行う企業もあります。
まだ働けるのであれば、65歳以降も働いて生活費を収入で補い、年金の受給開始を遅らせることで年間の年金受給金額を増やすことも検討できるでしょう。
老後生活費のシミュレーションを行おう
60歳代で貯蓄ゼロの方の割合と、年金受給額の平均を解説しました。
60歳代で貯蓄ゼロの方は、まず自分が受給できる年金額をねんきん定期便やねんきんネットなどで確認しましょう。
次に、月にかかる生活費を概算して、年金で生活が可能かをシミュレーションしてみてください。生活がきつい場合や余裕がない場合には、固定費を抑えたり、年金の受給開始を遅らせたりすることを検討してみてください。
公的年金は、どれだけ長生きしても毎年同額を受け取れる「長生きリスクに備える保険」です。
受給額を増やすことで、少しでも安心した老後生活を送ることができるでしょう。
また、その他に長く働き続く、資産寿命を守る・伸ばすなどの選択肢も検討してみましょう。
※本記事は執筆時点の最新公開データをもとに執筆されたものです。
参考資料
- 金融広報中央委員会「各種分類別データ(令和3年) ― 家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和3年以降)|知るぽると」
- 金融広報中央委員会「各種分類別データ(令和3年) ― 家計の金融行動に関する世論調査[単身世帯調査](平成19年以降)|知るぽると」
- 日本年金機構「年金の繰下げ受給」
- 厚生労働省「令和3年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」
苛原 寛
