3. 繰り下げ受給で気を付けたいポイント

繰り下げ受給には、増額による税金・社会保険料の負担増以外にも気を付けておきたいポイントがあります。

3.1 繰下げ受給の注意点1.加給年金の加算がなくなる

加給年金は、厚生年金の加入期間が原則20年以上ある老齢厚生年金受給者が、65歳未満の配偶者や18歳未満(一定の障害がある場合は20歳未満)の子の生計を維持している場合に、老齢厚生年金に加算する形で支給されます。

そのため、繰り下げている期間は加給年金は支給されません。

たとえば、夫65歳と妻60歳の夫婦の場合、本来は5年間加給年金が支給されるところ、夫が70歳まで老齢厚生年金を繰り下げると、受給開始の時に妻は65歳になっているため、年齢要件から外れ、加給年金を受け取ることができなくなります。

年金の繰り下げは別々にできるため、加給年金の受給権利がある場合は、老齢基礎年金のみを繰り下げると加給年金の受給と繰り下げによる増額の両方を実現できます。

3.2 繰下げ受給の注意点2.医療費の負担が増える場合がある

繰り下げ受給をして年金が増額されると、健康保険や介護保険を利用する時の所得区分が変わり、自己負担割合が増える可能性があります。

公的医療保険の自己負担割合は、年齢と所得によって異なります。69歳までは3割負担、70歳から74歳までは原則2割、75歳からは原則1割ですが、70歳以上で現役並みの所得があると3割負担になります。

介護保険も同様です。介護サービスを利用した場合の自己負担割合は原則1割負担ですが、所得が増えると2割または3割になります。

所得の判定は、公的年金だけでなく、確定拠出年金などの企業年金や個人年金保険などの年金収入、不動産収入などの他の所得も含みます。

そのため、所得が多い人は繰り下げ受給の増額によって自己負担割合が増えてしまい、却って家計にはマイナスになることもあるので注意しましょう。