1ドル=144円という円安、コロナの拡大、大幅な物価高など、景気に不安を感じる今日この頃。
かつて1993~2004年ごろ、就職氷河期を過ごした人々の就職時期も、大きな不安との戦いだったのではないでしょうか。
この世代はロスジェネ世代とも言われ、バブル崩壊の影響を受け、正社員ではなく非正規雇用で働くことになった人が多くいます。
そんな人々も、そろそろ40~50歳代となり、老後について真剣に考える時期となりました。就職氷河期世代の方々が老後の生活を考えるには、同世代の貯蓄状況や老後に対しての考えなどを参考にすると、具体的なイメージが湧きます。
今回はさらに、老後の資金準備と合わせて考えておきたい問題についてもまとめます。
40~50歳代の貯蓄額「平均」・「中央値」の差は3倍で大きく二極化
安定した老後を送るためには、早いタイミングから老後の資金準備をすることがとても大事です。
ただ、「そんなこと言われなくてもわかっている…なかなか取り組めない事情もある」のではないでしょうか。
というのも、就職氷河期世代は非正規雇用で働く人が多く、賃金差が大きいという特徴があります。
厚生労働省「令和3年賃金構造基本統計調査」によれば、正社員の賃金が323万4000円に対し、非正規雇用の賃金は216万7000円。正社員の賃金の方が非正規雇用よりも、1.5倍多いという結果もあります。
実際の40~50歳代の、貯蓄事情をみてみましょう。もとになったのは、金融広報中央委員会の「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査] 令和3年調査結果」です。
40~50歳代の金融資産保有高1/2
出典:「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和3年)」をもとに筆者作成
40歳代・二人以上世帯の金融資産保有額(金融資産を保有しない世帯を含む)の結果
- 平均:916万円
- 中央値:300万円
《金融資産保有額分布》
- 金融資産非保有:24.8%
- 100万円未満:9.4%
- 100~200万円未満:7.5%
- 200~300万円未満:6.2%
- 300~400万円未満:4.6%
- 400~500万円未満:3.9%
- 500~700万円未満:9.2%
- 700~1000万円未満:6.7%
- 1000~1500万円未満:8.5%
- 1500~2000万円未満:4.8%
- 2000~3000万円未満:5.8%
- 3000万円以上:4.8%
- 無回答:3.7%
40歳代の貯蓄額平均は916万円、中央値は300万円であり、ほぼ3倍の差があります。
平均の数値は、一部の貯蓄を多く持つ人の影響で数値が大きくなる傾向があります。一方、中央値は、貯蓄額が少ない順または多い順に並べたとき、丁度真ん中になる人の貯蓄額を表します。
これより、40歳代の貯蓄状況を考えたとき、「300万円」が実態に近い数字といえます。
貯蓄の保有状況を比べてみると、「貯蓄が1000万円以上の世帯(23.9%)」と、「金融資産非保有の世帯(24.8%)」がほぼ同じ割合となっています。
老後資金の準備が順調な人、まだこれからの人、その進捗状況に大きな二極化傾向をうかがうことができます。
50歳代・二人以上世帯の金融資産保有額(金融資産を保有しない世帯を含む)の結果
- 平均:1386万円
- 中央値:400万円
《金融資産保有額分布》
- 金融資産非保有:23.2%
- 100万円未満:8.9%
- 100~200万円未満:6.5%
- 200~300万円未満:4.5%
- 300~400万円未満:4%
- 400~500万円未満:3.4%
- 500~700万円未満:6.4%
- 700~1000万円未満:6.3%
- 1000~1500万円未満:8%
- 1500~2000万円未満:5.7%
- 2000~3000万円未満:6.6%
- 3000万円以上:12.9%
- 無回答:3.5%
50歳代の平均は1386万円、中央値は400万円です。40歳代と比べると、平均・中央値ともに上昇していますが、その差はやはり、約3倍になっています。
また40歳代の平均は916万円でしたが、50歳代になると1386万円。平均が大幅に押し上げている理由としては「貯蓄額3000万円以上の世帯」が40歳代の4.8%に対し、50歳代の12.9%という結果が影響していると考えられます。
貯蓄の保有状況を比較すると、「貯蓄が1500万円以上の世帯(25.2%)」と、「金融資産非保有の世帯(23.2%)」が、だいたい同じ割合となっています。
40歳代よりも50歳代の貯蓄状況の方が、より鮮明な二極化を感じる結果となっています。
就職氷河期世代が抱える老後の不安
40~50歳代の貯蓄事情から、それぞれの年代でシビアな二極化という現実が見えてきました。
同じ調査で「老後の生活についての考え方」という項目があり、「心配している」と答えた人は、40歳代では87.3%、50歳代では81.9%でした。
老後の生活を心配していると答えた人に、心配の理由について調査したところ、以下のような結果となりました。
老後の生活を心配する理由(老後を心配している世帯)複数回答
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出典:「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和3年)」をもとに筆者作成
40~50歳代どちらも共通して「十分な金融資産がない(40歳代71.8%・50歳代70.2%)」、「年金や保険が十分でないから(40歳代50.8%・50歳代55%)」が上位の理由となっており、先述の貯蓄状況を裏付ける結果といえます。
また、「退職一時金が十分ではない(40歳代33.3%、50歳代29.7%)」というのは、非正規社員と正社員での賃金形態、待遇の差を濃く感じる理由といえます。
就職氷河期世代の背景には、大きな苦労がありました。しかし、そんな中でも、一部の人は老後資金をしっかり準備しています。まだという人は、なるべく早めに、自身の老後に向けて準備を始めましょう。
そうしないと、自分の老後の問題を解決する前に「親の介護問題」が浮上する可能性もあるからです。
親の介護と自身の老後資金という2つの問題を抱える前に行動しよう
2025年には、65歳以上の5人に1人が認知症を発症するといわれています。
厚生労働省の「2019年の国民生活基礎調査の概況」によれば、介護が必要となった主な原因は、「認知症(24.3%)」が最も高く、次は「脳血管疾患(脳卒中)(19.2%)」、その次は「骨折・転倒(12%)」となっています。
「まだまだ元気で介護の心配など全然していなかった」と思っていても、高齢になれば起こるかもしれない病気、ケガではないでしょうか。
実際、「介護問題について考えたくない」と感じることもあるかもしれませんが、避けて通ることはできません。親の介護が始まれば、時間の拘束や働き方の変更など、さまざまな問題を抱えることになるでしょう。
そうなる前に、自分の老後資金についての悩みを解消するための行動へと梶を切りましょう。
まとめ
40~50歳代になれば、介護問題や老後資金などは、誰もが抱える問題です。
大きくなる前に行動に移すのが、より賢明な判断ではないでしょうか。
参考資料
- 厚生労働省「令和3年賃金構造基本統計調査」
- 金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査] 令和3年調査結果」各種分類別データ
- 厚生労働省「2019年の国民生活基礎調査の概況」
舟本 美子
