会社員として勤めている方は、厚生年金に加入しています。毎月の保険料は給与天引きされるため、手取りが低いことにため息が出てしまうものですが、将来の年金は手厚くなるというメリットがあります。

さらに年金の受給額を増やしたい場合、「繰下げ受給」という制度を利用することができます。

受給開始を65歳よりも後に後ろ倒しすることで、最大で84%も年金受給額を増やせるという制度です。

こう聞くと、「長生きしなければ損をしそう」と感じるかもしれません。実際にその通りで、早くに亡くなれば損をしてしまうのが繰下げ受給のデメリット。

実は、それ以外にも繰下げ受給のデメリットが潜んでいます。年金を増やすという夢のような制度に隠れた落とし穴について、確認していきましょう。

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公的年金には厚生年金と国民年金がある

年金の繰下げ受給を知る前に、まずは基本的な基本制度をおさらいしましょう。日本の年金制度は「2階建て」と言われています。

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出典:日本年金機構「国民年金・厚生年金保険 被保険者のしおり」(令和4年4月)・厚生労働省「日本の公的年金は『2階建て』」をもとにLIMO編集部作成

出典:日本年金機構「国民年金・厚生年金保険 被保険者のしおり」(令和4年4月)・厚生労働省「日本の公的年金は『2階建て』」をもとにLIMO編集部作成

国民年金(1階部分)

日本に住む20歳~60歳未満の方が原則加入し、働き方によってさらに3つにわかれます。

  • 第1号被保険者:自営業、20歳以上の学生など
  • 第2号被保険者:会社員や公務員など
  • 第3号被保険者:第2号被保険者に扶養される配偶者

厚生年金(2階部分)

国民年金の第2号被保険者が上乗せして加入します。報酬に応じた保険料を支払い、これにより将来の年金額が決まります。

国民年金も厚生年金も、原則では65歳からの受給となります。しかし年金請求をせずに受給を繰り下げることで、年金額を増額することができます。

年金の繰下げ受給の仕組み

2022年4月から、最大で75歳まで年金の受給を繰り下げることができるようになりました。

1ヵ月ごとに0.7%増えるので、75歳までの10年間(120ヵ月)では最大84%も増やせる計算です。

厚生労働省「令和2年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、厚生年金(国民年金を含む)の平均受給額は約14万円。もし75歳まで年金を我慢すれば、27万6000円になります。

老後は安泰に思えますよね。

しかし、年金の繰下げ受給には思わぬリスクが潜んでいます。老後に後悔することがないよう、繰下げ受給のデメリットを確認していきましょう。

経験者が震える「繰下げ受給のデメリット」3つ

年金の受給額があがればあがるほど、生活は豊かになると考えられます。

しかし、安易に繰下げ受給を選択するにはあまりにもリスクが高いものです。

ある男性が繰下げ受給を行ったことで感じたデメリットについて、具体的に見ていきましょう。

年金受給まで老後資金を切り崩す

定年退職後の再雇用は難しく、多くは非正規となるでしょう。健康状態から働くこと自体が難しくなることもあります。

それでも年金をもらわないとなると、生活は貯蓄を切り崩すしかありません。せっかく年金の受給額が増えても、大切な老後資金を取り崩していては本末転倒に。介護や医療など、思わぬ出費に備えられなくなります。

収入が途切れがちなシニアにとって、やはり年金ほど頼りになる収入源はないのです。

貯蓄を切り崩すことのないよう、計画的な資金繰りが必要でしょう。

税金や保険料が高くなり、手取りは思ったほど増えない

繰下げ受給によって年金を増やせたとしても、手取りがそのまま増えるわけではありません。実は給与天引きと同じように、年金からも税金や保険料が引かれるのです。

保険料とは、健康保険料と介護保険料のこと。所得に応じて決まるため、年金が多ければ多いほど引かれる金額が増えるのです。

年金の額面が増えると嬉しいですが、思ったほど手取りが増えずにがっかりする人は多いです。せっかく努力して増やしても、実際手に入る金額が少ないなら意味がないですよね。

所得税や住民税も引かれるため、老後の負担は高まります。

医療費や介護の自己負担が高くなる

75歳以上になると、誰もが後期高齢者医療制度に加入します。基本的には医療費の自己負担が1割ですが、所得がある人は2割や3割の負担となります。

単純に2倍、3倍になることを思うと、負担は大きいでしょう。同様に介護の負担割合も増えます。所得が多いと支払うお金も増えるため、逆転現象が起こってしまうのです。

年金受給は慎重に考える

年金の繰下げ受給には、思わぬリスクがあります。これらを知らないまま利用してしまうと、老後に大後悔してしまうでしょう。

しかし、受給額を増やせるのは他にないメリットでもあります。リスクは事前に知ることで対策ができるものです。

身近なようであまり知らない年金について、理解を深めていきましょう。

参考資料

太田 彩子