晩婚化などライフスタイルの変化によって、60代を過ぎても住宅ローンを残している世帯も珍しくなくなりました。しかし、現実に定年を迎えた65歳を過ぎても、今まで通り住宅ローンを返していくのは難しくないものなのでしょうか。

日本弁護士連合会「2017年破産事件及び個人再生事件記録調査」によると、住宅購入を負債原因とする破産事例は10.26%。破産者の1割が住宅購入をきっかけにしていることが分かります。

また、年代別に見た破産者の割合は60歳代が16.40%、70歳代以上が7.51%、破産者の2割以上が高齢者であるのです。理由はさまざまですが、「老後破産」という状況がいつ起こってもおかしくないのだという厳しい現実が分かります。今回は、65歳以降に住宅ローンを残すとどうなるのか、年金での返済は可能なのかについて考えてみました。

みんなの住宅ローン残高はいったいどのくらい?

周りの世帯がどのくらい住宅ローンを抱えているのかも気になるところです。そこで、金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和2年)」の「各種分類別データ(令和2年)金融負債の状況等」より、年代別の平均住宅ローン残高を抜粋したものがこちらです。

【30歳代】2,326万円(中央値:2,400万円)
【40歳代】1,746万円(中央値:1,687万円)
【50歳代】1,242万円(中央値:1,000万円)
【60歳代】619万円(中央値:500万円)
【70歳以上】909万円(中央値:440万円)

“平均値”は集団内のデータを均等に割った数値で、“中央値”はデータを大きい順に並べて真ん中にきた数値をさします。平均は極端に大きな数字が入ることで数値が吊り上がってしまうので、中央値の方が実感に違い数値になるといわれています。住宅ローン残高をみると30~50歳代までは平均値・中央値ともに1,000万円を越えていますが、60歳代ではぐっと残高が減り、50歳代の半分以下になっていることが分かります。しかし一方で70歳以上では平均値と中央値に大きな差が出ていることも分かり、多額のローンを残している世帯がいるであろうと予測されます。