「脱炭素」への動きが世界的に加速しています。前回の記事では「ガソリン車よ、さようなら!」と題し、二酸化炭素(CO2)削減に向けた電気自動車(EV)へのシフト、そして、その課題などについて考えました。

本記事では、そのEVにも「さようなら」と言える可能性を秘めた未来のエネルギー、水素で走る燃料電池車の現状と普及への課題を探ります。

水素燃料電池車の原理

燃料電池車(FCV)は、バッテリーに蓄電した電気で走るEVと異なり、搭載した燃料電池で発電し、電動機の動力で走る電気自動車のことです。アルコール燃料電池車、金属燃料電池車がありますが、最もよく知られ注目されているのが水素燃料電池車(水素FCV、FCVはFuel Cell Vehicleの略)です。

水素FCVは水素自動車ですが、水素自動車にはもう一つのタイプがあります。水素をガソリンの代わりの燃料として用い、エンジン内で燃焼させて走る水素エンジン車と呼ばれものです。

水素FCVと同様にCO2を全く生成しませんが、水素の高い爆発性などの問題があって開発は難航しています。中学校の実験で、水上置換で集めた水素に点火すると、ポンと音を立てて爆発的に燃焼したことを覚えている方も多いのではないでしょうか。

一方、水素FCVでは、水素と酸素を反応させて電気エネルギーを獲得して走行します。つまり、水素エンジン車とは「走るための原理」が異なるわけですが、その原理は180年も前に見つけられたもので、水の電気分解(水素と酸素に分解)の逆の反応です。

基本的な仕組みとしては、電解質(これには4種類あり、自動車用は固体高分子型)を挟んだ2つの電極の片側に水素を供給し(-極、燃料極)、もう片側の電極には空気中の酸素を供給します(+極、空気極)。

すると、水素のイオン化(2H+)によって放出された電子(2e-)が外部回路を通じて反対側の空気極に流れることで、電流が流れて電気が発生します。空気極では、供給された空気中の酸素(O2)が、外部回路から流れてきた電子(e-)を受け取り、酸素イオン(O2-)になります。

そして、この酸素イオンは電解質膜を移動してきた水素イオン(2H+)と結合し、水(H2O)になります。

このように、化学反応を起こして水と電気を生み出すのが水素FCVの原理です。この時、水が生成されますがCO2は全く生成されません。これが水素がクリーンなエネルギーと言われるゆえんです。