退職金制度の導入率は減少傾向

退職金制度の導入は会社の任意とされており、必ずしも義務ではありません。そして、先述の「就労条件総合調査」によると、この10年で退職金制度のある企業は減少傾向にあるのだそうです。現在は転職も一般的で、企業側が中途採用で優秀な人材を確保しようとするケースも増えています。

そのため、長期勤続者を優遇する退職金制度そのものにメリットがなくなってきているという現状もあるのかもしれません。前払い退職金制度も、そんな人材の新陳代謝を促すために導入されている側面があるようです。

日本の労働環境は、年々変化し続けています。退職金制度もそのひとつ。老後は2,000~3,000万円貯蓄が必要だともいわれ、退職金だけを頼りにしているとリスクを伴うおそれがあります。「老後は退職金があるから安心」と気を抜かず、自分たちはどのくらい退職金が出るのか、今から準備できることはないか、気づいたときから考えていく必要がありそうです。

【参照】
厚生労働省「平成30年就労条件総合調査」-退職給付(一時金・年金)の支給実態
東京都産業労働局「中小企業の賃金・退職金事情(平成30年版)
内閣人事局「退職手当の支給状況
内閣官房「民間企業における退職給付制度の実態に関する調査・研究(平成29年度)

古谷 梨子